ムルシエラゴのKONIショック メンテナンスとO/H
ランボルギーニ ムルシエラゴのショックO/H 完了報告
ランボルギーニ・ムルシエラゴのショックアブソーバーO/Hがひとつ、ようやく区切りを迎えました。
今回の依頼は「オイル漏れを直す」だけではなく、電子制御に関わる部分の修理も含んでおり、内容としてはかなり難しい部類に入るものです。

単なるオーバーホールでは終わらない今回のテーマ
通常のショックであれば、シール・オイル・ロッド・シリンダーといった機械要素の範囲で作業は完結します。
ところが、今回のムルシエラゴ用KONIはそうはいきません。電子制御(正確には“遠隔操作”に近い仕組み)に踏み込む必要があり、ダンパー本体だけを相手にしていては解決しない内容でした。
オイル漏れだけであれば、構造を把握したうえで適切なシールとオイルを選定し、精度よく組み上げれば済む話です。
しかし「電子制御の機能を保ったままO/Hを行う」となると、話の難易度は一段上がります。今回はまさにその領域に踏み込んだ案件でした。
ムルシエラゴ用KONIダンパーという特殊な存在
ムルシエラゴに採用されているKONIのダンパーは、見かけこそ“昔ながら”のショックに見えますが、中身はかなり特殊です。
現行の電子制御ショックの多くは、ソレノイドバルブや制御ユニットをショックの外側に持ち、ダンパー本体は油圧機械として比較的シンプルに保たれています。
一方、ムルシエラゴのKONIは発想が逆で、ロッド内部にモーターと基板を収めた構造になっています。

内部の仕組みとしては、いくつかの段階を切り替える「多段減衰」のような考え方で、
外部からの信号でモーターを回し、ロッド内の機構を動かして減衰を切り替える ―― その意味で“電子制御”というより“機械式を電気で遠隔操作している”構造と言った方が実態に近い存在です。
ロッド内部にすべてを収めることの宿命と弱点
ロッド内部にモーターと基板を押し込む構造は、見方によっては非常にチャレンジングです。
一体化されているがゆえにコンパクトで、車体側のスペース的には有利です。一方で、技術的・メンテナンス的には明らかな弱点も抱えます。
ひとつはシーリング(密閉)の難しさです。
可動部と電装部が同居し、さらにオイル圧がかかる環境で確実な密閉を維持するのは、どうしても構造的ハンデを負います。
もうひとつは分解・修理の手間とリスクです。
ロッド内部を完全に分解しない限り、どこに不具合が潜んでいるのかを特定しきれません。
逆に言えば、一度手を付けるなら「最後までやり切る覚悟」が必要になります。

電子制御部を含めた分解と、部品造り直しという解決策
今回は、ロッド内部を含めて全て分解し、必要な部品は新規製作によって置き換える方針を取りました。
当然ながら、ここで全ての手順や寸法を詳述することはできません。
電子制御の要となる部分は、企業秘密であると同時に、外部に安易に模倣されるべきものでもありません。
ただ、大枠としては、
- ロッド内部のモーター・基板・機械機構をすべて分解
- 摩耗・腐食・寸法劣化のある部品の洗い出し
- 強度・寸法精度を満たす新規パーツの製作
- シーリング部の設計見直しと再構成
といった流れを経て、最後に油圧としてのショック機能を復元しつつ、電子制御としての機能も保持するよう組み上げています。
耐圧検査を経て、ようやく「出荷できる状態」に
組み上げが終わった段階は、あくまで「形になった」に過ぎません。
そこからさらに耐圧検査を行い、オイル漏れの有無やシール部の安定性を確認します。
今回のムルシエラゴ用KONIも、耐圧検査において漏れはなく、
電子制御部を含めて所定の機能を確認できたため、「出荷できる」と判断しました。
とはいえ、電子制御部品を抱えたダンパーは、本質的に**“経年と熱に弱い”構造であること**は否定できません。
今回のように部品を造り直して延命・再生することは可能でも、「もう二度と壊れません」と言い切ることは、技術者としてはできません。
その意味では、オーナー様・ショップ様には、「こうした構造の上に成り立つショックである」という前提も共有したうえで、
今後のメンテナンスや使い方を考えていただく必要があると感じています。

今後のムルシエラゴ・ランボルギーニ系ショックへの向き合い方
ムルシエラゴのような年代のランボルギーニは、
ショックの構造が“過渡期”特有の複雑さを持っており、作業の難易度は年式の新旧だけでは語れません。
単なるオイル漏れであれば比較的ストレートに解決できますが、
電子制御部・ロッド内部構造まで踏み込む必要がある場合、
「どこまでやるか」「どこまでなら現実的か」という判断もセットで求められます。
すべてを新品交換で済ませるのは簡単ですが、高額であることは言うまでもありません。
一方で、O/Hと修理を組み合わせることで、コストを抑えながら性能を維持・再生できる可能性もある。
その中間点をどう探るかが、これからのランボルギーニ系ショックと向き合ううえでのテーマだと考えています。

お問い合わせについて
ランボルギーニのショックO/Hでお困りの際は、まずは一度ご相談ください。
ムルシエラゴに限らず、車種・状態・構造によって対応可否や手法は変わりますので、個別に判断いたします。
エンドユーザー様からの直接のご依頼ではなく、基本的にはお付き合いのある修理工場・販売店様を通じての実務依頼をお願いしております。
一方で、「この状態は直る可能性があるのか」「そもそも構造的にO/Hが現実的なのか」といった技術的なご相談や納期感の確認については、ユーザー様からの直接お問い合わせにも対応可能です。
お問い合わせ先は以下の通りです。
- 電話番号:090-3316-5306
- LINE ID:@llv7594i
- お問い合わせフォーム:https://sgfacendo.com/contact/
ムルシエラゴのKONIに限らず、「これはさすがに難しいのでは?」と思われるショックであっても、
一度現物と状況を拝見したうえで、可能な範囲と現実的な落としどころをご提案いたします。
