旧型【正立】オーリンズのフロントフォーク
最近はだいぶ新型への移行が進んだオーリンズの正立フロントフォークですが、まだまだ旧型のO/H依頼も多くいただきます。
この記事では新旧の比較と、利点等を挙げます。結論としては新型への移行を推奨しますが、その理由を以下に示します。
旧型の利点
1 伸び、圧の調整が左右のフロントフォークに備わっている
2 圧の減衰調整ユニットがブラケットから飛び出しており、昔のレーサー風で格好良い
3 ピストンが合計4つあるため、掛かる力を分散できるため、性能が安定する
1ですがトップキャップの上にはイニシャル調整の伸び減衰調整があります。アクスルブラケットには圧減衰があり、それぞれ独立して調整がかのうなため昔ながらの作りに慣れた方には扱いやすいと思います。
2は外観上の問題ですが、90年代のレーサーに憧れる(私のような40代の以上の)方には結構強力なアピールになりそうです。
3は減衰力を発生するピストンの数がおおいため、一つ一つの分担が減り発生する減衰力を抑えられる事から、無理をしないですみます。
それではここからは旧型の課題を挙げつつ、新型との比較を行います。
旧型の課題
1 重量が重い
2 伸び切りの制御が雑
3 作動性が(新型と比較して)低い
4 部品点数が多く工賃、部品代が高額になりがち
それでは解説しましょう。
1 重量が重いのはブラケットの形状からも想像し易いでしょう。
2 これはなかなか理解し辛いのですが、フロントフォークが伸び切った際に衝撃をどの様に緩和するか?という事です。一般にはバネで対応しますが旧型の正立はOリングの圧縮で対応しています。Oリングのリングではたわみ量が小さく、衝撃をやさしく逃がせません。
3 コーティングを施されたインナーチューブですが、よく見ると新型と比較しその表面に違いを発見できます。研磨具合を含む表面処理は作動性に大きく影響を与えますし、4でも説明する部品点数の多さが摩擦抵抗を生み出します。
摩擦抵抗は少なければ良いわけでもなく、ダンパー性能に求められる適度な抵抗というものが存在するのです。
4 アウターチューブに圧入されるブッシュが通常の一つが、旧型は二つとなっています。これにり部品代がかさむのと、3で説明した摩擦抵抗になっています。
新型の特徴
これは旧型との対比で際立ちます。
1 伸び、圧の調整が左右フォークに振り分けられている
2 ブラケットに突起がなく軽量
3 ピストンが2つしか無いが、減衰力は問題なく発生させている
4 作動性が良く、良い摩擦を発生している
5 部品点数が少なく、軽量で部品代が(少しは)安価
1は3と共通していますが 、ピストンの数が減って4→2となっています。それに伴い右フォークは伸び、左フォークは圧の減衰を発生するNIX構造を採用しています。
2 NIX構造を採用した結果、これまでのあつ減衰を発生していたピストンの位置が代わり、ブラケット部分の調整ダイアルは廃止されました。これにより5との相乗効果で余分な重量を軽減しています。
3 ピストンの数が減ることで、減衰力の発生に対し危惧を持っていました。確かに最高性能ではありませんが、街乗りからサーキットのライトユーザーならば全く問題がないどころか、旧型と比較して高水準な減衰力を発生します。これはバネも含めた全体の最適化により良い動きを作り出せているのでしょう。時代が下るに連れて得た知見を最大限発揮して、コストカットに成功しながら性能を向上するという、難し仕事で結果を残せたと評価できます。
4 一番重要なのはインナーチューブとオイルシールの摩擦を最適化したことによる、性能の向上でしょう。これについては公開できない情報もありますが、ほぼ確実だと考えています。
5 ピストンも減りガイドブッシュも減り、部品点数が少ないおかげで部品代も安くできます。これも良い点です。
補足として伸び切り時の衝撃吸収はOリングからバネへと置換されました。
更にはトップキャップの形状が変更されており、イニシャルアジャスタを調整してもフォーク内部の体積変化が起こらないため、セッティングをより緻密に行なえます。
それだけでなくトップキャップに調整が集中しており、セッティングの時間を短縮可能です。
ということで、簡単ではありますが新旧のオーリンズ正立フォークの代表的な違いを述べました。
弊社ではO/Hだけでなく販売も行っておりますので、そろそろオーリンズのフロントフォークを・・・と思案中の方は問い合わせ頂ければ幸いです。