YZF-R6 2008年型のコンプレッションアジャスタ
先日、インナーチューブ交換の依頼があり、TOTレーサーのフロントフォークを作業いたしました。
その車両はフロントフォークに2008年型のR6を用いていますが、このフォークは多機能です。スプリングイニシャル、伸びと圧の低速、高速の両方を調整可能です。写真をご覧になるとわかりますが、写真右の中心部分に青いダイアルがあり、それは低速を調整します。
その外周にある6角形の金色部品が高速の調整です。
この部品はネジになっており、回すとスプリングを圧縮しそれが積層板弁に圧力を載せ、開き難くして流路を狭め動きを鈍化させるのです。ただし、この方法は高速のみならず低速にも明らかな影響を強く与えます。
設定した減衰の強さが、高速の調整で変化するのではどうにもなりません。先日調整ニードルとシムの関係は動画にしていますので、ご覧ください。
というわけで、件のレーサーはその事を説明して低速のみの調整にしてあります。ピストンは以前に私が設計したオリジナルピストンを使っています。今ではそれほど高性能ではないと認識していますが、14〜15年前に懸命に図面を引き実車で実験した経験が、シムとピストンデザイン、オリフィスとポートの関連性を実感する良い題材となりました。
リアショックの様にメインピストンと別にセカンダリピストンのシムに対し圧を掛けるのは問題が起こらないようです。
R6のフロントはメインピストンのシムに圧を掛けるのが宜しくないのです。後年のR6はKYBフォークを採用し、この低速:高速調整をやや違った手法にしてあります。それでも根本構造は同じなため、部品配置の都合上で一体にしなければならぬようで、ならば低速調整のみにした方がセッティングの正確さが損なわれず良いとはずです。
低速・高速調整あり。とすれば格好は良いと思いますが、実益を優先するのでしたらこの様な削ぎ落とす改造も選択できます。