磁性流体の研究 BWIショック
BWI磁性流体ショックへの理解を一段深くするために
フェラーリ、ランボルギーニに採用されている BWI の磁性流体ダンパーについて、ここ数年かけて分解・O/H・試験を続けてきました。
その延長線上として、今年はもう一歩踏み込んだ「研究」に重心を移しつつあります。
磁性流体を“数字”で捉えるための成分分析
これまでの作業でも、ノーマルショックから抜き取った磁性流体の「手触り」や「動き」で、おおよその粘度や挙動の傾向は掴んできました。
しかし、感覚だけに頼っていては限界があります。
そこで今回、実際に抜き取った磁性流体を専門の研究機関に預け、成分分析を依頼することにしました。

・粘度の絶対値だけでなく、その温度依存性
・粒子径や分散状態の傾向
・前後ショックやモデル間での違いの有無
こういった情報を数値として把握できれば、O/H 時のフルード選定や充填条件を、より精密に詰めていくことができます。
「何となく合っている」ではなく、「この条件なら新品時の特性に限りなく近い」と言えるところまで持っていくのが狙いです。
電子制御の核心部を実物で確かめる
同時に、電子制御まわりの理解ももう一段階深めるため、BWI のショック本体を研究用に新規入手する予定です。
O/H 用ではなく、「分解と観察」を前提とした一式ですので、かなり高額な投資になります。
目的は二つあります。
ひとつは、カタログや特許図面では見えない「実際の構造」を自分の目で確認すること。
コイルの巻き方、配線の取り回し、センサーやカプラ周りの作り込みなど、分解して初めて見える部分は少なくありません。
もうひとつは、電子制御部の“どこまでなら現実的に修理対象になり得るか”を探ることです。
磁性流体そのものやオイルシール類の交換は、すでに業務として確立されていますが、電子制御の核心部は非常に繊細で、触り方を誤ると一発で再起不能になります。
現時点では「電子制御部の本格修理は基本的に不可。ただし一部例外的に対応できるケースもある」というスタンスです。
この「一部」を少しでも広げられないか、その可能性を検討するための材料として、研究用ショックの導入を決めました。

O/H の精度を上げるということ
磁性流体ショックの O/H は、従来の油圧ダンパーと比べても、難易度は一段高いと感じています。
・内部構造が複雑で、分解・組立ての手順が多い
・磁性流体そのものが特殊で、一般的なダンパーオイルの感覚が通用しない
・電子制御部を傷つけないための治具・手順が必須
こうした条件から、世界的に見ても BWI の磁性流体ショックを分解・O/H している工場は多くありません。
だからこそ、ノウハウが「経験と勘」に偏らないよう、成分分析や構造解析といった地道な作業を挟み込み、O/H の精度を一段ずつ上げていく必要があります。
最終的にお客様が感じるのは「乗り心地」や「安定感」という感覚的な部分ですが、その裏側には、こうした数字・構造レベルでの積み上げがあります。
そこを疎かにしないことが、フェラーリやランボルギーニにふさわしい仕事だと考えています。

対応可能なメーカーとご相談について
フェラーリ、ランボルギーニに関しては、BWI に限らず以下のメーカーのショックに対応しています。
・BWI
・Bilstein
・ZF Sachs
・KONI
一部のモデルや特殊仕様では非対応となる場合もありますが、車種・年式・症状をお知らせいただければ、可否の判断とおおよその流れについてご案内いたします。
なお、フェラーリ/ランボルギーニについては、エンドユーザー様との直接の金額のやり取りは行っておりません。
お付き合いのあるディーラー様や修理工場様、販売店様を経由していただく形が基本となります。
お問い合わせ窓口
・電話番号:090-3316-5306
・LINE ID:@llv7594i
・問い合わせページ:https://sgfacendo.com/contact/
「自分の車種は BWI かどうか分からない」「どこまで O/H できるのか」「交換しかないと言われたが、選択肢は他にないのか」
こういったご相談は、ユーザー様から直接いただいて構いません。可否と大まかな方針については、可能な範囲でお答えいたします。
そこから先、具体的な見積や作業のご依頼は、これまで通りディーラー様・修理工場様を通して進めていただければと思います。
