DR-Z4S 前後サスペンションの再セッティング = 本来あるべきハンドリングバランスの回復

【DR-Z400S LTD2.2】ローダウンは「改悪」か? 純正サスの違和感を物理で解き明かす(前編)

DR-Z400Sのローダウン・コンプリートモデル「LTD2.2」が完成しました。

今回はリンクプレートを使わず、前後のスプリング交換によって車高とバランスを適正化する手法をとっています。

明日のシェイクダウン(実走テスト)を前に、なぜその手法が必要だったのか。

「ローダウンは走りをスポイルする」という定説へのアンチテーゼを、編集者との対話形式で紐解きます。


第1章:ローダウン=性能低下という「定説」

編集者

「いきなり核心を突きますが、DR-Z400Sのようなオフロードバイクにとって、ローダウンは『禁じ手』に近いカスタムだと思われがちです。長いストロークこそが命なのに、それを縮めるわけですから。

一般的には『足つきと引き換えに、走りの性能(底突き耐性や旋回性)は捨てる』という、ある種の諦めが含まれるカスタムですよね?」

私(新保)

「おっしゃる通り、安易なローダウンは改悪になりかねません。特に安易に『リンクプレート』を入れてレバー比を狂わせ、フワフワの腰砕け、または下がるけれど硬くなる手法は、サスペンション本来の動きを殺してしまいます。

だからこそ、弊社ではリンクプレートによる挙動変化を嫌い、**『スプリング交換』を前提としています。

さらに言えば、今回の『LTD2.2』は単に車高を下げるだけでなく、『ノーマル状態で感じたネガティブな要素を解消する』**という、チューニングの側面も含んでいるのです」

LTD2.2の説明記事はこちらをご覧ください。


第2章:純正サスペンションの「違和感」

編集者

「ノーマルのネガ、ですか? DR-Z400Sといえば20年以上愛される名車です。その後継機種なのでバランスは完成されているように思えますが……」

「実際にノーマルに乗って、真っ先に感じたのは**『リアの硬さ』**でした。

今回、身長165cm、173cm、180cmというバラバラの身長で、しかし体重は全員約70kg前後という3名のスタッフでテストを行いました。

結果、全員の意見が一致しました。『リアが硬く、乗車1Gでの沈み込みが足りない』と。

リアが高いまま沈まないので、車体は常に**『前下がり(ノーズダイブ気味)』**の姿勢になります。その結果、オフロードバイクなのに、まるでフロントタイヤからグリグリ曲がっていくスーパースポーツ(SS)のようなハンドリングになっていました」

編集者

「SSのようなハンドリングと言うと、オンロードでは『良いこと』のように聞こえますが?」

「舗装路専用ならそれでも良いかもしれません。しかし、これはオフロード車です。

バイクの前後荷重配分は、基本**『50:50』**であるべきです(SSでも本来はこうであるべきというのが私の認識)。

もちろん走行状態によって前後荷重は常に変化しますが、ここで言う50:50とは“旋回中に前後タイヤが同時に仕事を始める基準点”の意味です。

純正のように極端な前下がり(例えばフロント55:リア45)の状態だと、常にフロントタイヤに過度な仕事させていることになります。

これは以下のリスクを生みます。

  1. コーナー進入: 常に前のめりなので、減速Gを掛けるとタイヤの限界を超えやすく、フロントからスリップダウンしやすい。

  2. コーナー脱出: リアに荷重が乗り切らず、加速してもトラクションが逃げて**オーバーステア(横滑り)**になりやすい。

つまり、『入り口でコケやすく、出口ですっぽ抜けやすい』。このバランスを補正し、前後均等に荷重を使えるようにするには、リアのバネレートを下げて車体をフラットに戻す必要があったのです」


第3章:なぜ「フロント」まで変える必要があるのか?

編集者

「なるほど。リアを下げるのは『足つき』のためだけでなく、『前下がりの危険な姿勢』を補正するためだったと。

では、リアスプリングの交換だけで解決しそうですが、今回はフロントスプリングも交換されていますよね?

先ほどの話では『フロントのレートは適正』とのことでしたが、なぜわざわざ手を加えたのですか?」

「ここには2つの物理的な理由があります。

1つ目は**『プリロード(イニシャル)の適正化』**です。

DR-Zのフロントフォークには調整機構がありませんが、純正は少しプリロードが掛かりすぎている印象で、動き出しに『つっぱり感』がありました。これをバネ交換でリセットしたかった。

そして2つ目が、**『荷重移動の罠』**への対策です」

編集者

「荷重移動の罠?」

「想像してみてください。リアをローダウンして車体姿勢が後ろに下がると、物理的にフロントタイヤにかかる荷重(面圧)は減りますよね?

荷重が減ったのに、フロントスプリングが純正(強いまま)だとどうなるか?

相対的に**『バネ勝ち』**の状態になり、ライダーはフロントを今まで以上に『硬い』『弾かれる』と感じてしまうのです」

編集者

「ああっ、なるほど!

リアだけ下げて『なんかフロントが落ち着かない』となる失敗例は、フロント荷重が抜けたことによる『相対的な硬化』が原因だったんですね」

「その通りです。だからこそ、リアを下げて荷重バランスを変えるなら、それに合わせてフロントのレートやイニシャルも見直さないと、本当のバランス(50:50)は取れないのです」


結び:明日の実走に向けて

編集者

「単なるローダウンキットかと思いきや、中身は**『崩れた荷重バランスの再構築』**だったわけですね。

・リアを下げて、過度な前荷重を抜く。

・フロントも調整して、抜けた荷重に合わせた動き出しを作る。

机上の理論としては完璧です。これで足つきが良くなり、かつハンドリングが素直になるなら、まさにDR-Z乗りの悲願と言えます」

「ええ。数値と理論は揃いました。

あとは明日、実際に走らせて、この『LTD2.2』が意図通りの弧を描いて曲がってくれるか。

マンホールのギャップ吸収からブレーキング時の姿勢変化まで、徹底的にチェックしてきます」

(後編「実走インプレッション」へ続く)

問い合わせ

DR-Z400S(SM含む)の足つきや取り回しに不安がある方、林道やオンロードで「もう少し自分に合った動き」に近づけたい方は、LTD2.2を含めて一度ご相談ください。
身長・体重・使用目的(林道/ツーリング/モタードサーキットなど)をお知らせいただければ、「どこまで下げるべきか」「どこからセッティングを見直すべきか」を前提条件から整理したうえでご提案いたします。

お問い合わせは、いずれの方法でも結構です。

「まずは相談だけ」「LTD2.2とLGN、どちらが自分向きか知りたい」といった段階でも歓迎します。DR-Z400Sを“カタログ値”ではなく“あなたの条件”に合わせる一歩を、一緒に詰めていきましょう。

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