構造が面白い

 多種多様な品をオーバーホールするのが、当社の強みかもしれません。理由は単純で、依頼を断っていたのでは商売にならない弱小企業だからです。ただ、そのおかげで大きな経験を得られました。

 現代の二輪車はかなりの割合でシングルチューブ(モノチューブ)のリアショック を採用しています。ツインチューブはFGのFFX,オーリンズのTTxに代表される一部のレース用だけの専売特許と思われる面もあるかもしれませんが、実はツインチューブこそダンパー黎明期に活躍したスタンダードと言える構造です。

 ツインチューブの構造、問題点はさておき、写真のワークスパフォーマンスはその実ツインチューブです。これの面白い点はFFX等は調整部分にピストンを用意し積層シムにより動きを作り出します。2/3分の二乗型です。
 ですがこのワークスパフォーマンスの調整部分はピストンやシムは持っておらず、弁と環状隙間調整の機構だけです。そのままではダンパー速度に応じて過剰な減衰が発生するのを、ロッド先端についたピストンに逃がし弁を設け、過減衰を防ぎます。この機構はごく最近のモトクロス用オーリンズTTxに採用されているはずです。はずというのは、ダンパーの説明文を読む限りで私が推察したからです。詳細は不明ですが大体は想像通りだと思います。
 

 現代ツインチューブではムーヴィングピストンは穴を持ちませんが、振り返れば現代ツインチューブの原点、ザックスのダンパーは減衰調整部分は調整だけで、動くピストンにシムが乗り、普通のダンパーの様な形をしていました。それが時間を経るにつれ変化を重ね、また原点に戻ってきた感があります。
 ですがこれはモトクロスという、かなりダンパー速度の幅が大きな使用環境において効果的で、街乗りではそれほどの必要性はなさそうです。

 このように、多岐にわたる品を分解してきたお陰で外観や説明文でもその構造をかなりの部分、透視するかのように見透かす事ができるようになりました。

 私の愛機たるBT1100はツインチューブのFFXを採用しています。素晴らしい作動性を発揮するこのショックに、ムーヴィングピストンは積層シム型を使い、新たな乗り味を模索できないかと思案しております。
 また一つ上の突き抜けた乗り味を求め、時間の許す限り試してみようと思います。

 最後に宣伝ですが、リザーブタンク付きワークスパフォーマンスは、ブラダが割れてしまうため自社製のアダプタと国産ブラダを用いて、長期間の使用に耐えられるように改造しています。
 ロッド再メッキ、ブラダ交換、上下ブッシュの削り出し製作などでおおよそ10〜12万円となります。さらなる改造提案も可能なため、ご用の方は問い合わせください。

 

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