キャビテーションとは

 今回はとても短い記事になりますが、お付き合い願います。

 油圧機器の性能を極端に落とす減少に「キャビテーション」があります。名前は知っていも、どういった現象かは知らない人もいると考え、記事にします。

 KYBの技報にキャビテーションの原理と影響を強く受ける製品の例があがっていますので、御覧ください。

 一見、気体が混入していない状態の作動油の中にも、大気圧中で数%の気体が溶解していると記されています。別のKYB技報の「緒言」冒頭部分を御覧ください。

 キャビテーションは基本的に圧力差により発生し、気体が無いように見える所でも発生します。上の2つのリンクにある「スロッシング」、いわゆる巻き込み現象ですが、これはキャビテーションとは明確に違う現象です。

 巻き込み現象は、水面に向かい素早く叩きつけるように物体(手のひらなど)を潜り込ませると、つられて気体が水中に潜り込むのを確認できます。つまり撹拌です。

 話を戻しますがキャビテーションが発生し、消滅(崩壊)する際に衝撃波が発生し、その衝撃波により部品が傷み壊れる「壊食」が起こる場合もあり、性能の低下だけでなく、破損にもつながるので注意が必要なのです。

 船舶のプロペラではキャビテーションがプロペラを壊す事もあるそうです。

 それだけなく、ダンパにおいては気泡の発生、消滅のプロセスで発生する衝撃波で局所的に温度が高くなり、それが作動油を急速に劣化させるそうです。この情報は友人の技術者が教えてくれたので、論文等の証拠はありませんが、非常に重要なことを示唆しています。

 当社ではエア抜きをかなり重要しており何度もブログに取り上げました。それは経験的にエア抜きが与える影響が甚大だと知っていたからです。

 エアの混入量が大きいと(厳密にはキャビテーションとは違うものの)、設計段階の性能を発揮しないだけでなく、体感上の劣化も著しく早くなります。

 エア抜き100%達成の場合 性能100点 耐久性100点とします。
 エア抜き95%達成の場合 性能90点 耐久性80点。
 エア抜き90%達成の場合 性能80点 耐久性60点。

 上記は私の感覚値ではありますがエア混入の割合が多くなるに連れ、急進的に性能の劣化が現れます。

 そしてバキュームポンプを用いてエア抜きを行うと、大気圧中で数%溶解している気体の成分を少しでも排除できます。これも性能向上に対して大きな影響を与えます。

 という訳で直接皆さんの役に立つ記事ではありませんでしたが、ショックアブソーバの理解を助けるのに一役買えたのでは無いでしょうか。

 この記事を理解していれば、一般的なフロントフォークとリアショックのどちらが性能劣化が著しいか、直ぐにわかるはずです。

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