クアンタムを考察する
佐賀県に住む方の依頼で、クアンタムを分解しました。
そこで、久しぶりにクアンタムのダンパーを考察してみます。
ロッド径14mmは以前のインチサイズと違い、汎用性が高く作業が楽になる点です。オイルシールは変わらず、長期使用でボロボロに崩れる材質を継承しているようです。シリンダー径35mmは、悪くない寸法だと思います。他社の36mmに合わせる形でしょうが、一般的な寸法より1mm小さいのは独自性を求めたのか、入手しやすいなど材料の問題かは察りかねます。
ピストンやシムの組み方は、以前から変わりないようです。フリーピストンの位置が下がり過ぎないような仕組みは素晴らしい発想なのですが、ガス容量が少なく高圧にできない為、スタートを低圧にしなければなりません。旧型を実測した時の数値は、スタート4kg/cmから始まりフルストロークで10kg/cmまで跳ね上がりました。
クアンタムが圧側の減衰を常に弱く設定するのには、伸び切時のガス圧力が低い状態で大入力があると、フリーピストンが入力に負け大きく動いてしまい、減衰が抜けてしまうのを誤魔化す意味があるのかもしれない、と考えています。
スプリングレートも常に低いと感じます。これは旧来の伝統的ともいえる手法で、入力はスプリングで受け、減衰はスプリングを抑える。低めの定数にイニシャルを多めに掛ける手法です。乗り心地を表現すれば、ギャップなどのアタリを逃がす、柔軟に受け止める。しかし減衰が弱いので、一回で収束せず数回のストロークの後で振幅が収まる。いわゆる、国産車が高速道路のつなぎ目を超える動きです。
半面、サスペンションは常に遊動しているような感触なので、接地感を得られ難い、実際接地力の弱い仕様だと思います。さらに減速から倒し込みでリアの安定感を得られないのは、ダンパー伸び切時に、トップアウトスプリングどころか、リバウンドストッパーもないからです。オイル通路を塞がない為の樹脂カラーがあるだけです。減衰が弱く伸び切が速いうえに、やんわりと入力を受け止めない構造は、ジャックナイフ状態を誘発します。
すべて私見なので製作者の反論、実際に乗っている方の反論も有りますでしょうが、上記の考察が現実のセットアップに少しでも役立てば幸いです。
普段から「ここのOリングは不要ではないか?」と思う部分にOリングが入っていませんが、もう片方には入っていたので、単に入れ忘れたようです。良い事とは言いませんが、数万単位で製作していれば、このような事も起こり得ます。