ランボルギーニ、フェラーリのショック 磁性流体を引き続き調査中
フェラーリ/ランボルギーニ用「磁性流体(MR)」検証メモ|BWI純正供給なし→代替フルードの実機評価へ
要点(30秒)
- フェラーリ/ランボルギーニ向けの**磁性流体(MR)**について、新たなサンプルを確保。実機検証を開始します。
- BWI(サプライヤ)純正オイルは供給が無いため、品質基準を満たす代替流体の選定・評価プロトコルを運用します。
- 流体は通常のサスオイル同様に粘度・粒子濃度・温度安定性など仕様差が大きく、適合判断には実機試験が必須です。
1|進捗:サンプル入手 → ベンチ&実機で適合可否を検証
- 新規ロットの磁性流体の提供を受け、先ずは流体そのものの物性評価を行います。
- 評価結果は当社基準書に反映。適合可否・使用条件を段階承認(推奨/条件付き/不可)で運用します。
- 検証経過は、過去の調査・記事(BWI/MR基礎解説)と整合を取りつつ随時アップデートします。
2|磁性流体(MR)とは(超要約)
- ベースオイル中に微細な磁性粒子(例:カーボニル鉄系)を分散。磁場をかけると瞬時に降伏応力が立ち上がり、流動抵抗=減衰力が増す電磁制御型フルード。
- オフ状態粘度(無励磁時の素の粘度)、オン状態特性(磁束密度×降伏応力)、温度依存・沈降安定性・せん断耐久、シール適合(FKM/NBR/PTFE等)が実用上の要点。
- 従来のオリフィス/バルブだけでは得にくい広い制御レンジと応答性が特長。一方で材料相性・管理手順に高度な注意が必要です。
3|BWIとは(役割の位置づけ)
- BWI Groupは、マグネライド系を含む電磁制御ダンパの主要サプライヤの一つで、スーパースポーツやプレミアム車のOE(純正)供給実績をもつメーカーです。
- ただし純正補修用MRフルードの単体供給は原則なし。このため正規供給に代わる信頼できる代替流体の探索と、厳密な適合評価がO/H業務の肝になります。
- (※詳細の背景・過去事例は当社の過去記事をご参照ください。)
4|評価プロトコル(抜粋)/合否判定の考え方
① 物性・材料適合
- オフ状態粘度の温度プロファイル(−20〜+120℃)、オン時降伏応力‐磁束密度カーブ、ヒステリシス特性
- 沈降安定性(長期静置・振とう回復)、泡立ち/脱気性、金属・シール材の相溶性(FKM/NBR/PTFE)
- 防錆・摩耗・酸化安定性(簡易ASTM準拠テスト)
② ダンパーベンチ
- 励磁電流マップに対する**力‐速度(F–V)**の再現性、レンジ幅、時定数(応答遅れ)
- 熱サイクルでのドリフト/フェード、オフ側減衰の下限(乗り味)とオン側ピーク(締め代)の両立
③ 実機・電装・NVH
- ECU側の電流制御・フェイルセーフの健全性(エラーの有無、ログ確認)
- 路面入力に対するNVH(突き上げ/ザラつき)と姿勢制御(ピッチ・ロール)の実走評価
- 漏れ・にじみ、配線・コネクタ応力、コイル温度の点検
合否の目安
- 純正域のオフ粘度とオン側の制御レンジが確保できること
- 温度サイクル/長期静置での特性・外観の安定
- シール・金属との適合に問題がないこと
→ これらを満たす場合のみ採用(推奨)、一部条件を付ける場合は条件付き可、不一致は不可とします。
交換・洗浄の運用:分解時は完全フラッシング/脱気、異物管理(清浄度)を徹底。混用は不可とし、同一ロットで4本揃える運用を基本にします。
5|なぜ「代替MRフルードの探索」が要るのか
- BWI純正オイルは市場供給がないため、長期的なO/H体制には再現性の高い代替確保が不可欠。
- MRは通常のサスオイル以上に仕様差=体感差が表れます。“入れ替えればOK”にはならないため、仕様選定→実機検証→基準化の流れを回し続けます。
- 今回入手した新サンプルは、これまでの候補と横比較し、メリット/注意点を整理したうえで採否を判断します。
6|よくある質問(抜粋)
Q. 耐久や漏れは大丈夫?
A. シール適合・温度サイクルを通した上で採否判断します。相性の悪い流体は採用しません。
Q. 車検・法規への影響は?
A. ダンパー内部流体の置換自体は直接的な保安基準項目ではありません。ただし運動性能の変化は安全に直結するため、実走確認を必須としています。
Q. メーカー保証は?
A. メーカーはショックO/Hを承認しておらず、好感を前提なため保証はありません。弊社独自のオイル漏れ保証は付帯します。
7|今後の方針
- 物性・ベンチ・実機の三段評価を経て、採用可否を決定。
- 評価を通して得られた**サービス基準(交換周期・推奨条件)**をリファインし、安定供給ルートを拡充します。
- 結果は整備記事/技術メモとして公開(機密に抵触しない範囲)。
8|用語ミニ解説
- BWI:電磁制御ダンパ(マグネライド系含む)の主要OEサプライヤ。
- 磁性流体(MR):磁場で粘性が可変となる機能流体。無励磁時の“素”の粘度と、励磁時の降伏応力の両立がキモ。
詳細は当社**過去記事(BWI/MR)**をご参照ください。
業販・お問い合わせ(CTA)
- **フェラーリ/ランボルギーニのショック関連は「業販専用」**です。
- 価格以外の技術的なご質問・適合可否・作業条件・納期目安はお答えできます。
- TEL:090-3316-5306 LINE:@llv7594i フォーム:https://sgfacendo.com/contact
他ブランドの磁性流体ダンパ/通常ダンパのO/H・再セッティングもご相談ください。まずは現況(年式/走行/症状)をお知らせいただければ、最適な診断ルートをご案内します。