OHLINSのフロントフォーク、オーバーホール

 オーリンズのフロントフォークオーバーホールの紹介です。

 部品代がかなり高額なため同社のフロントフォークを使う時は、そこを覚悟しなければなりません。しかし近年のOHLINSフロントフォークは価格以上に高性能なので、指摘部分を考慮しても魅力的です。

 今回紹介するのはDucati 1098の純正フロントフォークです。

この形状は一世代前の品になりました。

 トップキャップが旧型と現行では大きな変化があります。写真は旧型ですが、基本構造に違いはありません。近年の高性能フロントフォークでは一般化した「イニシャルを変更しても体積変化のない」イニシャルアジャスターです。

 内部構造はやや複雑になりますが、徹底したセッティングを追い求めるなら価値の有る機構です。完全分解すると手間が大幅に増すため、当社のスタンダードな作業では分解を省いております。プレミアムラインと呼ぶ完全分解前提の場合、又は当該箇所において不具合のある場合には分解作業を行います。

トップキャップを緩めたところ。

 カートリッジと呼ばれる部品を備えた、近代的な高性能フロントフォークの場合は部品点数が多く、オイルも簡単には排出できないため、簡便なオイル交換だけでは初期の性能を取り戻すのは無理があります。

 そこで最低でもカートリッジを取り外し、インナーとブラケットの下部に溜まったオイルを綺麗に取り除きます。

綺麗な部分は上澄み。引力の関係で汚れは下に溜まりやすい。

 さらにカートリッジ内の汚れも極力取り除きたいところです。

オーリンズはその点、カートリッジ内のオイル排出が簡単に行える。

 ここから先で、シムの清掃等に進む場合はプレミアムラインを選択して下さい。通常のスタンダードラインの作業では手を入れません。

 ただし、写真からも分かる通り削れたカスの交じるオイルは綺麗に排出するため、相当に状態は改善します。

オイルシールを外したところ。ここでもオイルの劣化が見て取れる。

 外した部品で漬けても問題のない場合は、その殆どを超音波洗浄機で洗います。その後はパーツクリーナーとウエスを用いて拭き取り作業を行います。やはり超音波だけではなく、実際に拭き取ると汚れはかなり落ちます。機械任せに出来ない部分がまだまだ多いのが現状です。

減衰調整のニードル部分も、超音波のあとで拭き取り作業を行います。

 個別の特徴として、上の写真にある調整ニードルと戻しのスプリングなどをオイル排出時に紛失することがあります。構造を理解していないと気付かない事もあるので注意しなければなりません。

 作業場を綺麗にしていればそれも起こりづらいのですが、雑な作業では意外と見落としがちな注意を必要とする部分です。

 インナーチューブの研磨

旋盤でインナーチューブを研磨。

 通常、金色のコーティングが施されているオーリンズのインナーチューブは研磨の対象外です。しかし、摩耗が進むとその限りではありません。以外なほど攻撃性を持つゴムの力でインナーチューブの一部においてコーティングが剥がれてゆきます。

 本来ならばインナー交換が必要となりますが、すぐにオイルが漏れるような状態でなければ、軽く磨いて再使用します。

 再メッキ、再コーティングは代理店との規約で行えないためです。

研磨後の表面。クロスハッチのような表情を確認できます。

 一般にチタンコート(DLCも同様に)はかなり硬度が高いでの、研磨しても研磨剤が負けて刃が立ちません。しかし下地たる硬質クロームメッキがあらわになると、上の写真でもみられるように研磨材の後がはっきりと見えるようになります。

 マイクロメーターで測定しても1/1000mmの変化があるかどうか、と言った寸法変化ですがここからは急速に摩耗が進行します。
 ですから研磨で誤魔化すのは回数制限があると知って下さい。

 その様な訳で、今回はスタンダードラインでのO/Hとオーリンズのオイルなど部品代を含め、税抜きで59,080円でした。 

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