ブレーキ性能を向上させる マスターシリンダー

ブレーキは単に「効けばよい」というものではありません。確かに、ブレーキが効くことは基本中の基本ですが、その「効き方」がとても重要です。特にバイクにおいては、ブレーキ操作がライダーとマシンの一体感を左右する要素のひとつです。思った通りに減速できるかどうか、またそのフィーリングがどれほどリニアであるかによって、ライディングそのものの楽しさや安全性が大きく変わってきます。

ブレーキの性能に関与する要素は多数あり、代表的な部品としては、ブレーキパッド、ローター、キャリパー、マスターシリンダー、ブレーキホース、そしてブレーキフルードが挙げられます。また、タイヤのグリップ力もブレーキ性能に直結するため重要ですし、広い意味ではフロントフォークもブレーキ性能に影響を与える要素のひとつといえるでしょう。しかし、今回はその中でも特に「マスターシリンダー」に焦点を当ててお話しします。次回以降にキャリパーやローターについても詳しく解説していきますので、ぜひ楽しみにしていてください。

マスターシリンダーの役割と重要性

バイクに乗っていて、ブレーキレバーを握ったときに感じる「フィーリング」は、マスターシリンダーの性能によって大きく左右されます。ブレーキレバーを操作すると、マスターシリンダーがブレーキフルードに圧力をかけ、その圧力がブレーキキャリパーに伝わり、最終的にブレーキパッドがローターを挟み込むことで減速します。この一連のプロセスで、ブレーキの「効き方」や「効き始めるポイント」、そして「減速の強さ」が決まるのです。

良いマスターシリンダーは、ブレーキ操作がリニアであること、つまりレバーを握った分だけ正確にブレーキが効くことが重要です。レバーを少し握れば弱く、しっかり握れば強くブレーキが効く。そういったリニアなフィーリングは、特にスポーツ走行やサーキット走行では非常に重要になります。街乗りであっても、突発的な状況で瞬時に対応できるブレーキ性能は、ライダーの安心感を高める要素です。

実際の体験から学んだブレンボの優位性

私自身、過去にグランプリ用のマスターシリンダーやキャリパーが装備された車両に触れる機会がありました。その車両に乗るのではなく、ただ押して歩くだけでしたが、その時速数キロでのブレーキの「効き方」には驚きを禁じ得ませんでした。まるでブレーキパッドがローターに吸い付くかのような感覚で、指先でローターを摘まむよりもさらにリニアな感覚がありました。それほどまでに高精度なブレーキシステムは、まさにライダーの指先にまでコントロールが委ねられたような感覚を与えてくれます。

その後、私は自分の街乗り用のBT1100やサーキット走行用のCRF450Rにも、ブレンボのマスターシリンダーやキャリパーを導入しました。これらの車両においても、ブレンボのブレーキシステムはその性能を遺憾なく発揮し、特にブレーキ操作に対するリニアな反応が感じられました。価格はGP用に比べれば遥かに抑えられているものの、その一部でもその高性能を実感できるのはさすがブレンボといったところです。

マスターシリンダー交換の提案

ブレーキパーツがしっかりと整備された状態であれば、私が最初に交換を検討すべきだと考える部品は「キャリパー」です。しかし、これについては次回以降で詳しく説明する予定です。現代のバイクでは、特にハイエンドモデルにおいては、最初からブレンボのキャリパーを採用している車両も多いため、今回の話ではマスターシリンダーに焦点を絞っていきます。

弊社では、多くの車両の前後ショックのオーバーホール(O/H)を行っており、その際にブレーキの改善も同時にご提案することが増えています。マスターシリンダーの交換は、ブレーキシステム全体のチューニングの中で比較的コストを抑えながらも、大きな変化を感じられるパーツの一つです。キャリパーやローター、パッドをセットで交換するとなるとかなりの高額になりますが、マスターシリンダーだけなら8万~10万円程度で交換可能です。そのため、コストパフォーマンスに優れた改良ポイントとしてもおすすめです。

特にブレーキスイッチ付きのブレンボ製マスターシリンダーは、最高級品ではないものの、十分な性能を持ち合わせており、その動きの滑らかさや確かなフィーリングは、私自身も体感しています。だからこそ、弊社としても自信を持って推奨できる製品です。

お客様へのご提案

前後ショックのオーバーホールやメンテナンスの際に、ブレーキのフィーリングに不満や改善したい点がある場合は、ぜひ一度ご相談ください。マスターシリンダーの交換は、思いのほか簡単に行える割に、ブレーキの操作感が劇的に変わります。特にブレンボ製のマスターシリンダーは、その優れた性能が多くのライダーに支持されており、一度交換すればその違いにすぐに気づいていただけるはずです。

また、ブレーキに関する質問や不明点があれば、気軽にお問合せください。お客様の使用環境やご要望に合わせた最適な提案をさせていただきます。

次回は、キャリパー交換の利点やその効果について詳しくお話ししていきますので、そちらもお楽しみにしていてください。

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