BMW/S1000Rのローダウン

 ローダウンの依頼でS1000Rの前後ショックを改造しましたが、試乗しとても面白かったのでその感想も書き記します。

ハンドルが換わっていました。

 私よりも小柄な方(160cm位)なので、足着きが厳しいため4~5cmシート高を下げたいと希望され、依頼を受けました。

 下げる事そのものは難しくありませんが、私の真の目的は走安性と乗り心地を悪化させないどころか、むしろ向上させるのがローダウンにおける最大の目的です。

大きく下がったのが分かる、インナーチューブの露出面。

 そこで重要なのがバネの選定です。電子制御のある左側は強い減衰を一本で発生するため、左右フォークの動きに違いが現れやすい事を考慮し、電制の無い右フォークに硬いバネを入れました。

左のフォークに電制ユニットがあります。

 極力左右のフロントフォークが均一に動くように仕向けます。それだけでなく、純正のバネよりも硬くすることで短くなったストロークでも十分な吸収力を発揮するようなバネを選びました。このあたりは純正のバネ定数とイニシャル量がわかれば、必要になる反力が導き出せるので計算自体は簡単です。ただその算式を知らなければ、計算が出来ないだけです。

 実際に使うのは四則演算で事足ります。

 リアショックも下げるのと同時にバネを硬くしました。これはフロントフォークと同様に、短いストロークで十分な性能を発揮するためです。

バネの替え、イニシャル量を合わせるカラーも作りました。

 ローダウンに置いて、走行性能を支えるために一番重要かつ難しい作業は、フロントフォークの造り込みです。

 衝撃を一番最初に受けるため、ローダウンを行うとボトムまで一気に沈みやすく、そうなると車体が暴れるために転倒の危険性が高まります。そこで下げ幅とストローク量の決定、そしてそこから導き出される必要なバネの硬さが大切になります。

かなり下がった前後の車高。乗車時で50mm弱下げられました。

 リアショックも同様の計算を行い、大きな負荷が掛かった時にリアタイア(またはフェンダーなど)がどこかに接触しないか確認します。

 新たな依頼がある度、足着き性を向上させつつもっとハンドリングをよく出来ないかと、思案していますが今回はその中でもかなり良く仕上がったと思います。

 試乗した感想は後に譲りますが前後のストロークが十分に確保され、まるでローダウンしていないかのようです。それを踏まえて試乗記に移ります。

 印象
 ローダウンして一番問題になるのは前述した通り、大きな衝撃を受けてフロントが入り込まないか?そこが焦点です。とくに縁石などの段差で大きくうごきますからそういった場所で少しづつ確認を進めます。

 ですが、実は普通に走ってブレーキを掛ければある程度というか、かなりの部分で良否の判断がつきます。

 BMWのSシリーズで電制搭載モデルはロード、ダイナミックなどメーカー設定の値を選べますが、これが極めて中途半端です。

 どういう事かと言えばロードではカチカチ(二人乗り設定らしい)で、ダイナミック(一人乗り設定)ではフニャフニャと動き、300Km/h出る車両とは思えない、動きすぎの仕様になります。

 ただローダウンすると吸収力が下がると言うのはこの記事で何度も書いていますが、短いストロークで吸収力を上げるには減衰も当然強くするべきです。

 ロード設定だとやや硬くはありますが、その吸収力が上がって底づきしないサスペンションになり、かなり高評価に感じました。

 突き詰めると今の基本設定よりもやや硬めにして、ダイナミック(一人乗り)設定で丁度良い感じに仕上げれば、もっと楽しくなるし、走安と安全性は両方とも向上します。

 バネの設定が上手にまとまり、ブレーキレバーと連動するひょうにストロークするフロントフォーク。

 倒し込みでフロントと同調しながら沈むリアショックはギャップも綺麗にいなすので、とても心地よい乗り心地です。

リアのまとまりもかなり上質。

 パワフルなCB400SFのよう
 その取り回しの良さはCB400SFに1000ccのエンジンを搭載したかのような、かなり楽しい車両だといえます。

 当該車両はローシートが着いていました。これを通常の高さに戻せば足着きは若干悪化するものの、ハンドリングは更に向上するのは間違いありません。そうなると600cc位の感覚になり、これまた楽しくなりそうです。

 BMW・Sシリーズはエンジン下に巨大な排気装置があります。これを小ぶりにして軽量化すれば更に楽しくなるのは間違いありません。公認の排気管があれば是非交換してみたいと感じました。それによりローダウンで下げた車両とより良い相性になりそうです。

腹下の部品が大きいせいか、脇にある消音器は小ぶりです。
調子に乗っていると、リアタイが簡単にサイドまで到達しそうなので自重しました。

 同車両には純正でオートシフターが備わっています。最近は当たり前になりつつ有る、ギアを下げた時もオートシフターが作動するのですが、かなり良い設定でした。

 私見ですが、低速ではギアを上げるとギクシャクしやすいと感じますが、下げる時は全域でなめらかに思います。これは街乗りでも効果的でストレス知らずです。

素晴らしいオートシフター。

 個人的には昔ながらの電制や補助装置等(ABSやトラコン)がない車両を好みますが、オートシフターの特にギアを下げる時のアシスト機能はどの車両にも搭載できたら良いな。などと夢想しています。

ショート加工したサイドスタンド。

 最後に、下げた車高に合わせてサイドスタンドも加工を行いました。一度切り離し溶接で繋いでいます。溶接後に玄能で叩き、簡単にもげないか?音がおかしくないか?を確認します。

 今回の依頼は前後ショックのローダウンとサイドスタンドの加工で23万円ほどでした。減衰設定を変更するならば追加で5万円程度は必要となりますが、より洗練されたハンドリングを体感したい方にはお勧めです。

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