やっぱりバネですね トライアンフ・デイトナ675のセッティング事例:スプリング交換による抜群の仕上がりやっぱりバネですね

今日は3台の試乗を行いましたが、その中でも特に特徴的だった1台、トライアンフ・デイトナ675について紹介します。デイトナ675は、これまでに何度もオーバーホール(O/H)や仕様変更の依頼を受け、私自身もこの車両に対する理解を深めてきました。今回の試乗で改めて確認したのは、デイトナ675の仕上がりがこれまでで最高と言えるほど抜群であったことです。その最大の要因はスプリングにあります。

1. スプリングの重要性と役割

サスペンションのセッティングにおいて最も重要な要素はスプリングです。減衰力やその他のパラメーターは、スプリングの動きを最大限に引き出すための補助的な役割を担っています。今回の試乗を通じて再確認したのは、サスペンションのストローク感を感じさせる要素は「減衰」ではなく「スプリング」であるということです。

例えば、ブレーキレバーを握った際にフロントフォークが沈み込む量感や、路面の凹凸に対するサスペンションの反応は、適切なスプリングレートと初期のイニシャル量が設定されているかによって決まります。これは車両全体のフィーリングを左右する重要な要素です。

今回のデイトナ675では、減衰力の調整をほとんど行わずに走行したにもかかわらず、バイクが「量感」を持って走行していると感じられました。これは、スプリングレートとイニシャル量が適正であった証拠です。逆に、スプリングが適正でない場合、いくら減衰力を調整しても狙った通りの動きは得られません。この点が、セッティングの基礎として非常に重要だと再認識しました。

2. サスペンションセッティングのステップ

サスペンションのセッティングは、単に部品を交換するだけでなく、段階的に車両の挙動を見極め、データを積み重ねて行うものです。今回のデイトナ675のセッティングにおいても、まずは現状を正確に把握することが最初のステップでした。以下に、サスペンションセッティングの手順をまとめます。

  • 走行による現状把握と課題の確認
    まずは純正状態でのバイクの挙動を見極め、現状の課題を明確にします。どこに問題があり、どこを改善する必要があるのかをライダーが感じ取ることが重要です。今回も試乗を通じて、現状のスプリングや減衰力における課題を確認しました。
  • タイアやサスペンションの状況確認、データ採取
    次に、タイアの状態やサスペンションの動き、ストローク量などのデータを正確に記録します。これにより、今後のセッティング変更に必要な情報を得ることができます。データの収集は、単に数値を測るだけではなく、実際のライディング感覚と合わせて判断することが重要です。
  • 方向性の見出し
    現状の課題を把握したうえで、どの方向に向かってセッティングを進めるべきかを決定します。今回はスプリングの交換が最適であるとの結論に達しましたが、これもデータや試乗のフィードバックを基にしたものです。
  • 実際の仕様変更(主にスプリング交換)
    セッティングの方向性が定まったら、実際にスプリングを交換します。スプリングのレートやイニシャル量を調整することで、サスペンションの動きが大きく変わります。これにより、バイク全体のフィーリングが向上し、ライディングの質が大きく変化します。
  • 取り付けて実走による調整
    最後に、実際に新しいスプリングを取り付けて試走し、微調整を行います。走行中に感じたフィーリングを基に、減衰力やイニシャルの調整を行い、最適なセッティングを目指します。このプロセスを繰り返すことで、理想的なフィーリングに近づけます。

3. 高精度のセッティングを追求

サスペンションセッティングは、精度を高めるために何度も調整を繰り返すことが重要です。一度の作業で完璧な仕上がりを目指すのではなく、走行フィードバックを基に少しずつ調整し、精度を向上させることで、狙うべき「高み」に到達することができます。

今回のデイトナ675の試乗でも、スプリング交換を行ったことで劇的な変化を感じることができました。サスペンションがしっかりと動き、バイク全体が軽やかに反応する感覚を得られたのは、正確なセッティングとスプリング選定によるものです。

4. セッティングの根本は「スプリング」

今回の試乗で改めて実感したのは、セッティングの根本は「スプリング」であるということです。減衰力の調整は、スプリングの動きをサポートするための要素であり、スプリング自体が適正でなければ、どれだけ減衰を調整しても理想的な動きは得られません。

フォークスプリングの調整を行うイニシャルアジャスターは、一般的にトップキャップにある

そのため、セッティングを行う際にはまずスプリングが適正であるかを確認し、次に減衰力の調整を行うというステップを踏むことが大切です。今回のデイトナ675は、スプリングと減衰力が理想的に調整されており、最適なフィーリングを得ることができました。

まとめ

トライアンフ・デイトナ675のサスペンションセッティングにおいて、今回の試乗ではスプリングが大きな役割を果たしました。サスペンションのストローク感や量感を感じさせるのは、適切なスプリングの選定によるものであり、減衰力の調整はその補助的な役割にすぎません。

セッティングを行う際には、まず現状を正確に把握し、データを採取して方向性を定めることが重要です。そして、実際の仕様変更を行った後に、走行フィードバックを基に微調整を行うというプロセスを繰り返すことで、精度の高いセッティングを実現します。

今回のデイトナ675では、そのプロセスを通じて非常に高い仕上がりを得ることができました。バイクのパフォーマンスを最大限に引き出すためには、スプリング選定が何よりも重要であることを改めて実感しました。

同車両のO/H、仕様変更、セッティングに関しては是非当社に相談してください。

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