Moto Guzzi V9 Roamerの試乗とセットアップ

 この車両の基本特性は以前に動画で話しましたが、ここでもう一度記しておきます。

 フロントフォークが柔らかく動きが大味です。さらにリアの車高が大幅に高く、まるでスーパースポーツを思わせるフロントを軸に曲がろうとします。

 この2点を解消すると、伝統的な操舵性が顔をのぞかせます。本来の車格やハンドリングはリジットマウントの頃のハーレー・スポーツスター883Rに似ていると感じています。

一番重要なのは、リアショックの自由長とバネ定数。

 フロントフォークはバネ定数が0.6Kgf/mmです。小排気量向けの設定なので私には良いと思えません。プリロードをいくら掛けても動き出しが遅くなるだけで、乗り心地が悪化して良いことは殆どありません。

 そこでバネ定数を0.8Kgf/mmと改めました。プリロードについては好みがありますので「これが絶対の最適解」というものはありません。

独自設定のバネ。0.7~0.85Kgf/mm位が良いと考えます。

 プリロードは純正のカラーを旋盤で切り詰めて調整しました。

プリロードアジャスターがあればもっと楽しめそうです。

 前後の車高もプリロードに関わっていますから、それにより設定荷重は変わってきます。だから個人個人で微調整が必要となり、厳密な数字を明かすのは無意味であり、余計な先入観を与える必要もないとの配慮で明かすことはしません。

どんな車両でも基本的にはリアの設定が基本となります。

 実は過去にXJRのオーリンズリアショックを改造、取り付けしてV9Roamer用に仕立てた経験があります。これはベースが高額なグランド・ツインを用いた事もあり、極めて上質な乗り心地を提供してくれました。

 その感触を少しでも活かせるようにと、スプリングはオーリンズを用いています。

新作バネ。

 以前のブログで詳細を記したオーリンズの新作バネです。旧型の360-06と違い、やや神経質な部分はありますが、概ね同じ程度の使い方が出来ます。

 神経質とはプリロードが過剰だと動きがピリピリします。その変化がゆっくり現れるのか、ある点を境に急激な変化をみせるのかが使い勝手に大きく影響し、この新作バネはやや後者の比率が増したように感じました。

 ただし、これはもっと別の車種や減衰の設定を吟味して使い込まなければ端的に評価出来るものではありませんので、現段階における評価として下さい。

 仕上がったの操舵性
 過去に3台ほどV9Roamerに関わり前後ショックを改造し、ハンドリングを造り込みました。その経験があるため、それほど時間を掛けず仕上げることが出来ました。

 リアタイアを軸に旋回する特性は正にトラディショナルというべき物です。少し意外に感じるかもれませんが、リアがピタッと落ち着いてからスッとフロントが落ち着く感触はなかり気持ちよく、現実的な速度域においてもハンドリングから得られる感覚は、快楽に等しい水準です。

 できるならばリアショックをオーリンズとし、フロントにもFGRのようなカートリッジキットでより上質さを追求してみたいと思わせる良い車両です。

 V9にスポーツモデルがあるのか知りませんが、ステップをより後退させ上に持ってくれば素晴らしくスポーツ性が上がるので、そういった改造も良さそうです。

フロント19インチ。

 前輪の寸法は19インチと現代的ではありませんが、そのおおらかさは走りの基本を知るには良い特性です。Z1等の純正も同様の寸法です。10年以上前に19インチホールのハンドリングを体験して依頼、大径ホイールに魅力を感じています。

 CB1000SFやCB1100など18インチを採用していますが、くるっと小回りの効く旋回性ではなく、ユッタリしたハンドリングはツーリングで穏やかに走るのもスポーツ走行においても、適度といった感覚のため、初心者の方よりも現代車両で走り込んだ方に一度味わってもらいたい特性です。

リアタイアの寸法も現代では珍しい。

 リアタイアは16インチですが扁平率が高くこぶりな17インチと大差ありません。

 今回の内容は動画にもしますので、ぜひ当社のYou Tubeも御覧ください。

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