BMW・S1000XRの前後ショック脱着手順。リアショック編の概要。

 フロントフォークの手順は以前に示しました。今回はリアショックの手順を紹介しますが、非常に込み入っており、難しい作業は多くありませんが、工数が多く外すボルトの数が多いため初心者向けでありません。また、紹介する作業により得た結果には、一切の責任を負いませんので了承頂いてから参照して下さい。

 リアショックの脱着作業にかかる時間は概ね4~5時間を想定しています。作業手順に慣れたなら全てを含め3時間程度で終わるかもしれませんが、かなりの練度を要求されます。素人の方が少ない工具やスタンドを用いた場合は2日を覚悟する必要があります。

 では早速リアショックを外す作業を紹介します。

 手順は非常に複雑で、外す部品の数が多い

外装の殆どを外す必要がある

 衝撃的な事実ですが、リアショックを外すためにはアッパカウルの一部を除くほぼすべてを外す必要があります。この段階で気が削がれた方は早々に諦めて業者さんに依頼しましょう。

 閑話休題。真面目に説明を進めます。なぜ外装を多く外す必要があるのかといえば、電子制御がスプリングイニシャルも調整(ストロークセンサと同調しているようです)、または遠隔操作するのですが、その油圧アジャスタのユニットがガソリンタンクの前部、小物入れの下辺りに位置するからです。

 それでは外装の脱着作業から説明します。

 シートを外す

 テールライトの下にある鍵穴を回してシートを外します。

 シート下のカウル(小)を外す

 片側に付きボルト一本で外せます。これは問題なく極めて簡単な作業です。

左右で2本のボルトだけです。

 ウィンドスクリーンを外す

 スクリーン自体は4本のボルトで外せます。ボルトにはプラスチックカバーが在るので外しましょう。

後ろのGSX-Sは無視して下さい。

 スクリーンのホルダボルトを外す

 スクリーンを保持するホルダのボルトを外します。これはその奥にある小さなボルトを外すための措置です。または足の長い特殊工具を用意すれば、このホルダボルトを外す作業は省けます。

 フロントフォーク前部のプラスチックカバーのボルトを外す

 作業が込み入っていたので、写真を撮る暇がなく所々で写真を載せられませんが了承下さい。

 スクリーンホルダを外すと、奥に小さなボルトが確認出来ます。そのボルトを外すとフロントフォーク前部(メーターの左右方向やや下側)に位置する小さなカバーが外せます。左側にはシガーソケットがあるので、カプラを外して下さい。

左にはシガーソケット、右はフロントフォークの電制カプラが近くにあります。

 ヘッドライト上のカバーを外す

 上記のプラスティックカバーを外すと一本、ボルトを確認出来ます。このボルトを外すとヘッドライトの上側カバーが外せるようになるので、力技で引っ張って下さい。

 左右のカウルを外す準備が整った

 上までの作業でタンクカバーとその横の外装を外す準備が整いました。ここからが本番です。

 タンクの後部ボルトを外します。

 小物入れを開けるとボルトがありますので、タンク後端と前部の合計4本でタンクカバーが外れます。

写真の車両はタンクバック等の金具がついています。

 その次はタンクを外すと現れる左右のカウルを留めているボルトを外してゆきます。これはタンク後端、タンク上部、カウル前部(ライトの下あたり)など数多くありますので、注意が必要です。

タンク下
ギアシフトリンケージの上
ヘッドライトカバーを外した箇所
アンダステム近辺。前後ショックを同時に外すなら、フロントフォークを先に外したほうが作業は容易。

 全箇所の写真を撮りきれませんでしたので、各自で現車に即してボルトを外して下さい。

 特に注意するのはサイドカウルの上下に分割された下側です。これはウィンカーのある更に下側のカウルと2本のボルトで留められていますが、カウル内側から緩める必要があるので見落としがちです。短く小さい工具で容易に緩みますので、カウルを割らないように気をつけながらある程度は外側へ歪ませて手を入れます。

 タンクのボルトを外す

 タンクは後端にボルト、中央あたりにナットがあり4箇所で留めてあります。これは容易に外せます。

タンク後端
タンク中央。平ワッシャがあるので紛失に注意する。

 サブフレームを外す準備

 今回の作業の一番の難関です。
 油圧ユニットはタンクの下、メインフレレームとサブフレームの隙間を通ります。そこでシートカウル内のバッテリを保持するカウルを外すかサブフレームを外すかの二者択一に迫られます。当社では後者を選択し作業を進めます。

 サブフレームを外すこと自体は難しくありませんが、緩めたあとでどの様に留めておくのかが重要です。以下に手順を記します。

 リアホイールを外す

 リアショックを外す際の自由度を高めるため(ホイールを下に振りやすいように)、リアホイールを外します。この作業は容易です。

 リアホイールのカウル(フェンダ)を外す

 4本のボルトで容易に外せます。

 シート下収納部分のボルトを外す

 シート下の収納スペース用カウルはメインフレームに留められていますので、2本のボルトを外します。作業を容易にするため、バッテリの固定ステーボルトも外すと良いでしょう。

 サブフレームの固定ボルト4本を緩めておく

 この段階ではまだ外しませんのでボルトは緩めるに留めて置きます。

 ECUを移動させる

 油圧ユニットを取り外すためにカプラやタイラップを外します。

油圧ユニットの上部にあるカプラ等。
固定箇所をしっかりと記録しておく。

 

ECUユニットの写真は撮り忘れており、この一枚だけです。

 ECUは簡単にずらせます。カウルを外すと右側面に銀色の大きな箱が確認できるはずです。その接続を外し、上へずらしますそうするとECUを固定するためのプラスティック部品を留める3本のボルトが見えるはずです。これを外します。

 そうすると配線に隙間が生まれ油圧ユニットが外せるようになるので、隙間を縫うように車体右側へ抜き取ります。そして傷つかないよう養生したら本丸のサブフレームへ進みます。

 リアショックの脱着とサブフレーム

 リアショックのロアボルトを緩めます。まだ抜き取る必要はありません。

 リアショックのアッパマウントはメインハーネスが通っており、工具が入らないかもしれません。その場合はサブフレームをずらしてから作業を進めます。

 サブフレームをずらす

 当社では写真のような車体を吊るすためのスタンドにタイダウンを併せてサブフレームの脱落を防止します。 

傷つかないようスウィングアームには毛布やプチプチで養生する。

 スウィングアームに取り付けられているカウルを外すのも、もしサブフレームが脱落した場合に割れるのを防ぐためです。そしてリアショックをねじりながら外す際の障害になるのを防ぎます。

 ここまで来るとリアショックのアッパマウントに工具は問題なく接触出来ます。リアショック上下のボルトを緩めて下さい。

作り出した隙間

 メインフレームとサブフレームの間隙を縫うように油圧ユニットのホースをずらします。

 リアショックをどうにかこうにか引っ張り出すと、最後の難関である油圧ユニットを外せば作業が終わります。

 油圧ユニットは写真の様に隙間を通しても良いし、ホースだけを一番下までずらしてから、後ろへ抜くのも可能だと思いますが、私は写真の隙間を通しました。

 注意点と組付けの留意点

 かなりの部分を割愛しつつも、相応に長いブログになりましたがいかがでしたでしょうか?少しは参考になりましたでしょうか。

 ここらは簡単に気をつけるべき点と、組付けに関して気に留める点を書き記します。

 分解時の注意点とは?

 分解作業は簡単です。ただボルトやナットを緩め、外して目的の部品を取り出せば良いからです。しかし何も考えないで作業を進めると、組み付け時に泣きを見る羽目に陥ります。ボルトの長さや寸法を整理せずに一つの箱に放り込めばその災難は更に大きなものになります。

 そのため分解時にはジップロックを大量に用意して当該箇所の名前を記して小分けにします。可能であれば作業に番号を割り振り、その番号で管理すると更に組付け作業が捗ります。

 とい訳で分解時に一番気をつける事は、組付けを考えるとい一点です。もちろん傷をつけたり部品を破損しないのは当然です。

 組み付け時の注意点

 上に記した点を実行すれば、長い作業を難しさはかなり低減します。実は作業の難易度は一種類ではなく、いくつかに分類可能です、

 1 作業自体が難しい
 つまり針の穴に糸を通すような繊細な作業のように、作業自体に難しさがある場合です。

 2 組み合わさり複雑
 一つ一つの作業は単純なのですが、工程が多くなり煩雑さが増すことで難しくなる。といよりは複雑になるという場合です。

 今回のS1000XRのリアショック脱着は2の要素が多く、そこに1の要素(サブフレームをずらす)が混ざり込む形です。

 とい訳でサブフレームの問題さえ解消すれば、後は手順通りに分解し組み付ければ解決します。

 長くなりましたが、今回はこれにて終わりです。また要望があれば脱着に関する作業手順もブログにしてみようと思います。

 

 

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