MT-10のリアO/Hと前後セッティング
MT-10 前後ショックオーバーホールとスプリング交換後のインプレッション
MT-10はR1のネイキッド版として多くのライダーに支持されている高性能なバイクです。しかし、その重量感からくる独特の乗り心地には、さらなる調整が求められることがあります。今回は依頼いただいたMT-10の前後ショックのオーバーホール(O/H)とスプリング交換を実施し、その後の試乗で得られた印象を詳しくご報告いたします。
リアショックの変更点
今回のカスタマイズでは、リアスプリングの長さを短くし、プリロード(イニシャル量)の調整幅を広げました。この調整により、より柔軟なセッティングが可能となり、ライダーの体重や走行スタイルに合わせた微調整が実現しました。
特に、リアのレートは標準設定がやや過剰であるため、体格によっては柔らかくすることでバイク全体のバランスが向上します。この辺りは個人差が大きいため持ち主の方の体格を考慮しながら進めます。
フロントフォークの変更点
フロントフォークでは、スプリングを1Kから、右のみ0.9Kに変更し、全体として0.95Kに調整しました。さらに、油面を下げることで、よりスムーズな動きを実現しました。この変更により、純正の状態では途中から動きが渋くなる傾向を改善し、全体的に自然なフィーリングを取り戻しました。低予算での調整が必要な場合でも、油面を極力下げることである程度の改善が期待できることが確認されました。
試乗印象
フロントサスペンション
試乗した結果、フロントサスペンションは油面を下げた効果が顕著に現れ、動きが非常に滑らかになりました。純正の設定では、フォークが途中から動かなくなる問題がありましたが、今回の調整でその問題を回避することができました。これにより、通常のライディングにおいても違和感なく操作できるフロントフォークとなり、バネ定数も0.9Kから0.95Kの範囲内で私の考える適正に収まると思います。
特に、低予算でのカスタマイズが求められる場合には、油面を下げるだけでもかなりの改善が期待できることが分かりました。この調整により、MT-10のフロントサスペンションは、重量感を感じさせることなく、スムーズで安定した挙動を実現しました。
リアサスペンション
リアサスペンションに関しては、スプリングの長さを短くしたことで、プリロードを最弱に設定し十分な動きを確保できました。またリアのスプリングレートを0.5K~1Kほど下げることが良い選択肢となる可能性があると考えられます。特に、リアのレートがやや過剰であるため、スプリングを短くし、柔らかくすることで、バイクの挙動がより安定し、バランスが向上することが確認できました。
ただし、体重が80kg以上のライダーであれば、現在の設定でも何とか使用可能かもしれませんが、軽量なライダーには柔らかめのセッティングが適していると感じました。
総評
今回のカスタマイズを通じて、MT-10は全体として非常にバランスの取れた仕上がりとなりました。特に、フロントのイニシャルを1回転掛けただけで、前後の均衡が取れたバイクとなり、操作性が大幅に向上しました。MT-10自体が重く、どっしりとした車体であるため、あまりサスペンションを柔らかくしすぎない方が良いという考え方はありますが、純正の設定がやや過剰であることも確かです。
STD状態ではフロントの動き出しだけ柔らかく、ストローク中盤以降はかたまる。他方、リアはバネ定数もある程度硬いわりにイニシャルが強烈にかかっており、動きが抑制され不快感が多いはずです。上で報告したような変更により、極めて扱いやすく自然なハンドリングを得られるようになりました。
エンジンの強力なトルクと重厚な車体が生み出すMT-10の特性を活かしつつ、ライディングの楽しさを引き出すためには、適切なサスペンションセッティングが重要です。今回の調整により、MT-10はさらに魅力的なバイクとなり、さまざまなライディングシーンで楽しめる一台に仕上がりました。
今後もカスタマイズやメンテナンスに関するご相談がありましたら、ぜひお気軽にご連絡ください。経験豊富なスタッフが、お客様のご要望に応じた最適なプランをご提案いたします。