CB1100EX完成 仕様説明
CB1100EXが足回りの完成をみたので、一旦客様に納車してまりました。
この後、シートとエグゾーストの交換は残っていますが、連休中に乗りたいとお客様の意向もあり、手元へ届けてまいりました。
CB1100は当初から興味のある車両でしたが、この年式はサイレンサーが二本出しの型でした。4気筒エンジンで二本出しは低速のトルクがとても私の好みです。これは何に起因するのか、今回のCBに乗ってみてわかりました。低回転から太いトルクを感じられるからです。ショートストロークのCBがロングストロークに感じられるほどでした。これが本当にロングストロークであったならどんな快感を味わえるのか、非常に興味深く思います。
前後サスペンションの仕様は、フロントにはCB1300のカートリッジを使用して、リアにはFGのツインショックFSM11pr36を提案し了承頂きました。
リアのFGもCB1300用を長さと内部を組み替えてあります。その理由はSC54の場合リアには180の太いラジアルタイアなのですが、1100は18インチの現代では割と細めのタイアだからです。スプリングレートはほぼ同じような値を用い、減衰を伸び圧ともに抜いています。
アッパーマウントの寸法はSC54と同じなのでそのままでしたが、スウィングアーム側は部品を一品製作しベアリングを持った仕様となっています。
写真でご覧いただけますが、FGのダンパー(フロントも含め)は殆どにトップアウトスプリングを採用しています。現在でもリアのトップアウトを価格の別なく採用しているのはFGだけです。特にツインショックへの採用例は個人的にまだ他社で見かけたことはありません。SHOWAやKYBにあるのですが、それはリバウンドストッパーの意味合いが色濃いため、ここでは前者に区別しません。
フロントフォークは大掛かりと表せる内容です。カートリッジを追加するだけならそれほどでもありませんが、SDBVと呼ばれる特殊な機構がインナーチューブ先端にあり、それを外すとフォーク長が大きく変化するので、そこの寸法を変えないようにステンレスで部品を作り対応しました。その部品はカシメられ分解ができないようなっています。そこで、一度分解し部品を製作挿入後に当社得意の際カシメで対応できたのは幸いでした。再カシメ以外の手法で長さ合わせを行う方法もありますが、色々と面倒もあり今回はこの手法を用いました。
アウターチューブはお客様の意向に沿い、パウダー塗装を施しました。
内部の減衰は5月に仕上げたCB1300SBを基本にしつつ、先日のX4も参考にしながら1100に合わせ更なる微変更を加えてあります。このほんの少しの変更が乗り味に大きな変化を与えるとは、試乗するまで私自身にも想像できませんでした。これについては後半の試乗部分に記します。
スプリングレートは当初9.5Nmを想定していました。しかし、新たな乗り味を模索する中で結果としてもっと低い値に落ち着きました。この辺りは製作者と乗り手の好みで大きく変わるので、正解は人それぞれだと思いますが、動き出しのフワッとした感触から奥で踏ん張る仕様を作り飽きていた私には結果として、極めて面白い仕様を作ることに成功した一番の立役者はこのフロントフォーク・スプリングの定数にあると考えます。
オイルロックピースには、旋盤で加工し効き始めを6mm奥へとずらしました。CB1100の2018年型は実ストロークが110mmです。ここにロックピースで使えなくなる分を差し引くと実質は90mm強となります。
純正の油面は左右で使うスプリングの違いから大幅に違います。この車両は左右とも同仕様なので170mmとしました。