MT-09の純正リアショックO/Hの注意点

 人気車種のMT-09ですが、リアショックはKYBを採用しています。

 このリアショックの性能を発揮するためには幾つかの注意点があるので下に列挙します。

1 エア抜きをしっかり

 リザーブタンクを持たないのでエア抜きをバキュームポンプで行うのが手間です。当社ではアダプタを制作してソレを可能にしていますが、それでも実行するかどうかは会社、作業者次第です。

 このエア抜きをおろそかにすると初期の性能を発揮できなだけでなく、劣化も極端に早まりまるため注意して作業する必要があります。

減衰調整機構があるので、バキュームポンプが使えます。

2 ガイドブッシュの圧入

 ガイドブッシュはオイルシールのホルダ(俗称でシールヘッド)に圧入しますが、叩き入れると歪み真円になりません。そのため治具を用い圧入側のケースにも養生を施してから入れてゆきます。こうすることで極力変形しないようにします。

 ガイドブッシュは板を巻いて円形にしているために、斜めに入れると併せ面がずれて寸法が大きく変わります。実験で試したことがあり、入れ方次第ではかなり歪みます。

右上の棒状の治具が要。

3 フリーピストン

 オイルとガスを分離するためにフリーピストンを採用しています。この部品はショックの動きに思いの外大きな影響を及ぼします。ここの摩擦抵抗が大きいと、余計な硬さがでて乗り心地が著しく悪化します。

 そこでOリングとピストンの組付け準備や、シリンダへの挿入時にしっかりとした手当を行います。予算に余裕があれば、シリンダ自体に手を加え更に乗り心地を上質にすることも可能です。

フリーピストンとシリンダ。

4 その他の作業

 ロッドの表面状態を入念に確認し、問題が無いのかを明確にします。錆や傷を見落とすと早期にオイル漏れが派生するからです。

ロッドは入念に研磨。

 入念に掃除したピストンとシム。ここにゴミが噛み込むと減衰を発生しなくなり、危険な状態になりますから、特に気を配る必要があります。

ロックタイトとポンチで緩みドメを二重にします。締め付けトルクも社内基準で決めてあります。

 組み上がった部品を挿入する際には、ただ入れるのでなく滑らかに入るよう、グリスを塗ったり傷を排除するなどの手当を行います。これを怠けると動きが悪かったりオイル漏れの原因になります。

組み上がったロッド。

 最後は完成したダンパを押して問題が無いか確認です。減衰調整の部分で回転量が多い・少ないなど細かい箇所ですが、大切です。ダンパの長さや性能に変化が起こるからです。

組み付け後のオイル漏れ確認も、当然ながら重要。

 今回はいつもと違った趣旨の内容でしたが、また機会を儲けて技術解説のような事もしてみます。

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