ばねとダンパーの役割分担

 ばねとダンパーがどのように作用しているのか、そしてなにを制御しているのかを考えます。

 先ず、雑誌などでも見かける「ばねのみで、ダンパーが無い場合」を思考実験してみると、衝撃を受け、その力の大小によりばねは縮みます。何度かの伸縮を繰り返した後で収束し、静止しますが車両が走行していれば路面からの入力は絶えずありますから、ぞくにいう「ふわふわした」状態となるわけです。静止状態で一度の衝撃を受けた場合、なぜふわふわが収まるのかは二つの大きな要因があります。第一に車両の重量により、ばねが押さえつけられる。第二にばね自体にも減衰作用があるので、収束する。余談ですが、もし収束しなければ永久運動という事になります。

 今度は逆にダンパーのみで、ばねの無い場合です。ダンパーだけでは重量を支えられず沈んだ状態ですから、糸のようなもので吊るしていると想像してください。受けた衝撃はダンパーによりやわらげられます。しかし、ばねが無いので路面からの入力が続いた場合、ダンパーはストロークを使う(沈んだ)だけで、元の車高に戻ることは出来ません。

 これは何を意味するのか。ばねは位置(ストローク)を決め、ダンパーは時間を決めます。サスペンションを10mm沈めたい場合、1kg/mmのばねに10kgの入力でそれは達成されますが、10mmに到達するまでの時間をどう決めるのかがダンパーの仕事です。

 上記入力でストロークを5mmにしたい場合は定数を2kg/mmにすればよいのですが、では、入力は同じ10kgでストロークが10mmと5mmの場合、時間は同じなのか?机上論では多分同じでしょう。ばねが柔らかい場合は速く動き、硬い場合はゆっくりです。0.0以下の単位を測定誤差とすればほぼ同じような時間になると思います(これは私の意見ですが)。

 物の移動には必ず時間が伴います。移動距離と、移動時間。距離はばね、時間はダンパー。ばねの決めた移動量に、どうやって到達するかがダンパーの仕事です。1kg/mmのばねに2kg/mmのばねと同じ移動時間をもたらすのが、ダンパーです。この理屈を使えば、柔らかいばねで硬いばねの代わりを、ダンパーにさせることが出来ます。しかし、非常に限定的な場面でしか有効では有りませんから、文章から読み取れる方だけ、試してみてください。

 今回は文章だけで伝える難しさを実感しました。次は今回の補足と、車高についての原体験を書かかせていただきます。