アヴェンタドールのBWIをオーバーホール

ランボルギーニ:アヴェンタドールのショックアブソーバーをオーバーホール

~BWI製ダンパー徹底解説~

■ 1. 今年も入庫!アヴェンタドールのリアショック(BWI)O/H

昨年から作業予約のあったランボルギーニ アヴェンタドールのリアショック(BWI製)が、弊社へ入庫しました。実際に工期は約1週間を見込んでおり、予約の関係上かなりスケジュールが詰まっていましたが、問題なく納期を確保できました。BWIショックのオーバーホールは弊社でも数多く経験しており、手順や必要部品のストック体制が標準化できているため、大きなトラブルなく進行できたのは幸いです。

今回のリアショックは、オイルが完全に抜け切ってしまうほどの大惨事ではありませんでしたが、少しずつ漏れが進行しており「オイル枯渇の前段階」といった印象です。まだ内部にオイルは残っているものの、ダンピング特性に悪影響を及ぼすレベルには達していました。


■ 2. BWIダンパーをオーバーホールする上での最大の壁

2-1. 分解の難易度が非常に高い

BWIダンパーは「分解できないように組み込まれている」と言っていいほど特殊な構造を持っています。安易に力を加えてこじ開けようとすると、あっという間に部品を破損させ、ダンパーとしての機能を失うおそれがあるため、発想力専用治具が欠かせません。
一度壊してしまうと純正部品の再入手が難しいケースも多く、最悪の場合ショック全体を交換せざるを得なくなるリスクがあります。そのため弊社では、長年培ったノウハウを駆使し、安全かつ確実に分解・再組立を行っています。

2-2. 磁性流体の管理

BWIダンパーは「磁性流体」技術を使用しており、この磁性体が減衰特性に大きな影響を与えます。磁性流体の詳細はメーカー非公開のため、一歩間違うと本来のダンパー特性を引き出せなくなるほど繊細です。
弊社では、オイルメーカーや大学教授、院生との情報交換、産業展での研究発表収集などを通じて、独自に磁性流体の振る舞いを数値モデル化しています。データをもとに、実際のO/H作業でも磁性体が適切に混ざり、分離しない状況を保てるよう管理を徹底しています。

2-3. 組立時に求められる安全性

分解が難しいということは、裏を返せば「安全のため、簡単には分解できないようになっている」ということでもあります。通常のショックアブソーバーよりも構造的に強固ですが、O/H後は「何度でも分解・再O/H可能」でありながら「万が一オイルが再び漏れても破損につながらない」よう、組立時のクリアランス設計を慎重に見直す必要があります。
こうした課題をクリアしてこそ、アヴェンタドールのBWIショックを安全かつ長寿命に仕上げることができるのです。


■ 3. BWIは“難しいダンパー”の代表格

弊社ではこれまでに多種多様な形式のダンパーやショックアブソーバーを扱ってきましたが、BWIはその中でもトップクラスの難易度といえます。構造複雑化の要因は以下のように挙げられます。

  1. 電子制御系の接続
    カプラー(ハーネス)部分が樹脂製で、年数が経つと脆くなることがあります。抜き差しだけでも破損リスクが高く、交換が必要になる場合も。

  2. 磁性流体の管理
    オイルと金属粉が混合された特殊流体であり、比重差によって放置すると分離してしまう可能性がある。
    長期間乗っていなかった車両では、慣らし運転が不可欠。

  3. オイルシール・スライドメタルへの負担
    砂鉄のような磁性体が混ざっているため、摩耗が進行しやすい。
    → 高精度な部品選定と組立手順が重要。

実際、BWIダンパーのO/Hは海外でも珍しく、多くのショップが「新しいショックの交換」を勧めるのが一般的です。しかし、弊社では現行の純正ダンパーを修理し再利用できる道を確立すべく、研究を重ねてまいりました。


■ 4. フリーピストンは一般的、でも油断は禁物

BWIのダンパーにはフリーピストン(オイルと気体を仕切る部品)が採用されています。これ自体は特別な技術というわけではなく、多くの高性能ショックに使われる構造です。しかし、磁性流体を扱う以上は通常よりも摩耗のリスクが高く、フリーピストン周辺のシール類の管理やメタルの選定には細心の注意が必要です。
一見すると「普通の部品」に思えるフリーピストンでも、BWI特有の磁性流体環境下においてはメンテナンス頻度やシール寿命をしっかり見極めなければなりません。


■ 5. 磁性流体の特性を読み解く——独自の研究体制

弊社がBWIショックをオーバーホールできる理由の一つは、独自の研究体制にあります。

  • 大学院生・産業展での情報収集

  • オイルメーカーテストへの参加

  • 自社内での数値モデル化・実機テスト

これらを通じて、磁性体の粘度や比重変化、温度による特性変化などをできる限り定量的に把握してきました。とりわけ、走行を長期間行わずに放置すると、オイルと磁性体が分離しやすくなる点は重要な知見です。オーバーホール後、車をしばらく動かさない場合には、乗り始めの“慣らし”を推奨しています。


■ 6. 今回のO/H概要と工期

  • 入庫から完成まで
    予約状況によって左右されますが、今回のアヴェンタドール・リアショックは約1週間で作業完了。

  • 標準化した工程

    1. 特殊治具を用いた分解

    2. 磁性流体とオイルの分離・再調合

    3. シール類・スライドメタルのリフレッシュ

    4. 組立後の減衰測定・リークテスト

    5. 電子制御カプラーのチェック

これらが弊社での主な作業フローです。もちろん、車両状態やショックのダメージ度合いによって工程は変動しますが、現在はほぼパターン化・標準化できているため、大幅な納期遅延を起こすことは稀です。


■ 7. 世界的にも稀少:純正BWIのオーバーホール

ランボルギーニ アヴェンタドールのようなハイパフォーマンス車に採用されている純正BWIダンパーは、世界的に見てもオーバーホールを請け負う業者が非常に限られています。多くの場合「ショックをまるごと新品に交換して終わり」というケースが多いからです。
しかし、ショックは車両全体の運動性能を支える重要パーツ。正しい技術と知見があれば、新品交換よりもリーズナブルかつ高精度に仕上げられる可能性も十分にあります。

ポイント:純正BWIダンパーO/Hのメリット

  • 交換よりも費用を抑えられる

  • 車両固有のセッティングを再現・微調整できる

  • 産業廃棄物の削減などエコフレンドリーな側面も


■ 8. お困りの際にはぜひご相談を

日本では唯一、世界的にも稀少な“BWIショックのオーバーホール”を提供する弊社ですが、お客様の車両状態や走りの好みに合わせてカスタマイズも承ります。
アヴェンタドールはもちろん、他のランボルギーニモデルやフェラーリ、BMWなど、電子制御を含むハイエンドショックのO/Hにも豊富な実績があります。「オイル漏れが少し気になる」「磁性体が分離しているかも」など、少しでも違和感を感じたらお気軽にご相談ください。


■ 9. ご連絡先

  • メール問い合わせフォーム

  • 電話090-3316-5306

  • LINE@llv7594i


  • ■ まとめ

    BWI製のショックアブソーバーは、分解の困難さや磁性流体の取り扱い難度など、多くのハードルを伴う非常に特殊なシステムです。しかし、正しい技術とノウハウを駆使すれば、オーバーホールによって本来の性能を取り戻すだけでなく、車両個々の走行シーンに合わせた最適化を施すことも可能になります。

    ランボルギーニ アヴェンタドールのリアショックをはじめ、高性能・高価格帯のスーパーカーのダンパー修理は一見ハードルが高いと感じるかもしれませんが、弊社では積み重ねた研究と作業実績がございます。大切な愛車を最良のコンディションで楽しむためにも、ぜひご相談いただければ幸いです。

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