30万円の価値はあるのか?YZF-R1の徹底メンテで実現した進化
YZF-R1のフロントフォークO/H、各部メンテナンス、リアショックはTTxへ交換
目次
1️⃣ 依頼概要
- YZF-R1のフロントフォークO/H、ステム・ホイールベアリング交換、タイヤ交換
- リアショックをOHLINS TTxへ交換
2️⃣ 入荷時の試乗の印象
- フロントのボトム付近の動きが鈍く、全体的に重い印象
- 経年劣化による走行フィーリングの変化
3️⃣ 実際の作業
- フロントフォークのスプリングレート測定と油面調整
- ステムベアリング・ホイールベアリングの交換
- リアショックの組み込みとリンク周りの洗浄・グリスアップ
4️⃣ 完成後の印象とセッティング
- 走行前の動作確認と調整
- 走行テストでのリアショックの微調整と前後のバランス調整
5️⃣ お客様の評価
- 乗り心地と安心感の大幅向上
- 「まるで別のバイクに乗っているようだ」との感想
6️⃣ お問い合わせ
- メール・電話でのご相談窓口
- 料金・作業内容の詳細についての対応
依頼概要と作業概要
2016年以降のYZF-R1には何度も試乗経験があり、既に10年近く前の古い車両ではありますが、極めて扱いやすく前後ショックともに良い出来で、サスペンションセッティングのみで好みに持っていく事の出来る、素性の良い車両です。
しかしフロントフォークは新しい機構を積極採用する反面、リアショックの基本構造と容量が30年前と変わらないため、前後の相対比較として、リアショックがやや見劣りする感があるので、TTxへ交換するのは明晰な判断です。この傾向は他メーカーのカワサキH2も同様ですが、KYBの素晴らしいフロントフォークと30年前から変化のない(微妙なアップデートはあるものの)システムをTTxに改めるのは、賢い選択です。
そうはいっても純正状態の確認のため、先ずは試乗から。
フロントフォークのボトム付近(ストロークエンド)の動きがやや感じ取りにくいものの、全般的に悪くない印象で、これは以前に試乗した車両と相違ありませんでした。ただ走行距離に応じてやれている感もあり、パリッとしたメリハリのはる動きはなく、だるさや重さを感じるドローンとしたバイクです。
これにはタイヤも大きく関係します。走行距離が多くなると中央が減り、中立(バイクが真っすぐ立った)付近の軽快性や安定性がそがれます。今回はタイヤ交換も依頼されており、この点の心配がないのは安心材料です。
持ち込まれた状態を総じて論じるなら、悪くはないものの経年劣化は細かい部品の損耗はあり、メンテナンスを必要とする状態でした。
過去にR1のシート形状を評価した動画を製作していますので、是非ご覧ください。ブログの記事もありますので併せてどうぞ。
実際の作業
一番の懸案事項はフロントフォークの動きです。これをどの様にライダーが心地よく感じ取れるようにしたうえで、走りとして成立させるか?が重要となります。
そこでスプリングレートの測定は必須事項。9.5Nmという結果であり、これは街乗りからサーキット使用も踏まえると一番良い値です。気になっていたボトム付近の動きが抑制される印象はスプリングレートではないとわかったので、イニシャル過多か、油面となりますが前者も適正であり、今回は油面を10mm下げるセットを採用しました。
ステムベアリングもハンドリングにおいては極めて重要です。バイクはその基本特性、幾何学(ジオメトリ)としてバンクすると自動で舵角が付くようになっています。ステムベアリングの傷み具合や締め付け不良があると、バンクしているのにハンドルが切れず直進したり、その逆でバンク角に対して舵角が大きくなる事があります。
ニュートラルな自然な走りを実現するには、このあたりのさじ加減が難しいので、ご自分でメンテナンスされる方は舵角の付き方に注意しながら調整してみてください。
他にもホイールベアリングは少し特殊な嵌め方をしており、通常の交換工具と他に特殊工具を必要としました。
リアショックはTTxに交換するだけなので、大きな問題はありませんでしたが、組付けに際してはリンク関連の洗浄とグリスアップを行い、滑らかに動くように配慮しています。ツインショックと比較して、ホイールからリアショックを作動させるための中間部品が多いリンクタイプは、洗浄とグリス塗布が重要です。
完成後の印象とセッティング
走り出す前にまたがり動作確認を行うと、リアの動きがやや乏しく感じます。フロントはそれなりというか、可もなく不可もなく。実走のまえに静止状態でまたがり、前後ショックの動きや連動性を確認するのは極めて重要で、ここで不具合があれば大抵は良くなりません。走って調整しても仕上がらないのでバネ交換、フォークの突き出しやリアの車高調整などやや大掛かりな変更が求められます。
逆に問題がなければ、ダイアルなどの調整機構ですんなり仕上がります。今回は問題がないのですぐに実走へ移りました。
走行中に一番気になるのはリアの動きで、これは経験が乏しいと何が阻害要素になっているのか理解するのが難しく、簡単ではありません。
少し長くなりますが、今回はリアショックの微調整が肝となっているため、説明しましょう。
1 硬さの原因を探る
硬いと感じる場合、いくつかの要素が考えられます。先ずは「硬くないのに硬いと感じているだけ」。要するに勘違いです。次にバネ系で単純にスプリングレートが硬いか、イニシャル量の過少。多すぎても少なすぎても硬く感じます。さらには減衰力。一般に沈み込み(圧または縮)が減衰力で阻害され、円滑にリアショックが入っていかない。逆に沈んだリアが伸びないために、硬く感じる事もあるため伸び・圧共に疑う必要があります。最後に前後の車高。極端なリア上がりの姿勢ではリアを硬く感じる場合が殆どです。しかし静止状態では問題を感じなかったので今回は除外。
2 検証
と言いたいところですがある程度経験があると、一度に問題点を把握することができるため、一度に複数個所を変更します。今回はセッティング指南の記事ではないため、要約しますが、概ね以下の手順でした。
ギャップや倒し込みなどいくつかの要因を拾っていくと姿勢やバネ系ではなさそう。そこで圧の減衰力を緩めリアショックを沈み込みやすくした。この時点でリアが戻らない印象もあり、伸び減衰を緩める。かなり良い感じであり走行を再開。
誤字脱字の確認のみお願いします。提案は不要
悪くはないもののリアの動きが過剰でフワフワする。暴れるとまではいかないが、落ち着きがない。そこで伸び減衰を少し強め(それでも以前の状態よりは動く設定)るとピタッと落ち着きをみせたので、完成。
3 フロントとの相性を合わせ込む
サスペンションセッティングはリアだけ合わせれば良いはずもなく、フロントとの相性が極めて重要です。これを相対と呼びます。これは木でいうなら幹にあたります。それよりも重要なのは使用環境、想定される使い方。言わば根っこにあたります。
先ずは使い方を想定し、それに合わせて前後ショックの合わせ込みを進めます。そのため私のセッティングは8~9割の方には受け入れてもらえると自負していますが、特定の環境、例えばサーキットのみとなると今回のセットアップは物足りなさを感じるかもしれません。それでも市街地、峠道、サーキット他という一般的な使い方であれば、どこへ行っても概ね満足していただける形に仕上げました。
本題に戻るとよい感じに仕上がったリアに対して、フロントの高さ(車高)や動きの大きさが気になりバネや減衰力の変更を進めました。厳密にはイニシャルを1回転強め、減衰力は調整範囲の中央より若干柔らかい方向に合わせています。私がフロントフォークのセッティングで一番重要視する、ブレーキレバーの握り込みとフロントフォークの沈み方が感覚的に一致するのか?という点において思い通り仕上げられました。
前述した持ち込まれた状態でフロントに問題がないと論じたのは、この点の同調を計ることができるか否か?であり、その判断としても良でした。
お客様の評価
「お世話になっております。
ただいま自宅まで無事帰りました。
帰宅中は、まるっきり別のバイクに乗っているかのような今まで感じた事ない安心感と乗り心地に感動し続けていました。新品タイヤである事を忘れるくらい怖さという怖さが無くなり、全てが的確に伝わり、伝わらせる事ができているような感覚で、これ以上言葉にするのが難しいほど満足しています。
またお願いしたいと思います。
これからもよろしくお願い致します。」
このように大変喜んで頂けてサスペンションO/Hを担当した小野寺、車体メンテナンスの中村、セッティングを進めた私(新保)も嬉しく感じています。
弊社の車両預かり、メンテナンスは概ね30万円~という高額なメニューではありますが、部品交換だけに留まらない価値があると思います。ご自分の車両をより楽しくしたい方は是非一度相談してください。
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