Quantum R34 GTR用をO/H

日産 R34 GT-R用 Quantumショック O/H事例 ― 国内仕様の違いに合わせた完全分解整備

リード文

今回は、O/Hを請け負う会社がなく困っていたお客様からのご相談で、
日産 R34 GT-Rに装着された Quantum(クァンタム)ショックのオーバーホールを実施しました。

Quantumは高性能で知られる英国製サスペンションですが、
実は日本国内に流通しているものは「英国仕様そのまま」ではなく、
**代理店独自の改造・仕様変更が施された“国内専用仕様”**が多く存在します。
そのため、一本一本の実測確認が欠かせません。


O/H依頼の経緯

お客様からのご相談内容は、

「依頼先がなく、QuantumショックをO/Hしてくれるところが見つからない」
という切実なものでした。

弊社では、これまでも複数のQuantum製ショックを扱っており、
再メッキ・再研磨・完全分解まで一貫対応が可能です。
今回もそのノウハウを活かし、前後4本フルO/Hを行いました。


作業内容と特徴

● ロッド再メッキ

フロント・リアともにロッド表面の摩耗があり、ハードクローム再メッキを実施。

  • フロント:ステンレス製ロッドでコーティング無し → 摩耗が早い傾向
  • リア:一般的な材質+ハードクローム処理 → 再メッキで新品同等へ


● シリンダー・ピストンまわり

  • シリンダーは摩耗が少なく、再利用可能
  • ピストンリングはほぼ減っておらず、Quantum特有の耐久性を確認
  • 一方で、今回の個体は内部のセカンダリーバルブの構造が特殊で、
    リザーブタンクを完全分解しなければ内部洗浄ができない構造でした。

このため、前後4本ともリザーブタンクを全分解し、
奥に堆積した汚れを丁寧に除去。
本来のダンピング特性を取り戻しました。


● サビ落としと研磨

リアショック内部のシムにサビがあり、
**バレル研磨(回転式研磨)**で表面を整えつつ、金属の質感を保ちました。
これにより、サビの再発を防ぎながら動作抵抗を最小限に抑制。

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● 国内仕様Quantumの注意点

作業を進める中で、改めて感じたのは「Quantumの国内流通仕様の多様さ」です。
イギリス本国仕様とは内部構成が異なり、
代理店によってピストン形状・シム構成・リザーブ構造が変更されているケースがあります。
したがって、一律のO/Hレシピでは対応できず、全数分解・実測が必須です。


納品と費用

  • 作業期間:受注多数のため約2ヶ月
  • 費用:再メッキ+完全分解O/H+スプリング脱着を含め、
    税込 約35万円

シリンダー摩耗で交換が必要な場合は、ワンオフ製作にも対応可能です。
製作費用は長さ・構造によって変動するため、都度見積もりとなります。


まとめ

Quantumショックはその設計思想の奥深さゆえ、
「分解整備できる工場が限られる」という課題があります。
しかし、丁寧な分解・再メッキ・内部洗浄を行えば、
新品同様の性能と乗り味を蘇らせることが可能です。


お問い合わせ(CTA)

QuantumのO/Hでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
構造が複雑なモデルでも、分解〜再生〜再メッキまで一貫対応いたします。


※メーカー保証については取り扱い店、ディーラーにより対応が異なるため、購入店またはお取引先にご確認ください。

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