ローダウンでなぜハンドリングが改善し、乗り心地が良くなるのか?

表題の通りですが、ローダウンは通常においてストロークが減るため、衝撃吸収性が下がり、乗り心地が悪化するというのが通説です。

しかし必ずしも全てがその通りにならないため、ではどのようにすれば「ローダウンとハンドリングと乗り心地の向上という相反する要素」が可能になるのか?その技術論を開陳します。

1章 サスペンションの基本設定
a:フロントフォークのストロークについて
b:乗車1Gのイメージ
c:旧来のローダウンにおける概念図
d:LGNにおける概念図

2章 LGNのエネルギー吸収量について
e:LGNはストローク量が純正のままである
f:ストロークの使い方
g:負の方向からストロークが始まる状況
h:正の方向からストロークが始まる状況

3章 LGNはローダウンと同時に、サスペンションのカスタムである
i:実例の紹介
j:LGNは、その実「ハンドリング改善のカスタムを通してローダウンする」主従逆転現象が起こっている
k:最後に

図を用いて説明します。
a 一般的な純正のフロントフォークのイメージ図をご覧ください。

オンロードの車両では一般に120mmのストロークを持っています。厳密にはホイールトラベルとは違っていますが、ここでは話が複雑になるため、サスペンションのストローク量で話を進めます。

b 次に乗車1Gと呼ばれる、車重や人間が乗った時に沈み込む沈下量の図をご覧ください。この沈下量をサグと呼んだりもします。
※この記事では「伸びるストローク(負)」と「沈むストローク(正)」として表現します。

c その次に一般的なローダウンの図をご覧ください。仮に30mm下げる目的でストロークを30mm切り詰めると、サスペンションストロークは1の120mmー30mm=90mmとなり、そこからサグを求めれば、自ずと正のストロークは減ります。

d これはLGNによるローダウンです。ストロークの総量は120mmのまま、乗車1Gの沈下量を任意の量に増やし、ローダウンを実現しており、120mmーxmm=xとなります。
実数を用いて説明すると、希望の下げ幅を60mmとしたならば、120ー60=60mmの正のストロークをもち、また反対に負のストロークも60mmとなり、これが旧来のローダウンとは一線を画す大きな相違点です。

ここまでがフロントフォークの基本設定とローダウンの説明でした。

2章
e LGNはローダウンしてもストローク量が純正のままである
LGNではなぜ乗り心地が良くなるのか?に具体的に踏み込んで解説します。
ローダウンでは正のストロークが減るのはLGNでも旧来の手法でも同じです。正のストロークが減れば、吸収すべきエネルギーをストロークで解消できないため、バネを硬くして短い量で発散する必要があります。これは新旧ともに同じです。

しかしcとdの図をみればわかる通り、旧来の手法ではストロークの総量が90mmになっています。それに反してLGNではストローク総量は120mmのままです。これにより負のストロークを長く取ることが可能になります。

f ストロークの使い方
サスペンションは路面の凹凸(ギャップ)を吸収する際に、一度正のストロークを使い(沈んで)、負の領域に入って(伸びて)から、改めて1G沈下量(落着きべきポイント)へ収束します。つまり負のストロークが長ければ、それだけ吸収エネルギーが増えます。

g サスペンションはストローク開始が負の方向の場合もある
また図をご覧ください。サスペンションとは正方向に動きだけでなく、路面状況によっては負の方向からストロークが始まることも多々あります。これはデータロガーを使えば明らかになります。そうでなくともリアショックなどは減速時に持ち上がることで、その意味が理解できるでしょう。

h 正の方向からサスペンションストロークが始まる状況
これは想像に難くありませんが、縮方向からサスペンションが動きます。

3章 LGNはただローダウンするだけではない

ここではまとめとしてLGNになぜ優位性があるのかを解説します。

i これまでに述べてきたように、ローダウンしてもストローク総量には変化がないLGNは多くのエネルギーを吸収できる点が”新生代のローダウン”と銘打った重要な要素です。

正のストロークは旧来と同様ですが、一度伸び切ったサスペンションは正・負の合算である120mmから、dで示した負のストローク(ここでは縮方向に動くため正ともいえる)60mmを使って乗車1Gへと収束します。つまり上でも示した通り、十分な量でギャップを乗り越える事が可能です。

j 更にLGNでは「下げて終わり」ではなく、下げる前に純正の状態を確認し「サスペンションの改善点」を把握してから施工を開始します。そこでは前後車高の確認、バネ定数の見直しを行うことで、純正よりも使い方を限定することで(つまり施主のバイクとの付き合い方を把握し)個別最適化を可能としており、ハンドリングと乗り心地の改善か可能になるわけです。

k 最後に、ローダウンしない方がハンドリングと乗り心地はより快適なのか?と言えば、そうでもありません。純正でも前後車高を変更し、ハンドリングを改善するために、ローダウンした例は枚挙に暇がありません。もしご自身の車両をローダウン希望される場合は、一度相談していただき、現車確認することで、方向性を見出すことが可能です。お困りの際にはぜひ連絡してください。

 

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