ツインチューブ構造が低圧ガス(比較)の理由
目次
- はじめに
- ガスを封入する理由
- モノチューブとキャビテーションの関係
- ツインチューブ構造とは?
- ツインチューブにおけるガス圧の低さの理由
- 実験結果とガス圧力の最適化
- バネ定数とガス圧力の相関関係
- モノチューブとツインチューブにおけるガス圧運用の違い
- 結論
現代的ツインチューブ構造におけるガス圧の運用とその違い
前回の記事で、ショックアブソーバーにガスを封入する目的について触れましたが、今回は特に現代的なツインチューブ構造におけるガス圧の低さの理由について解説します。ツインチューブ構造の特徴を掘り下げ、なぜガス圧を低く抑えられるのかを技術的な観点から詳しく説明します。
1. モノチューブとキャビテーションの関係
まず、モノチューブ構造においては、ピストンの上下で大きな圧力差が生じます。特に、ピストンが押し下げられる際、下室(ピストンの下側)で圧力が急激に低下し、作動油が気化してキャビテーションが発生しやすくなります。この現象は、サスペンションの性能を著しく低下させるため、対策としてガス圧力を高める必要があります。
モノチューブでは、ピストンが下がる際にロッドが進入することによって下室の体積が増加し、その体積増加に対応するためにガス圧力を十分に高く保つ必要があるのです。これにより、体積変化に対する圧力不足が生じないようにすることが求められます。
2. ツインチューブ構造とガス圧の違い
一方で、現代的なツインチューブ構造は、モノチューブと比較して以下のような違いがあります:
- ピストン表面側では、ムービングピストンとシムによってオイルが圧縮され、高圧になる。
- ピストン裏面では、減圧されるが、全体的にツインチューブ構造では均一な圧力を維持することが可能です。
ツインチューブ構造では、下室というものが存在せず、圧力が全体に均等にかかるため、モノチューブのように高いガス圧を維持する必要がありません。これにより、必要以上にガス圧を高める必要がないのが特徴です。
3. ガス圧力の実験結果と最適化
私自身の経験からも、特定の車種やバネ定数の条件下で、ガス圧の調整を行いました。その結果、以下のような実験結果が得られています:
- 14Bar以上、12Bar、10Bar、8Bar、6Bar、4Barといったガス圧でテストを行ったところ、ギリギリで使用可能な最低圧は6Barでした。
- ガス圧を下げすぎると、キャビテーションや減衰力の低下などの問題が生じますが、逆に上げすぎると不必要な硬さや乗り心地の悪化につながるため、最適なガス圧の設定が重要です。
ただし、上限に関しては、モノチューブと異なり特に問題は見られず、バネ定数やイニシャル量など他の要素との兼ね合いによって調整が可能です。
4. バネ定数とガス圧力の相関関係
バネ定数とガス圧力は、サスペンションのストロークやレバー比にも影響されます。高いバネ定数を使用する場合は、ガス圧を低く設定しても安定した動作が期待できる一方で、バネ定数が低い場合は、ガス圧を適度に高めることでキャビテーションを防ぎ、安定した減衰力を確保することが求められます。
また、ツインチューブではガス圧がダンパー全体に均等に作用するため、ガス圧とバネ定数を最適に組み合わせることで、さらに精密なセッティングが可能になります。
5. 結論:モノチューブとツインチューブでのガス圧運用の違い
モノチューブでは、ピストン下側の圧力低下によるキャビテーションを防ぐために、ガス圧力を高める必要がありますが、ツインチューブでは均一な圧力分布が可能なため、ガス圧を低く抑えても安定した性能を発揮できます。この違いにより、ツインチューブ構造はより柔軟なガス圧運用が可能となり、乗り心地や減衰特性の調整に幅広い選択肢を提供しています。
このように、現代的なツインチューブ構造では、ガス圧を必要以上に高くせずとも、キャビテーションのリスクを抑えつつ、適切な減衰力を発揮することが可能です。これは、最新のショックアブソーバーがより効率的に設計されている一つの理由であり、特に乗り心地を追求する際に重要なポイントとなります。