ランボルギーニ、ガヤルドのクアンタムをO/H
表題の通り、ガヤルド・スーパーレッジェーラのクアンタムがO/H依頼で入ってきました。
クアンタムは評判が高く多くの方が使っていますが、近年は代理店さんが機能していないと、当社へ依頼が急増しています。動画でもO/Hの概要を紹介していますので、御覧ください。
そういった事情もあり二輪、四輪を問わずに数多くO/Hを行っています。
クタンタムで一番気をつけなければならないのは、シリンダーのアルマイトです。ここは母材や表面処理ともに高品質とは言えず、傷みやすいの実情です。そのため当社ではシリンダーをステンレススティールで作り直したり、または再アルマイトを施します。
再アルマイトでは寸法は元通りにはなりませんが、それでも摩耗の進行を止めることが出来ます。
再アルマイトも繰り返すと母材が痩せ、寸法が大きく変わりますので、回数制限があります。2~3回アルマイトを施すと、表面の艶が明らかになくなり、酸で剥がしたのが分かります。
写真中央の黒いオイル。これはアルミシリンダーが摩耗により削れた結果です。こうなると折角O/Hしてオイルを新品に交換しても早期に傷みます。そういった事情もあり、シリンダーの新造や再アルマイトは必須となります。
その他に、オイルシールが非常にもろく割れて崩壊する材質だった時期もあり、距離やダンパーの状態ではなく、単純に時間経過によりオイルが漏れる場合もあります。
それらは機械加工によりオイルシールを日本製の耐久性と作動性に信頼のある品へ置き換えることで、間違いのない状態に仕上げます。
フリーピストンはピストンリングを持たない形状です。シール材であるOリングを交換します。
クアンタムの面白い点は、シムの寸法が一定で厚みを変えることで車種別に作り込んでいる点です。かなり特殊だと思います。
逆にこのシムの外径を変えると大きな変化を作れるため、乗り手の希望により沿うセッティングを作り出せます。
シリンダーヘッドを分解するとフリーピストンとセカンダリピストンが現れます。セカンダリピストンは写真右の部品です。
この部品の用途は、主ピストンで作り出した減衰力とは別で減衰を発生して、主ピストンの負担を軽減させたり、圧力の分布を均等にすることを考えているようです。そうすることでガスの圧力を下げられるとクアンタムは主張していますが、近年はこの作りを廃しています。
ガヤルドのクアンタムには車高調整用の特殊な仕組みがあります。二輪車ではよくある仕組みで、油圧によりスプリングを圧縮しイニシャル(プリロード)調整を可能にしています。
この機構をそのまま使い段差や駐車場でバンパーが当たらないように車両を持ち上げる様になっています。油圧なのでやはりオイル漏れを起こします。足回りの部品ですから砂利などが噛み込んでシール材が傷みやすい。しかも濡れた路面では水と一緒に砂も小さな隙間に入り込んでしまい、傷みが加速します。
二輪車とは違った部分でより注意が必要ですが、無事に終えてお客様のもとへ出荷いたしました。
今回は1台分四本で約40万円の作業でした。