Ferrari 612 Scaglietti

フェラーリ612 Scagliettiのショックオーバーホール(O/H)に関する技術詳細

フェラーリ612 Scagliettiの特徴とショックに対するエンドユーザーのニーズ

フェラーリ612 Scagliettiは2+2のグランドツアラーで、その美しいデザインと高性能が世界中の愛車家に愛されています。このモデルは、パワフルなV12エンジンと贅沢なインテリアを特徴としており、特に長距離ツーリングで快適な走行性能を発揮する車としても知られています。

今回の依頼は、フェラーリ612 Scagliettiを愛するエンドユーザー様が、気に入っているこの車両の前後ショックをオーバーホール(O/H)したいという要望から始まりました。業者様を通しての依頼ですが、エンドユーザー様にとって、この車両のサスペンション性能の復元・向上は非常に重要なポイントとなっており、乗り心地とパフォーマンスの最適化を望んでいます。

ビルシュタイン製電子制御ショックの特性と課題

フェラーリ612 Scagliettiに搭載されているショックは、ビルシュタイン製の電子制御ショックで、車両のサスペンション設定を自動的に調整する高度な技術が採用されています。このシステムにより、様々な走行条件において最適なダンピングを提供し、快適かつ安定した走行を実現しています。しかし、ビルシュタイン製の電子制御ショックは、一般的にはオーバーホール(O/H)が不可能とされており、通常は交換が推奨される部品です。

その理由は、このショックが非常に複雑な構造を持っているためです。特に内部に存在する微細なオイルの通路や電子制御システムが、分解や再組立てを困難にしています。間違った作業を行うと、オイルが正しく流れなくなり、ダンパーの性能が大幅に低下する危険性があります。また、電子制御システムの配線も複雑で、これを傷つけないように作業を行う必要があります。

弊社の技術開発とO/H対応

一般的には「不可能」とされているフェラーリ612 Scagliettiのビルシュタイン製電子制御ショックのオーバーホールですが、弊社では技術開発の末、これを可能にする方法を確立しました。特に、以下の技術的な工夫や対策により、精密な作業を行っています。

1. オイル粘度の確認と精査

ショック内部のオイルは、サスペンションの動作において非常に重要な役割を果たします。オイルの粘度が適切でない場合、ダンパーの性能が低下し、サスペンションの動きが不安定になる恐れがあります。弊社では、純正オイルと同等またはそれ以上の性能を持つオイルを厳選し、粘度の確認と精査を行った上で作業を進めます。これにより、オーバーホール後も元の性能を維持し、安定した走行を実現しています。

2. 微細なオイル通路への対応

ビルシュタインの電子制御ショックには、細かいオイル通路が多数存在します。この部分の作業を誤ると、ショックの機能が失われる可能性があるため、特に注意が必要です。弊社では、これらの精密な構造に対応するため、特別な治具を使用し、作業の精度を確保しています。また、オーバーホール作業中にオイル通路が汚れることを防ぐため、徹底したクリーニングとエア抜き作業を実施しています。

3. 配線処理の工夫

電子制御ショックのオーバーホール作業において、もう一つの大きな課題が配線です。ショックの作業中に配線が邪魔をして作業が難しくなることがしばしばあります。弊社では、この配線を適切に扱うための特殊な手順を取り入れ、配線を傷つけることなく安全にオーバーホールを行うことが可能です。

4. 加工技術による永続的な対応

一度きりのオーバーホールではなく、何度でもオーバーホールが可能となるよう、弊社では各種加工を施しています。この加工により、ショックアブソーバーの内部部品が摩耗しにくくなり、長期間にわたって安定した性能を発揮し続けることが可能です。お客様の愛車を長く楽しんでいただけるよう、メンテナンス性を向上させるための工夫を行っています。

まとめと今後の展望

フェラーリ612 Scagliettiの電子制御ショックのオーバーホールは、非常に高度な技術と細心の注意を要する作業です。しかし、弊社では技術開発により、これまで不可能とされていた作業を実現し、お客様に満足していただける結果を提供しています。今後も、より多くのフェラーリオーナー様にこの技術を提供し、愛車のサスペンション性能を維持・向上させるサポートを続けていきます。車両の性能を保ちつつ、快適なドライビングを楽しんでいただけるよう、私たちの技術は常に進化し続けています。

フェラーリ612 Scagliettiに限らず、他の高性能車のサスペンションオーバーホールにも対応可能ですので、お気軽にご相談ください。

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