TZMのYEC
宮城県の方から依頼で、TZMのYECのダンパーをオーバーホール致しました。
10代の頃にTZM50で岩井サーキットを毎週走りまわったのは、懐かしい思い出です。その時に車高調整なしのYECを使っていました。その縁なのかは分かりませんが、同ダンパーをメンテナンスする機会を多く頂いております。しかしこのメーカーは細かい仕様違いが多く、XJR400など左右で全く違った物が着いてきたり、その他にも不思議な仕様が多々あります。今回はピストンリングを上質な物に変え、フリーピストンのバンドも純正のプラスティックから材質を変更してあり、滑らかに動きます。
ニードル角は変更していませんが、ニードルを受けるジェットを新造しました。受け側の形状を変更すれば、実質のニードル角変更が可能になります。それにより微調整を実現しました。このダンパーは伸びの調整代がかなり多めにとってある為、有益な改造だと思います。
この個体は、ロッドを自社製のSGSAで作り変えてあります。ロッド径を12.5mmから14mmに変更し耐久性を持たせました。NSR50と比較して、ダンパー長に余裕があるため、実験の余地が残されています。今でもTZMに乗る方は希少になってしまったので、予算に余裕ができたならもう一度TZMを買い、前後ダンパーを開発してみたいという、欲求があります。なかなか時間が取れずに難しそうですが、気長に進めてみます。
ライダーの中にはNSR50の乗り味が、バイクの原体験になっていると言う人が多く、GPを走った中野真矢さんも根本にはNSR50があると仰っていました。56で走る埜口遥希も同様の事を言います。
しかし、NSR50の前にTZM50でサーキットを走り出した私の頭の中には、原体験としてTZM50とYECのリアサスが想起されます。一般の方なら「これを超える車両はいまだにない」といった感じかも知れませんが、車体セットを沢山こなすとイメージを超えた仕上がりに出会うこともあります。自分で作った車体に触発され、更に上の乗り味とは何かを求め、イメージしてまた造り込む毎日です。