旧世代と現行世代を貫く整備技術 ― ムルシエラゴKONIからアヴェンタドールBWIまで
ランボルギーニ電子制御ショック整備
–– KONI と BWI、その両方式に対する技術的アプローチ ––
プロローグ
先日の記事では、ムルシエラゴに採用されるKONI製ショックの再生整備を取り上げた。
現在は、同系の電子制御仕様に加え、アヴェンタドールに搭載されるBWI製ダンパーの依頼も複数進行している。
いずれも電子制御を備え、従来の油圧式とは異なる難度の高い技術領域である。
本稿では、Lanborghiniの電子制御ショック整備における基本的な観点と、当社が進めている取り組みの一端を記す。
内部構造の詳細は技術流出の懸念があるため非公開とするが、全体像として何が求められ、どこに難所があるのかについては可能な範囲で触れておきたい。
電子制御ショックが難しい理由
構造の複雑性は、単に部品点数の多さだけが要因ではない。
電子制御KONI、磁性流体を用いるBWI、いずれも共通して、次の三点が整備の本質的障壁となる。
一 分解前提で設計されていないこと
二 導通・作動・油圧の三要素が連動して性能を決定すること
三 組立精度そのものが減衰特性を規定してしまうこと
電子制御部位の損傷は作動不良に直結し、磁性流体式では封入精度と気密性が性能再現の鍵となる。
このため、従来の油圧ダンパーとは異なり、「分解できれば整備できる」という単純な世界ではない。
世界的にO/H対応業者が限られる理由は、この構造的宿命にある。
当社の方針
電子制御ショックに対する当社の姿勢は明確である。
「一度限りの再生」ではなく、継続的なメンテナンスを前提とした再構築を行うこと。
そのために、以下の取り組みを進めている。
一 摩耗しやすい内部部品の再設計と製作
二 導通確認、動作試験、減衰試験の手順体系化
三 初回整備での構造改善により、二回目以降は短納期化を視野に入れた再現性の確保
ムルシエラゴ系のKONI、アヴェンタドール系のBWIいずれにおいても、
単に「分解して戻す」のではなく、構造上の弱点を補いながら精度を積み上げる方式を採用している。
KONI と BWI、その共通点と相違点
両者は全く異なる思想で作られたダンパーであるが、整備の難所は共通する。
・気密性と導通の同時確保
・減衰再現性の保証
・再封入工程の厳密さ
・分解手順の自由度が極めて低いこと
特にBWIは磁性流体を採用するため、油そのものの性質と制御コイルの健全性が走行性能を直接左右する。
この領域は、経験と試験設備なしに扱えるものではない。
なお当社には、海外大手サスペンション関連企業からもO/H相談が寄せられた事例がある。
世界的に「扱える業者がほとんど存在しない」ことの裏返しとも言える。
今後の記事について
詳細構造の公開はできないが、次回以降は次の内容に触れる予定である。
・電子制御KONIに特有の構造的課題
・BWI磁性流体ダンパーにおける再生工程の大枠
・導通・作動試験の観点
・初期値の設定と組立精度の問題
・再生に適した部品製作と再設計
電子制御ショックは「交換前提」の部品であるが、正しく再生できれば性能を長く維持できる。
そのための技術蓄積を、今後も継続していくつもりだ。
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