磁性流体 BWIのショック
磁性流体とマグネライドについて
BWIのショックに関する最新技術
ここ最近、磁性流体を用いたショックアブソーバー(以下、ショック)のオーバーホール(O/H)依頼が増加しています。BWI社の「マグネライド」は、この分野で注目される製品です。その大きな特徴は、名前の通り「磁性流体」を利用している点にあります。技術者の立場や考え方により賛否が分かれるところではありますが、実際に使われている製品について、O/H業者の視点から話を進めます。
磁性流体とは何か?
磁性流体は、オイルと鉄粉が混合された液体です。磁場に反応して粘度が変化する特性を持ち、ショックにおいてはこれがダンピング力の調整に利用されます。通常のオイルと異なり、磁場の強さによって即座に粘度を変化させることができるため、路面状況や走行条件に応じた瞬時の対応が可能です。
作業手順の改善と効率化
磁性流体を用いたショックのO/Hは、通常のショックとは異なる手順が必要です。一度経験することで、作業手順を大幅に改善しました。必要な治具を自作し、新たな器具を購入することで、効率は劇的に向上しました。特に、磁性流体の取り扱いに関する技術が向上したことで、作業時間の短縮と品質の安定化を実現しています。
磁性流体の特性調査
自社でできる簡単な調査を進め、磁性流体の特性をより深く理解することに努めました。また、日本のダンパーメーカーの研究職の方から助言を得ることで、知識の精度を高めました。この結果、O/Hの課題や問題点をしっかりと把握し、より精密な作業が可能となりました。
さらにBWI社のショックを購入し、新品の磁性流体の調査も行っています。
オイルシールの重要性
磁性流体はオイルに大量の鉄粉が混ざっている状態であり、普通に考えると部品の摩耗を早め、オイル漏れを誘発しやすいです。そのため、適切なオイルシールを用いる必要があります。当社の20年に及ぶ業歴のおかげで、耐久性の高い製品の見極めができるようになり、これが大きな強みとなっています。
電子制御の基本
マグネライドの電子制御は、他のショックと基本的に大差はありません。磁性流体の粘度を電子制御で調整することにより、最適なダンピング力を提供します。この技術により、従来のショックに比べて格段に優れた乗り心地と安定性が実現されています。
今後の改善
今後は、使用する部品の材質やO/Hの効率をさらに高めるため、少しずつ改善を続けていきます。磁性流体自体の特性や扱い方をさらに深く理解し、最適な素材や技術を取り入れることで、BWIのショックの性能を一層引き出すことを目指します。
磁性流体の詳細
磁性流体の構成
磁性流体は、ベースオイルと鉄粉から構成されています。鉄粉は非常に細かく、通常のフィルターでは取り除くことができません。この特性により、オイル自体が磁場に反応して粘度を変化させることが可能になります。
オイル漏れが発生すると、どうなる?
オイル漏れが発生すると物理現象を強く実感します。オイルと鉄粉では粒子の大きさは後者の方が大きく、鉄粉はオイルシールとロッドの隙間を抜けることができません。逆にオイルはその隙間を抜けていきます。
そのため上の写真からわかりますが、オイルだけ先に抜けて鉄粉の塊が残ります。こうなるとオイルが通るべき流路には鉄粉がただ詰まるだけとなり、ダンパーは機能しません。
単にオイル漏れが発生するのではなく、ダンパーが全く機能しなくなるという、なかなか怖い状況が発生します。
磁場による粘度変化
磁性流体の最大の特性は、外部からの磁場によって粘度を即座に変化させることができる点です。これにより、ショックは路面の凹凸や走行条件に応じたリアルタイムの調整が可能となります。磁場を強くすると鉄粉が凝集(集まり固まる)し、流体の粘度が上がります。逆に磁場を弱くすると鉄粉が分散し、流体の粘度が下がります。
メンテナンスの重要性
磁性流体を使用するショックは、定期的なメンテナンスが非常に重要です。鉄粉がオイル内に均一に分散している状態を維持するためには、適切な管理と定期的なオイル交換が必要です。また、鉄粉の摩耗やオイルの劣化を防ぐためには、高品質なオイルシールが不可欠です。また部品の配置にも注しなければなりません。
まとめ
磁性流体を用いたBWIのマグネライドショックは、現代の車両において画期的な技術を提供しています。しかしその特性上、オイル漏れが発生しやすく、旧来のダンパー以上にオーバーホールの重要性が高いと言えます。
現在、効率的かつ精度の高い作業を提供するための体制を整えています。今後も引き続き、技術の向上と顧客満足度の向上を目指して努力を続けていきます。磁性流体に関するさらなる情報やメンテナンスの詳細については、弊社までお問い合わせください。