トライアンフ・デイトナ675のフロントフォークO/H

 以下、今回の記事概要です。

 1 依頼内容 
 2 作業紹介
 3 分解時の採取したデータを紹介
 4 組立作業時の注意点
 5 変更点とその意図
 6 まとめ

 1 依頼内容
 フロントフォークのダストシールにひび割れが発生したので、O/Hと併せバネ交換等も提案して欲しいとのことでした。

 デイトナ675はこれまでに数台手掛け、感じていた疑問点を解消すべくスプリング交換を手掛けて来たため、それを基にして提案を行いました。

 提案の内容は次のとおりです。排気量と車重に比して硬いバネを交換。追加で必要に応じてリアショックのO/Hとバネ交換も提案するといったものでした。

 2 作業の紹介
 当ブログではフロントフォークの作業を紹介します。必要なのはデータの採取です。これをしっかりと行わなければ元通りに戻せません。

トップキャップは伸び減衰とイニシャルが変更可能。

 伸び減衰のダイアル設定値(と全段数)。圧減衰のダイアル値にイニシャル量。他には分解して油面を調べておきます。

ブラケット部分に圧減衰の調整ダイアルがあります。

 必要な測定を終えたら分解に進みます。先ずはアウターチューブとトップキャップを分離。

 その後は専用工具でスプリングカラーを押し下げます。

FGの特殊工具を用いています。

 ここは非常に硬いため押し下げるのは一苦労ですが、専用の工具で難なく作業が進みます。

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 次にカートリッジのロッドとトップキャップの締結を緩めますが、難しい作業ではありません。追加で必要に応じ各部のデータを採取します。

ナットのセット位置も必要に応じて記録します。

 当社としてはナットのセット位置を重要視していませんが、一応は記録します。ここの数値を間違うとフロントフォークの全長が変化し、減衰調整の全段数も変わるので慎重な作業を必要とします。

 部品を外したら油面の高さを測定します。純正値がわからない場合はとても重要となるため、忘れずに記録しましょう。

排出したオイル。

 オイルの汚れ具合は状態を知るのに大変有効です。きれいに見えてもフォークの奥に溜まった汚れがあり、真っ黒になってゆきます。

 幸い依頼を頂いた個体は綺麗でした。とても珍しい事例です。この時、オイル粘度も推察しますが、KYBの倒立フォークの場合は大抵で倒立用の#5を用います。

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 オイルシールを外し洗浄に取り掛かります。このフロントフォークはガイドブッシュが固定嵌合のため、特段の必要性が無い限りはブッシュ交換は行いません。固定嵌合はあまりガイドブッシュが傷まないように思います。

 もちろん十分な観察を行った上で交換の可否を判断しお客様に提案しますが、固定嵌合は脱着工賃が高くなるため慎重に判断します。

表面研磨と同時に、曲がりも確認。

 インナーチューブの研磨はほぼ全ての作業で実施し、それはサビや傷の見落としに備える保険と動きを向上させる二つに意味を持ち合わせています。

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 組工程は残念ながら割愛しますが分解の逆手順で進めるだけとはいえ、一つ一つの部品組付けは丁寧に行い高い品質を約束します。
 少しの違和感を逃さず疑念を残さないのが品質担保には有効です。

 分解時の採取したデータ

 伸びダイアルの全段数 14段
 フォークスプリングの定数 1.05Kgf/mm
 油面高さ 105mm
 オイル粘度 #5
 内部イニシャル 5mm

 以上でした。

 変更点とその意図

 主な変更点は二つです。バネ定数と油面。その理由は試乗した印象が硬く動きづらいことに起因します。

 バネを柔らかくするだけだと、ボトム付近で動きが止まる印象でした。そこで油面を下げ奥の動きも確保したいと言うのが狙いです。他には作業者の考え方、動きの作り方によりますがオイルロックピースの有効範囲を変更するのも極めて有効となります。

 バネは0.9~0.95Kgf/mmの間が良いでしょう。油面は純正値よりは下げる方向です。もし純正の1.05Kgf/mmのバネを使ってセットをまとめるのであれば、かなり低くするべきです。

 これらの変更によりフロントの姿勢変化を大きく取れるようになります。V型よりは幾分らくとは言え直列4気筒と比較すればやや姿勢変化をおこしずらいので、フロント周りの姿勢変化は極めて重要です。

 まとめ

 O/H自体は一般的な作業内容ですが、丁寧な組み付けと意図を明確にした設定変更で操舵性を作り込みます。

 次回はリアショックの作業内容を短くまとめ、その次の回で試乗とセッティングの進め方、そして金額を紹介します。

 

 

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