ダンパーストロークの難しさ

スイングアーム交換車のリアショック――
「バネが合っていても“沈めない”なら台無しになる」 という実例です。


経緯

ドゥカティ Sport1000 はツインショック位置に 1 本だけ太いショック をレイアウトする珍しい構造。
今回、補強付きスイングアームへ換装した際、リアショックを極端に短くする必要が生じました。
長さとバネ定数は合わせ込まれていましたが――


問題点

  • ダンパーストロークが大幅に削られていた
    • 例えるなら、立った姿勢から “しゃがむ途中” で強制的にロックされる状態。
  • 結果として
    1. 向き変え中にリアがガツンと止まり、前のめり姿勢に。
    2. 小さなギャップでも即・底付き、乗り心地は最悪。

一次改善 ―「短ストロークで走らせる」応急策

  1. 硬めバネ+イニシャル抜き
    • 動き出しの柔らかさと沈み込み最奥の剛性を両立。
  2. 減衰を新バネに合わせ再設定。

→ 通常走行はこなせるようになったが、リアが入り切らず車高が高いまま

  • 旋回中の不自然さ(前荷重過多)は解消できず。

抜本改善 ― ストロークを取り戻す

項目 処置内容
ショック本体 車高調整機構のない Öhlins BMW 用モデルを流用し、ストローク量を最大化
自由長 微調整で適正ライドハイトを確保
バネ/減衰 車重・荷重に合わせ再設定

倒し込み〜旋回〜立ち上がり すべてで姿勢変化が自然になり、
“普通のバイク” のフィーリングに回帰。


注意点とまとめ

スイングアーム交換によるジオメトリ変化で最も見落とされがちなのは、
「バネ・減衰より先に “必要ストローク” を確保しているか」 という基本です。

  • バネ定数や減衰力だけを合わせても、
    ストロークが不足すれば操安も乗り心地も破綻します。
  • カスタム後に違和感が残る場合は、まずストローク量と車高バランスを疑ってください。


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