Ferrari 328GTの前後ショックをO/H
いつも依頼を頂く大手のディーラー様から新たな依頼があり、328GTの前後ショックを作業しました。当社の動画でもO/Hを紹介しているので、興味の在る方はご覧ください。
ビルシュタインのダンパーは二輪車から手をつけ始め、いつの頃からか4輪、特にフェラーリの品を多く手掛けるようになりました。
そうは言っても328GTは初めての作業となるので、慎重に事を進めます。
先ず、分解方法を模索しなければなりません。単純に分解してゆくと後で取り返しの付かない自体に発展する事もあります。
当社はかなりの部品を自作、製造できるので破損してもなんとかなりますが、それでもオリジナルを極力残したいので注意して作業にあたります。
分解するとオイルとガスが混ざり、写真で分かるような泡が多くみられました。こうなると性能の劣化は著しく、体感できる程です。
ロッドには何らかの汚れ(かなり強力に張り付いており、糊のようでした)があり、これがオイルシールを傷め、オイル漏れを誘発したのだと考えます。
ロッドの汚れを取ると表面の摩耗の後があらわになりました。ここまで傷んでいると研磨で慣らしても長期間は持ちませんので、ロッドは再メッキをとなりました。
ビルシュタインはロッドの表面仕上、部品の寸法精度、上の写真のシム(板バネ、イタリア語ではLamelleと呼びます)など多くの部品が流石と言える作りです。
ダンパーメーカーに務める友人が、トヨタ車に採用されたビルシュタインを分解し分析、研究した内容を、問題のない範囲で教えてもらいました。それを基にして共同で色々と研究して自社の作業や部品製作にも活かしています。
フリーピストンはOリングのみでピストンリングを持たない単純な作りです。これは倒れが発生し、抵抗になります。予算に余裕があれば作り直し更に作動性を向上させたいというのが本音でした。
ロッドガイドはガイドブッシュを圧入する一般的な作りですが、圧入するブッシュの種類で動きが変わります。当社ではいくつかの製品を試したうえで、最善と考えるメーカーの品を採用しました。
洗浄を終え部品を組み付けます。ピストンをロッド先端に留める際、ナットを締め付けますがこの締め付けトルクでも動きが変わりますので、トルク管理は重要です。当社では機械的な安全性と作動性を考慮した値に決定しています。
ここを勘だけで締め付けていては、緩んだ際にかなり大きな問題が発生します。最悪の場合は分解しオイル漏れを起こし、そのオイルがタイアに付着し事故が発生しますので、極めて慎重な作業が求められます。
ピストンリングは金属にテフロンコートを施した品へと交換しています。動きが良くなるのが採用の要因です。やや高額になりますが、交換する価値があります。
この様にして組み上げた328GTのショックですが、納品したお客様からはとても喜んでいただけました。
当社は四輪車のダンパーは直接依頼は受けておらず、ディーラーや販売店、修理工場を通してのみ受付ています。
疑問や質問がある場合は、メールで問い合わせ頂ければ回答致しますので、興味の在る方は連絡ください。