トライアンフ・デイトナ675の前後ショックO/Hと仕様変更の試乗

 前回の記事で取り上げたデイトナ675の前後ショック取り付けが完成したので、試乗を行いました。

 同内容を動画でも紹介していますので、どうぞご覧ください。

 バネ定数に関する考え
 前後スプリングをこれまでと比較して大幅に柔らかい値を選びました。例えば前回0.95Kgf/mmを選び、良い印象をえられるとそこから外すのが怖い=時間と労力を費やすのを嫌がるのは人間の性なのか、それとも私が怠け者だからでしょうか?

 そういった経路依存性を打破すべく、データにあるスプリングレートを選択せず幅を広げる意味から柔らかい定数を選んだ次第です。

 試乗の印象と評価
 またがり動かしてみると、どうも、まとまりがありません。これはイニシャルも減衰も全く合わせていないからです。

 しかし先ずは走り出してみました。フロントの忙しなさと微妙に硬いリアの相性が悪い。ただ動きに根本の良さを感じ取れます。

 この表面上のセッティングは悪いが前後ショックの基本的な動きの良さ(これを素性が良いと評しています)が感じ取れたなら、間違いなくセットは順調に仕上がります。

 フロントのセッティングに対する考え
 純正の硬いメインスプリングとトップアウト。これをかなり落としたバネ定数に改めることで、動きを演出しつつプリロードの自由度を得られます。さらに硬いトップアウトを増やしたイニシャルで圧縮する効果もあるため、実ストロークが増えるのは副産物と言うべきか主たる目的にすべきか。

 どちらにせよ純正の1.05Kgf/mmは私には使いづらいため0.95Kgf/mmを基準にするとセットを出しやすくなります。

 その他に油面とオイルロックピースの小加工も行っています。

 リアショックのスプリング
 純正は複合レートです。11K強から12Kを越える値に移行します。

バネとアジャスタの変換カラーはPOMで制作。滑りが良く調整が楽になりました。

 シングルレートの11Kgf/mmも使ったことがあります。純正複合レートのバネよりも圧倒的に使い勝手が増すのは経験済み。そこで今回は更に定数を落として実験し、好結果を得られました。

 試乗時に感じた別の問題点
 車両とサスセットの相性は抜群と言っても良い程です。しかしタイアとの相性が悪い。というかこのミシュランのパイロットストリート・ラジアル2CTは675の基本特性を活かすのには向いていないと感じました。

 その主たる要因は軽く動く車両に対して、ドロンと重ったるい動きが有るからです。

 特にフロントが良く捉えればかなり安定性が強く、逆に見ると軽快性が低いとなります。

 前後車高の都合もあるとは言え、倒し込みから感じるタイアプロファイルは、トレッドのラウンド形状だけでなくフロントタイアの外径が大きい(円周長がながい)ようです。これがデイトナ675との相性の悪さ=スーパースポーツには向かないであろうと考える要因です。

 調整を進める
 上の問題点を考慮しつつ、一番気になるリアのイニシャルを抜く作業から始めました。次いで伸びと圧の減衰を変化させます。

 イニシャルが決まればその先は意外なほど迷いません。何度調整を行ってもバネの硬さと初期荷重の重要性を痛感するのは、こういった事情からです。

調整は反対方向から行うと簡単です。

 フロントの変更
 続いてフロントの調整です。

 バネを柔らかくしたことでストロークを大きくしやすい反面、反力(バネの反発力)が弱くなるのでイニシャルを増す場面が多くなります。

 または伸び減衰を抜いて、遠心力が強く働く場面でもフォークが伸びるようにします。

 圧の調整は路面のギャップをしなやかに越えられるようにしつつ、減速時の安定感を両立するところを目指します。

伸び減衰とイニシャル調整。

 こちらも後ろと同様に、バネを主軸に減衰を詰めてゆくと話が早くすみます。

 簡単ですが、セッティングの概要を記しました。上記のようにバネを詰めて減衰を変更しても、全体的に満足できない場合は、バネの硬さがあっていない事が殆どなので、その時にはバネ交換を推奨します。

 今回の作業内容はO/Hと部品代、車両運搬費用を含め概ね20万円でした。

 

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