ZX-12Rのフロントフォークを念入りにO/H

 当社で設定してるO/Hの最上級はプレミアムラインと呼んでおります。

 今回はその内容を伝えます。

 交換部品は極力交換する
 カワサキが設定してる部品はオイルシールとダストシール、そしてOリング程度です。その二者はもちろん重要ですが、ガイドブッシュの交換も極力行いたいのが本音です。

ガイドブッシュを外したところ

 そしてガイドブッシュの高さも足りません。純正は8mmなので面圧(単位面積当たりの圧力)が高くなりインナーチューブへの攻撃性が高いので、お客様に提案して12~15mmへと改めます。この加工は部品代を除き¥19,800です。

旋盤加工。

 カートリッジを分解
 当社はプレミアムラインの依頼時に、カートリッジ(減衰力の発生源)を分解します。

洗浄を終えた伸び減衰のピストン。

 写真中央に移るピストンには摩擦を低減するためピストンリングが備えられています。これは可能であれば交換します。種類によってはリング交換不可の場合もありますので、その際は用意できればピストンを丸ごと交換することになります。または機械加工によりそれを可能にします。

 シムの一枚一枚を手作業にて洗浄する

写真のシムは他社で仕様変更してありました。

 超音波洗浄機の後で、手作業にて一枚一枚手洗いします。超音波だけでは取り切れない部分もありますので最終的には手作業が必要になります。ウエスの糸くずが残らないよう、エアブローで徹底して異物を排除しています。

ピストン部分も徹底洗浄

 ピストンはブラシ等を用いて、入り組んだ箇所の汚れを取り除きます。

 コチラは圧縮時の減衰力を発生するためのピストン。

かなり汚れいています。

 コンプレッション側の減衰力を発生するピストンですが、底部にあるため汚れが溜まりやすい過酷な環境に置かれています。これらも分解対象です。

 スプリングは測定と洗浄

写真の個体は極端に汚れていました。

 バネはかなり汚れます。これも超音波洗浄機に入れ大きな汚れを取り除きますが、ブラシやウエスも併用します。

 バネは硬さを測定し記録します。お客様にはそのデータを開示しています。

 減衰調整のニードル部分も分解する

先程の写真とおなじです。

 アルミロッドとピストンの台座を外し、内部を露出します。

分解には治具が必要です。

 このような箇所は入り組んでいるため、外から洗浄液を吹きかけるだけでは汚れを排除出来ません。手間はかかりますが、プレミアムラインはその手間代を頂き、作業を進める原資を確保しているわけです。

 トップキャップも分解
 

高性能フロントフォークのトップキャップは部品点数が多い

 トップキャップには減衰力調整とイニシャルアジャスタが備わっていました。ここの整備をすることでダイアル調整が滑らかに行えるので、気持ちよく回せます。
 それだけでなく、Oリング関係を新しくするので気密性を保つ意味でも重要です。

 最後に

 その他、シリンダなどの部品も研磨して動きを良くするための手当を行います。

 今回は総額で11万円強とフロントフォークのO/Hとしてはかなり高額ですが、メーカーの出荷時よりも格段に動きが良くなります。
 車両メーカーは全体の費用を最適化し、効率よく乗り手に良い品を届ける事に腐心していると思いますが、当社は先ず良い性能を求め、それに理解を示してくださるお客様に良い品を提供しています。

 高額に成りがちですが、ご自分の車両をより楽しみたい方には面白い選択肢になると思いますので、一度相談していただければ幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

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