M1000RR サスペンションセッティング

M1000RR リア/フロント スプリング適正化レポート(−35 mm ローダウン含む)

1. 目的と背景

純正 M1000RR(2025)の試乗・解析段階で 「スプリングレート過剰 → ストローク実用域の不足」 を予見。今回はローダウン(足つき改善)を主目的としつつ、公道~ワインディング~サーキット軽走行を想定して“常識的な”レートへ最適化した結果をまとめます。

純正を評価した動画はこちらをご覧ください


2. 最大の課題:リアスプリングは「不要な硬さ」

  • 純正リアレート:明確にオーバースペック。
    日本国内サーキット(筑波/茂木など)であっても、この硬さが必須となるシチュエーションは極めて限定的。
  • 症状
    • 乗車 1G サグ ≒ 0 mm(= ストローク“入口”を使えない)
    • 小~中入力も全部“角張って”伝わり、連続ギャップでリヤタイヤが張り付ききれない瞬間が発生
  • 対策:レバー比とデータを参照し、大幅レートダウン
    → 標準乗車荷重域で 1G サグを確保し“普通の動き”を回復。

3. フロント:悪くないが “公道・一般サーキットには過剰”

  • 純正フォークスプリングも 街乗り~スポーツ走行レベルを超えた硬さ
  • 筑波レベルでも“好み次第で使うかどうか”の領域。
  • 下げた狙い:初期~中期ストロークの可動性を取り戻し、
    • ブレーキング初期:リニアな沈み込み
    • 進入~倒し込み:前後荷重移動の“段差”を解消
    • 旋回中の接地インフォメーション増幅

4. 減衰(非電制/マニュアルアジャスト)の運用指針

  • 街乗り快適ゾーン:最弱から 1~3 クリック(段)
  • スポーツ寄り/ワインディング:最弱から 3~4 段目
  • 5 段目以降は公道では硬質感が先行しメリット限定的(前後共通傾向)。
    = スプリング適正化により、減衰は“締めすぎなくても安定”する方向へシフト。

5. 変更後のライドフィール

項目 STD スプリング最適化+ローダウン後
小ギャップ吸収 ほぼ全部拾ってくる/ザラつき “毛足の短い絨毯” 的に丸めて透過
ブレーキング初期 入口で硬さ→急激な姿勢変化 入力量に比例した沈み
倒し込み 前下がり感/後輪追従遅れ 前後“しっとり” 同期沈下
旋回~立上り フロント荷重偏重・神経質 荷重移動がシームレスで安心感高い

6. 足つきとローダウン効果

  • 施工ローダウン量(機械的):−35 mm
    • 865 mm → 830 mm(シート高)
  • 純正との比較:STD では(身長 165 cm / 股下 72–73 cm)“またがること自体が心理的ハードル” → 施工後は 常用許容感+停車時安心 に明確変化。
  • レート変更のみの場合:サグ発生により 15~20 mm 程度の実効ダウン が期待可能。
  • 街乗り中心ユーザー:−30 mm 付近で“取り回し安心域”に入るケースが多い。
  • 180 cm 前後ライダー(例:依頼ディーラー担当)でも35mm下げなら踵まで余裕 → 長身ユーザーにも“過剰な下げ”になりにくい設定を選択。

7. まとめ(所見)

  • M1000RR 純正足まわりは “高荷重・高Gピーク” 寄りのスリックタイヤ使用まで前提とした高荷重安全マージン型。
  • スプリング最適化 → 減衰は緩め側で性能を出せる設計へ転換。
  • ローダウン(LGN的アプローチ)と走行性能向上は両立可能で、むしろ “ストロークを正しく使える高さ” に落とすことが操縦安定性を底上げ する結果を再確認。

高額機種ゆえ台数は少ないですが、データ蓄積で 再現性あるセットアップ指針 を確立済みです。
公道快適+峠+年数回サーキットの“ハイブリッド用途”こそ恩恵が大きいと感じています。


▶ ご相談 / セットアップ依頼(ローダウン・スプリング最適化)

「自分の体格でどこまで下げるべきか」「サーキット併用時の妥協点」「他仕様との比較」など、具体的にお伝えいただければ初回から精度高くご提案します。お気軽にどうぞ。

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