Z900RS純正採用のダンロップGPR-300を評価。

 Z900RSを車体で預かりました。人気のこの車両を評価しようと考えたわけですが、その前にタイアを別に評価しなければ、車両自体の個性が明確にできません。そういった意味で今回はGPR-300を極力細かく分析してみました。

 既に動画では評価と印象を公開していますので、御覧ください。

 目次
 1 タイアの基本特性と個性的な部分、自社基準による採点
 2 試乗による評価
 3 Z900RSとの相性

 1 タイアの基本特性と個性的な部分

 基本特性はツーリングタイアのようです。耐摩耗性は分かりませんがそれなりに持ちそうです。前後の摩耗具合は、フロントよりもリアの方が距離による変形が大きい気がします。試乗を開始した走行距離は1,665Kmでした。

 基本的な諸元は車体を含めて、カワサキのリンク先を参照して下さい

 何が特徴的なのか?前後タイアのトレッドで曲率が大きく違うために、後で述べる操舵性に大きな影響を与えています。

 路面からの情報量はそれほど高くないのはツーリングタイアの恒ですが、これはケース剛性が高い事に起因していると推測しています。またヒステリシス摩擦よりも粘着摩擦を優先するタイアにも同様の傾向を感じています。

 空気圧を変更することでタイアの印象がどれほど変化するか、については2.2~2.6K位の範囲で細かく微調整が効くようで、その範囲を外れると通常使用では使わないと感じました。

 路面からの衝撃を受け流すファーストインパクトについては、柔らかく受け流す事はありませんでした。この指数はフロントタイアで強く体感できますが、2Kくらいまで内圧を下げても柔らかい印象にはなりません。ケース剛性の高さが要因でしょう。

 ラウンド形状とはタイアのトレッド面(路面と接する部分)のことですが、この形状が低負荷領域では車両の動きに大きく影響します。というかかなりの部分を締めていると考えています。
 トレッド形状はフロントは一般的な印象ですが、リアはかなり特徴的でそれがGPR-300の特色を演出していると思います。

 本来二輪車の中立付近はアンダー傾向(リアタイアの方がフロントと比して旋回半径が小さい)で、中間バンクでニュートラル、バンク角が深くなるとオーバーステア(リアタイアの旋回半径がフロントより大きく)となります。

 それがこのタイアではアンダー傾向が長く続き、ニュートラルが殆どなくオーバーへ移行します。その後、一気にリアを降り出すような不思議な感覚です。これを好ましいと感じる方も居るようですが、私としては唐突な操舵性を持つこのタイアは気難しく、自分では選ばないでしょう。

 安定性はリアの形状に大きく助けられ、高い。ツーリングタイアとしては良い特性です。

 グリップ力自体は必要充分ですが、先述の特性により、リアがじっくりと食いつく感じがなく、スポーツ走行の様な力をかけて曲がると滑りを誘発しやすいようです。
 逆にアクセルのオンオフだけでゆったりと走れば何ら問題は発生しないため、やはりゆっくりと走るのが向いています。

 2 試乗による評価

 前後ショックをメーカー出荷時のまま変更しないで走り、評価を行いました。

 1で概ね書き記しましたが、一番特徴的なのは前後タイアのトレッド形状の違いによる、タイアの軌道です。

 詳細は既に書きましたがもう少し細かく説明すると、倒し込んでフロントの内向性が高まりコーナー内側に向きが変わろうとするのに、リアタイアは直進しようとする。と感じるほどリアの内向性はなかなか高まりません。

 アンダーステアに業を煮やしバンク角を増してゆくと、リアタイアの中央部分が終わり端へ接地面が移行します。そうなるとニュートラルを一段とばしにしオーバーステアへ移ります。そのため自然な旋回性を得られないだけでなく、急激な変化によりタイアのグリップ力も高まらないように感じました。

 扱いが難しいのですがツーリングの使い方なら問題ないでしょうから、これは特性をとらまえて優しく扱うのが吉。

 3 Z900RSとの相性

 車両の外観から伝統的なリアタイアを軸とする旋回性を彷彿とさせる訳ですから、GPR-300との相性は基本的に良いと思います。

 ですが私の好みではありません。タイアにだけ旋回性の演出を押し付けているようで、もっとタイアと車両の帳尻を合わせて一体感を持たせればずっと楽しくなります。

 次回以降で出荷状態のサスセッティングを変更して、より楽しい車両に変貌するZ900RSを報告しますのでお待ち下さい。

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