前後サスペンションの関係と、ダンパーの動く順序①

 前後のサスペンションの高さについて考えます。

 取り付け高さについて、純正のサスペンションではフロントフォークの突き出しのみ可能な場合が多く、リアに関しては、イニシャルの変更により「結果的に高さが変わる」パターンが大多数です。リアに車高調整が付いているのは、一部の限られた車種がほとんどです。

 人が乗り負荷の少ない状態を、便宜的に静的高さ(スタティック)と呼び、コーナーで大きな負荷がかかり、サスペンションが充分に沈んだ状態を、動的高さ(ダイナミック)と呼ぶことにします。

 サーキット走行をされる方には、低負荷時の高さを簡単に調べる方法があります。コースインし1コーナーをゆっくり回る時、目線でイン側の白線(または縁石)を追ってください。そして目線で追ったように、車が白線を追うかを確認します。この時、後ろ下がり(前高)であれば車はアウトへ向かい、後ろ上がり(前低)ならば車はインへ向かいます。適正な状態であれば、目線と同じように綺麗に白線をトレースするはずです。これが私の中で「静的高さが均等」な状態です。

 上の方法で簡単に状態を調べられるはずですが、1コーナーが複雑な形状の場合は、他のコーナーで試してください。これを常に意識すれば、それだけでセッティング能力は大幅に向上します。

 次に動的高さを確認する方法です。出来れば平坦な路面で、かつ中速以上の長いコーナー、筑波で言うとダンロップ先の左か最終がわかりやすいと思います。ここを回る時に、低負荷時と同様にアウトやインに入るかを確認すれば、前後車高のバランスを確認できます。ヘアピンのような一気に負荷がかかり、すぐに抜ける場合は時間が短いので判断が難しくなります。

 低負荷時に綺麗に回るのに、高負荷時で同様にクリアできなければ、間違いがあると言えますから、セッティングを見直さなければいけません。逆も然りです。どのコーナーでも一定の旋回性(感覚)を車が持てるならば、乗り手は安心感を持つと同時に、余計な心配をせずに済むので、タイムアップの重要な要素となります。

 次回は、低負荷時のセッティングを進める話をします。

 ダンパーの動く順序とは、ストレートからコーナー脱出、戻ってストレートまでの動き方です。誤解の多い部分なので確認をしておきます。コーナー進入のブレーキでは前は沈み、後ろは持ち上がります。倒し込みは前後が沈み、加速状態へ移行すると前後とも伸びます。そして直線では、競技車両は前後とも伸びきり近く(伸びきる程)まで持ち上がります。

 感覚的に「加速状態は後ろは沈む」のは理解できますが、事実では在りません。これは理屈でも、私自身が確認した映像でも、確実です。もし加速でリアが沈むのであれば、いつリアが伸びるのか?それを考えると答えが出ます。ストレートでリアが沈み、減速でリアが伸びる、コーナーでリアが沈み、加速でリアが沈む。沈みっぱなしで、伸びるのはストレートエンドだけです。これは何か不自然ではないでしょうか。実は、私も昔は加速でリアが沈むと思っていました。

 余談ですが、ダンパーのセッティングを考える時に「加速時の問題は伸び、減速時は圧」と憶えておけば、大きな間違いを犯しません。