【MT-01】の前後ショック改造と、試乗の評価(高評価)。

 ここ数年、MT-01を作業する機会が増えています。当社は古めの車両を依頼いただく事がおおく、MT-01もその中の一台です。
 以下は当記事の目次です。

 1 改造の依頼内容
 2 実際の改造内容
 3 タイアの変更と評価
 4 試乗の評価

 1 改造の依頼内容

 純正のハンドリングがしっくりこないので、当社の動画をみて興味を持ち相談のメールをいただきました。そこから話が発展してフロントフォークの改造、リアショックの交換(と改造)をする運びとなり12月の初旬に車両を引き上げに、お客様のご自宅へ伺った次第です。

 2 実際の改造内容 フロント

 それでは実際にどのような改造を施したか説明します。
 フロントは完全な分解とオーバーホールに加え、少しの加工を行ました。具体的には消耗品の交換は当然として、インナーチューブとブラケットを分解し、インナーチューブを研磨しています。これにより表面の荒さが細かく均一になるため作動性が向上します。

 他にオイルロックピースに小加工を施しています。これはフルボトム付近で減衰を大きく生み出して金属部品の直接接触を防ぐ目的があります。

 例えば、大きな段差やウィリーからフロントを落とした時などに有効なのですが、純正ではそのロックピースの有効範囲がやや長すぎるように思いますので、その有効長を詰めると、実際に使える幅が増えて姿勢変化を狙い通り起こせるようになり、特にV型2気筒エンジンを搭載した車両には有効です。

 さらにはバネも交換しますが、その理由は純正スプリングの値(実測で約1.00Kgf/mm)は柔軟な動きを阻害するため、街乗りに特化させる意味も含め0.925kgf/mmを選択。

 0.9~0.95K辺りのバネにプリロードを掛けボトム付近の反力があまり立ち上がらないように仕向けると、フラットな感触を得られ、私にはこの感触がとても好ましい。

 そして前述のオイルロックピース加工と油面設定を上手に決めれば、ブレーキレバーの入力に対しリニアに反応する心地よい動きが得られるのです。

 リア

 リアは純正を云々するよりも、社外品を選ぶのが性能も価格も効果的です。そこで今回はオーリンズのTTxを仕様変更して取り付け。

 変更の詳細は伏せますが、オーリンズ部品を加工してはなりません。これは代理店との約束事なのでしかたない。

 と言うわけで価格は高く成りますが純正部品を購入したり、手持ちの部品を用いて形に出来ました。

 バネは以前の作業である程度は見極めができており、130Nmを選択。場合によっては120Nmもありです。

 減衰は過去のデータからある程度推測で組み上げ、その後に一度車体に取り付け実走した感覚からもう一度シム組(減衰設定)を見直しました。

 3 タイアの変更と評価

 摩耗したタイアで入庫しており、交換を提案し了承頂きました。

 私の判断で良いとのお言葉から、ミシュランのパイロットパワー2CTを選択。安価で性能も高く私が一番好きな品です。

 リアには純正の190/50ではなく55扁平を選びましたが、その理由は私が50扁平では楽しくないからです。

 好みもありますから完全否定する訳ではなく、私が楽しくないと言う主観に基づきます。55扁平だとトレッド面の湾曲がちょうど良いのでしょう、とても良い。

 それに伴いトレッド面積も増すためバンク角も優位であり、良いことばかりに思えますがさにあらず。車高が大幅に上がり操舵性が悪化する場合もあります。

 MT-01のタイア変更に関して試乗した印象は、こちらを参照してください。

 全体としてはとても高評価ですが、車高が合わなくなります。現在主流となる55扁平に合わせた車高を基準にしてリアショック長を設定し、純正の50も55の両サイズを車高調整で合わせられるように出来ました。

 評価

 とても高評価。大柄な車両のMT-01がリアタイア形状のおかげで軽く動くようになり、50扁平よりも明らかに良いと感じます。

 リアはやや高くなりフロントを軸とした操舵性になり、人によってはこちらを好むこともあるとは思いますが、私は伝統的なリアタイアを軸とした旋回性を好むため、このままに捨て置けません。

 と言うわけで前項でも取り上げたリアショックの長さを調整して作り込みました。

 4 試乗の評価

 フロントフォークから話を進めると、バネ定数を落としたおかげで動きが一定になり、イニシャル量の適正化と合わせる事でブレーキレバーを握り込んで行く際に、量感のあるしっかりした反力をかんじられます。硬い訳ではなく「風船を圧縮する」ような柔らかいような感覚に陥ります。よりスポーツ性を高める場合はスプリングレートを上げ、動き出しの柔らかさとボトム付近の反力を演出して旧来の動きを作り出すことも可能となります。

 TTxは二輪車にとって重要なリアの動きを支配する際に大いに貢献するのですが、MT-01用は販売していない。そのため仕様変更で作り込んで好みに仕上げた訳です。

 この辺りはお客様からもTwitter上で「エンジンの存在感だけだったMT-01がバイクになった」と高評価を頂きました。

 純正のバネ定数はとても硬いと感じ、柔らかい値に設定したおかげで一人乗りのスポーツ走行にはちょうど良い感触。前後ショックとも倒し込みで適度に柔らかく沈み込み、姿勢変化が低速域でも明確に感じ取れるためライディングの上達にも役立つはずです。

 フロントフォークの改造はバネ系が主なので減衰に関しては手をつけていません。しかしバネを綿密に合わせ込めば減衰力の質の低さを十二分に隠せます。

 後日、内部の写真を載せますが、カートリッジの減衰発生機構は80年代にこのシステムが作られた構造そのもので細かい制御が行えません。それでもバネを上手に設定すれば車両の質を大幅に向上させられると、今回も実証できました。

シリンダー、トップアウトと伸びピストン。
伸び減衰力のピストン。

 過去にフロントにFGRカートリッジキットを取り付けた実績もあり、カートリッジ交換は有益です。ただし金額がかなり張るため、今後はピストン交換で減衰力の質を上げる(微細な制御を可能とする)形も考えています。

 今回はリアショックを新品で購入した場合の価格は概ね50万円です。リアショックを除く作業工賃はタイア交換を含め30万円でした。

 

 

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