二輪車を考える 第三回 V型エンジンと直列エンジンを正面から比較する

二輪車を考える 第三回

V型エンジンと直列四気筒エンジンを正面から比較する

 前回はバイクを横から眺め、エンジン形状が前後重量配分にどの様な影響を与えるのかを考えてみた。今回は正面からバイクを眺めエンジン形状が重量配分にどの様な影響を及ぼすのかを解説してみます。

BMWやMotoGuzziの様に縦置きエンジンではなく、クランクシャフトが車両を横切る、横置きエンジンに関して話を進める。

 正面方向からバイクを見ると、横からの眺めよりもエンジンが車体に与える寸法上の制約は少ない様に思える。その違いは「幅」くらいしかなさそうではあるが、実はその幅が大きな違いを生むのである。またはこうも言える。V型エンジンと並列エンジンに違いを「生める」のは正面から見たクランクシャフトの長さであると。

 正面からバイクを眺め、エンジン幅が広いと高い位置に搭載しなければ、バンク角を稼げない。逆にエンジン幅が狭ければ、低い位置に搭載してもバンク角の問題は起こりづらい。つまり、エンジン幅は搭載位置の自由度を決定している。

 図面 後日掲載します。

 では、幅と高さの両者がどの様にハンドリングと関連しているのかを、経験論から話してゆきます。

 クランクシャフトは回転する事で安定を生む。その幅が広ければより顕著である。すなわち直列4気筒はV型2気筒エンジンよりも安定性が強い。反対にV型二気筒のクランク幅は、単気筒よりも少し広い程度で、かなり狭いことが分かる。

 V型エンジンの幅が狭いという事は、低い搭載位置でもバンク角の制約を受けづらいので、搭載位置の自由度が高まる。直列4気筒はその反対である。ではどこにエンジンを置くのが良いのであろうか?

 この質問に対する回答は一つではない。アメリカンとスーパースポーツで仮に同じエンジンを使っていたとしても、搭載位置は大きく異なる。

 高い位置にエンジンを置くとどうなるであろうか? バンク角は大きく取れるし、重心は高くなり中立付近の据わりは良くなり一方、バンク角が深くなると高重心がバイクを地面へ呼ぶ事となり、良く倒れるバイクとなる。その反面、フルバンク付近で安定性に欠けアクセルを開けても車体が起きづらい現象が見られる。

 低い位置にエンジンを置けば、中立付近は軽く動き倒し込みも楽になる。他方、フルバンク付近では起き上がり小法師の様に、起きようとする力が大きく、この領域では重たいバイクになる。

 これはそのまま四気筒エンジンにも当てはまる。つまりは横置き直列4気筒エンジンは安定性の強い幅広のエンジンを高い位置に搭載しなければならない(Vツイン比較で)。
 ではここで実際の搭載位置とエンジン形状の違いを解説する。

 Vツインは直四に比べ、低くマウントできる。エンジン幅が狭いからである。しかしそれ以外にも重要な点がある。それは短いクランクシャフトは安定を生み出しづらいが、搭載位置が低い場合にクランクのジャイロ効果が弱いおかげで、フルバンク付近の立ちが弱いのである。この事が特に重要となる。

 逆に、高い位置にエンジンを置けばフルバンク付近の安定感は薄れる。という事はクランク幅の狭いエンジンを高い位置に置く事は安定感を得るのが難しくなる。反対に直列四気筒は、低い位置に置けば、バンク角の問題とともにフルバンク付近でバイクの立ちが強烈になる。
 この様に、バンク角だけでなくクランク幅により得られるジャイロ効果が変わる事で、搭載位置が限定されるのである。

 エンジンの幅による差は全面投影面積にも影響を与えるが、車体の幅を決める要素はリアタイアのチェーンラインが重要で、それはつまりリアタイアの幅と同義である。ホイール幅が変わらなければ、くるぶしの位置はある程度決まってしまう。つまりバイクを正面から見た時に張り出す足の位置はエンジンでは決まらない。ハンドル幅ももちろんエンジンに左右されないので、結論はタイアサイズという事になる。

 極端な話、空力の面では多少V型が有利ではあるが、それほど極端な違いはないと考えられる。

 空力に関しては門外漢なので、知見を持っている方からすれば、色々と意見もあろうと思いますが、そこは逆に教えて頂ければこちらも助かりますので、ぜひ教授頂きたいです。