【MT-10 SP 施工記録】ローダウン後の違和感を前後整合で修正

【YAMAHA MT-10 SP 施工記録】「下がっているのに乗りにくい」を解消。前後整合で取り戻した“普通”の走り(Before / After)

本記事は、YAMAHA MT-10 SPにおけるサスペンション施工の記録です。

数値上のスペックよりも、**「常用速度域(街乗り〜ツーリング)」**における安心感と操作の再現性を最優先し、崩れていた前後の整合性(バランス)を取り直した事例となります。


■ 0. 施工前(Before):体感として出ていた症状

編集者(以下、編):

今回入庫したMT-10 SPは、すでにローダウン済みだったとのことですが、入庫時はどのような状態でしたか?

新保(以下、新):

足つき性自体は改善していましたが、オーナー様が体感されていたネガティブな要素として、主に次の点が挙げられました。

  1. 乗り心地の悪化: 荒れた路面での突き上げが強く、衝撃がダイレクトに来る。

  2. 旋回性の欠如: コーナーで車体の動きがちぐはぐで、狙ったラインが作りにくい。

  3. トラクションの希薄さ: 旋回中から立ち上がりにかけて、アクセルを開けるのが怖い。

編:

全体的に走りの「まとまり」が薄く、操作に対する反応の再現性が低い状態だったわけですね。

新保:

はい。これは特定の部品や過去の手法を否定するものではありません。あくまで「ローダウン後の姿勢」と「サスペンション設定」の整合が取れていなかったことが原因です。


■ 1. 診断:原因は「前後整合」「動き出し」「姿勢」

編:

車高を下げると、なぜそのような症状が出るのでしょうか?

新保:

一般論として、車高を変えると前後の荷重配分や車体姿勢が変わり、サスペンションの使われ方(動き出しや沈み方の印象)も変化します。

その変化に対して、スプリング特性・プリロード・減衰力が追従していない場合は、乗り味は崩れやすくなります。

編:

高さだけが変わって、中身が追いついていなかったと。

新保:

今回のMT-10 SPは、物理的な高さは下がっていましたが、その条件下で前後が連動して仕事をする状態に揃っていませんでした。

結果として、入力が荒く感じたり、荷重移動が自然につながらないという症状につながっていました。


■ 2. 介入:何をしたか(施工範囲)

編:

では、今回は具体的にどのような手を入れましたか?

新保:

部品を替えること自体が目的ではなく、**「前後が連動して仕事をする条件を作る」**ために、大きく3点の介入を行いました。

2-1. フロント:姿勢と動き出しの整合

ローダウン後の姿勢条件に合わせて、フォークの突き出し量(姿勢)を再調整しました。あわせてスプリングの特性も見直し、狙った動き出しと「支え感」が出るように整えました。

狙いは、ブレーキや旋回の入力に対して、過敏でも鈍感でもない“素直さ”を作ることです。

2-2. リア:プリロードと姿勢バランスの適正化

既存の部品構成のままでは調整幅に限界があったため、必要な部品を新規製作して調整の成立条件を作りました。

そのうえで、ローダウン状態で崩れやすいプリロード(イニシャル)と姿勢バランスを適正化しています。

狙いは、旋回中の安定と、立ち上がりでアクセルが開けられる“安心感”の確保です。

2-3. 電子制御:減衰の微調整

MT-10 SPは電子制御サスペンションですので、走行モード側の減衰設定を、ハードウェアの変更に合わせて微調整しました。

狙いは、常用速度域での「路面情報」を整え、荒れた路面での角を丸める(ギスギス感を消す)ことです。


■ 3. 施工後(After):変化の確認

編:

施工後の最終チェックでの印象はいかがでしたか?

新保:

私が試乗を行い、Beforeの課題に対して以下の変化を確認しました。

  1. 乗り心地: 荒れた路面での当たりが「ドン」という衝撃から、角の取れた穏やかな情報へ変化しました。

  2. 旋回性: コーナーでの姿勢が安定し、狙ったラインに乗せやすくなりました。

  3. トラクション: 旋回中にアクセルを開ける不安が減り、立ち上がりが自然になりました。

編:

走りの“まとまり”が戻った、ということですね。

新保:

はい。操作に対してバイクがどう動くかが読みやすくなり、再現性が高まった状態と言えます。


■ 4. オーナー実走評価

編:

納車後、オーナー様からのフィードバックはありましたか?

新保:

はい。オーナー様より、実走後に以下の評価をいただきました。

「サスのしなやかさや、足付きの更なる改善に感動した次第です」

また、「セッティング前後のインプレッションをお待ちしております」というお言葉もいただいております。この“前後の印象”を言語化して共有することは、今後の微調整にも役立つ重要なプロセスです。

編:

サスペンションが正しく動くようになったことで、結果的に足つきの感触も良くなったようですね。

新保:

私自身の体感判断としても、突っ張り感が減り、1G(またがった状態)付近の沈み込みが自然になったと感じていました。それがオーナー様の感動につながったのであれば幸いです。


■ 5. 今回の施工範囲について

編:

最後に、今回の作業の前提条件について補足をお願いします。

新保:

今回の施工は、フルオーバーホールや車体全体の消耗品更新を目的としたものではありません。

あくまで、**「現状のローダウン条件下で、走りが成立する整合性(バランス)を作ること」**に特化した内容です。

編:

目的を絞ったチューニング、ということですね。

新保:

その通りです。車高の数字ではなく、**前後整合(姿勢・動き出し・支え)**を整える。

そうすれば、ローダウン車両であっても、常用速度域での安心感と楽しさは取り戻せます。


※メーカー保証に関しては取り扱い店、ディーラーにより対応が異なるため、購入店またはお取引のある店舗へご確認ください。

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