戦略思考でサスペンションセッティングを実行する
10月の出張では堺カートランドへ行き、二人のライダーとセッティングについて意見交換をして、知識や現場の進め方を確認しました。
セッティングには目的が第一にあるべきです。そのためには目の前の問題を解決するだけでは、望む結果を得られません。そこで目的地を決めて、そこに向かってアプローチを行うという戦略思考が必要になります。
1 レースやセッティングにおける最終目標を決める
2 現状の問題点を全て(可能な限り)把握する
3 優先順位を決める
4 問題解決の実行、実際のセッティングを開始
現実的には4のみを繰り返すのみで、問題解決に至らない事が多々あります。これは多くのライダーやチームが抱えている課題のように感じます。
そのため1~4を常に基本とし、今どこに位置しているのかを認識しなければなりません。それによりライダーが望む状況を作り出すことが可能になるでしょう。
では実際に現場で行なわれるべき、あるべき姿とでも表現できる状況を想定しましょう。
1 最終目標を決める
これは意外と難しい設定です。予選最下位のライダーが「優勝を狙う」といっても現実的ではありません。例えば過去のレースを振り返り、あるコースにおいて予選何位までが優勝できるのか?表彰台に上がるためには予選順位は何位までが必要になるか?感覚値と共に過去のデータを基に目標設定を行います。
また目標がタイムだとすれば、現状との開き具合からどこまで到達できるのか?など目標と現実の差を客観視する必要が求められます。
2 現状の問題点を把握する
ライダー側のコメントは多岐にわたることもあります、「1コーナーで・・・」「2ヘアの出口で・・・」「最終の飛び込みで・・・」などなど。それらを言葉で聞くだけでは曖昧になりますので、帳面にしかと記し、記録する必要があり、その蓄積が今後に大きな影響を与えます。
3 優先順位を決める
1が戦略だとするならば、戦術面で大切なのがこの3です。2で拾い上げた課題や問題に対し、重要な事柄から優先順位を振っていきます。意外とこれができていない。レースならタイムや競り合いにおいて優位になるセッティングを最優先とします。そのため私はライダーから相談があった場合「それはタイムに大きく響くのか・直結しているか?」と問います。上がってくる問題点を腑分けしなければ、目標到達は大きく時間を無駄にします。もしくは順序を間違えれば到達できない可能性もあり得ます。
そのためこの3である優先順位は極めて大切です。
4 問題解決の実行
セッティングまでくれば、後はライダー、チーム、メカニックの技量に任せるほかありません。三者(またはライダーとメカニックの二者)の能力がなければセッティングは思うままになりません。場合によっては金銭が解決の糸口となることもあります。スプリング交換、タイヤ、サスペンションの交換などセッティング(合わせ込みや調整)ではなく、システムの刷新・交換が必要な事もありからです。
まとめ
先ず1を決めましょう。これがなければ「セッティングをしている」という自己満足、セッティング迷路に入り込み「これがセッティングだよね~」といったぬるま湯に浸った状況・自己満足の温床から抜け出せません。
厳しめの表現となりましたが1~4を実行すれば、必ず少しづつでも着実に上向きます。どうぞ参考にして下さい。