2018年型 CRF1000Lのオーリンズ組付け 試乗の感想
CRF1000L(2018–2019)サスペンション考察
―― 純正 vs. Öhlins リアショックで“前下がり”から“尻上がり”へ
1 導入──「どちらもしっくり来ない」と感じたら
Honda CRF1000L Africa Twin は、オンとオフを両立させた名ツアラーですが、純正サスでは“前下がり”傾向が強く、コーナリング手前でフロントが沈み込みすぎるという声をよく耳にします。そこで多くのオーナーが選ぶのが Öhlins リアショック。しかし装着後は今度こそリアが持ち上がり“尻上がり”へ――。
今回は、純正状態とリアのみ Öhlins へ換装した状態を乗り比べ、良くなる点・悪化する点を整理し、現実的な改善策を提示します。
※車両の改造、セッティングが完了後に動画にもする予定です。期待してお待ちください。
2 純正サスペンション試乗インプレッション(気温 23 °C・曇天)
- フロント:ストローク初期で大きく沈み込み、直進でも常に前下がり。
- リア:伸び側減衰が弱く、ギャップ通過時に動きの比率(動作量)が「沈み 0.5:伸び 1」のリズムで跳ね上がる。
- イニシャルと減衰ダイヤルを調整すれば“並”のバランスにはなるが、フロントばねレート不足が残る。
総評
オフ走行を前提にしても前後バランスが悪い。2 人乗りも想定するとリアを柔らかくできず、中途半端なセットにとどまっている印象。エンジンは 2,000–3,000 rpm でトルクの谷があり、「もっと力強く押し出してほしい」と感じるが、これはギア比と燃調が影響しているようで、スプロケットと燃調でもっと楽しくできそう。
3 リアのみ Öhlins に換装して試乗
- 車高が明らかに高い
交換したのはリアだけなので原因は明白。弊社実測値で純正よりも15mm長い。 - 悪癖が増幅
フロントは柔らかいまま沈むのにリアが高くなり、旋回時にリア上がり姿勢のネガが顕著。 - ショック単体の動きは上質
特にオンロードでの収束性は大幅に向上。 - しかし車体バランスは悪化
「純正より良くなる」という Öhlins のコンセプトから外れ、今回は純正のほうがまだ整っていた。
4 なぜバランスが崩れるのか
- リアショックが長い → プリロードだけでは 1 mm 程度しか車高を下げられない
- フロントばねが柔らかすぎ → 沈み込み量が増え、相対的に更にリアが高くなる
- 良いショックの動き ≠ 良い車体の動き
単体性能とバイク全体の挙動は一致しない。
5 現実的な改善策
- 短いスプリングに交換し、サグ(乗車 1G)を大きく取る
- 車高を 10 mm 程度下げ、前後の姿勢を合わせ込む。
- 前後ばねレートを同時に見直す
- フロントのバネ定数をアップし、沈み込みを抑制。
- ショックをショート加工し、適正プリロードを確保
- 動き出しを甘くせず、スポーツ走行での反力を保持。
- イニシャル・減衰を“調整可能域”に収める
- ツーリング荷物の有無で ±5 mm の車高調整を行えるようセットアップ。
これだけで街乗りの快適性は維持しつつ、峠道でキビキビ曲がるCRF1000L に変貌します。
6 まとめ ―― 単体性能を“バイク全体の動き”へ昇華させる
Öhlins リアショックはあくまで高性能な素材。材料を活かすレシピ(前後ばね・車高・減衰の再構成)がなければ、本来のポテンシャルは発揮できません。
もし「換えたのに期待外れ」「尻上がりで曲がりづらい」と感じたら、前後セットの見直しを検討してください。最小コストなら純正ばね交換、ステップアップならショック短縮&新スプリングが有効です。
足つきも操安も「あと一歩」を超えたいなら
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CRF1000L(2018–2019)+Öhlins リアショック 診断と方向性のまとめ
―― 交換後に「思ったほど良くならない」と感じたときの診断メモ
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明らかに車高が高い
変更したのはリアショックのみなので、後端が持ち上がった原因はそこにあります。 -
悪癖が増す
純正でもフロントばねが柔らかく沈み込みやすいのに、リアだけが高くなることで車体姿勢が“尻上がり”に。コーナー入口でフロントが低く、出口ではリアが高い――このアンバランスが旋回性をさらに悪化させます。 -
ショック単体の動きは◎
伸び・縮みともに収束が速く、オンロードでの路面追従性は大幅に向上しました。 -
しかし車体全体のバランスは×
フロント:柔らかく沈む
リア:ストローク短め・高め
→ 相対的に前後姿勢が崩れ、結果としてノーマルのほうがまだ整っている状態です。 -
最も安価な改善策
純正フォーク&ショックのスプリングのみ交換し、静的姿勢(車両を押し下げない状態)と動的姿勢(乗車時・旋回時)を合わせ込むこと。Öhlins の導入が前提なら、次の手順へ。 -
Öhlinsリアショック特有の課題
街乗り~ツーリングの速度域では動き自体は文句なし。ただし全長が長すぎるため、リアだけハイポジション化し、車体全体が前傾→後傾へ振幅。結果、バイクの「芯」がぼやける。 -
“良いショック”と“良いバイク”は別物
単体性能が優秀=車両も優秀、とはなりません。Öhlins の高性能を活かすには車体側で受け止める前後比の再構成が必須です。 -
具体的な解決ステップ
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短いスプリングに交換し、サグを拡大
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サグ=乗車1Gで沈む量。リアを+10 mm沈めるだけで、フロントとの高さ差が縮まりバランスが改善。
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フロントも硬めのばね(例:0.90 kgf/mm)へ
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沈み込み量を抑え、ブレーキング時に姿勢が安定。
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縮み側を-10 クリック
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荒れた路面で跳ねず、かつ旋回中の粘りが出る。
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前後バランスを“調整可能域”に収める
一度リアを低めに組んでおけば、ツーリング荷物に応じてプリロードで高い⇔低いを往復できます。フロントばねを交換しておけば、その変化にも対応しやすくなります。 -
さらに煮詰めるなら
プリロードを緩め過ぎると動き出しは滑らかでも反力不足でダルなフィーリングに。そこでショック全長を15~20mm短縮し、プリロードを適正化すると、乗り心地とスポーツ性の両立が可能です。
まとめ
リアショック単体の性能を“車体全体の動き”に翻訳するには、スプリングと姿勢の再設計が欠かせません。
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サグ拡大+短スプリングで車高を合わせる
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フロントばねレート見直しで姿勢を締め上げる
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減衰微調整で路面追従と安定感を両立
これだけで「Öhlins に替えたのに曲がりづらい」という違和感は解消できます。もし CRF1000L で同じ壁に当たっている方がいれば、ぜひ一度ご相談ください。解決策を一緒に探しましょう。
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