BWIの依頼が急増中
ランボルギーニ偏重から、フェラーリへ広がる流れ
昨年は、BWI製ショックのご依頼といえば、ほとんどがランボルギーニ・アヴェンタドールでした。
フェラーリ系はゼロではないものの、あくまで「少数派」という印象で、作業台の上に載っているのはアヴェンタドール用ばかり、という日も珍しくありませんでした。
ところが今年に入ってから、流れが少し変わってきています。
相変わらずアヴェンタドールのBWIは多いのですが、フェラーリ側――たとえばポルトフィーノやその他のV8/V12モデル――からのBWI依頼が目に見えて増えてきました。年式や走行距離を考えると、「そろそろ一巡目のO/Hタイミングに入ってきた」ということなのかもしれません。

BWIのO/Hは「数をこなせば楽になる」類ではない
BWIの磁性流体ダンパーは、正直に言って、オーバーホール作業の中でもかなり難しい部類に入ります。
分解・洗浄・組み立ての一つひとつの手順が細かく、一般的な油圧ダンパーと同じ感覚で触ると、すぐに痛い目を見ます。
特に厄介なのが洗浄作業です。
磁性流体は普通のダンパーオイルと違い、金属粒子を含むため、付着したものを「完全に落とす」には、それなりの工程と時間が必要になります。ここを曖昧にすると、せっかくシールを替えても、内部の汚れが再トラブルの火種になりますから、どうしても一台あたりの工数は重くなります。
「一回やれば慣れる」といった種類のものではなく、毎回、構造と状態を確認し直しながら丁寧に進める必要がある――それがBWIの現実だと感じています。
見落としてはならない“配線”というもう一つの仕事

BWIのショックは、内部の油圧系だけを直せば済むものではありません。
電磁コイルに電気を送り、磁性流体を制御してこそ本来の性能が出ますから、配線まわりのチェックも避けて通れません。
コイルの導通確認、カプラー部の接触、配線被覆の痛みや曲げ応力。
アナログダンパーのO/Hではあまり意識しなくて良かった部分が、そのまま「故障要因」になり得ます。
オイル漏れだけを直しても、配線側に問題が残っていればエラーは消えませんから、ここも一つの“もう一つのダンパー”だと思って点検するようにしています。
磁性流体という“中身”を理解するために
BWIをきちんとO/Hするためには、シールやロッドを整えるだけでは足りません。
中身である磁性流体の性質を、少しでも具体的に掴んでおく必要があります。

写真に掲載しているのは、磁性流体に磁石を近づけた状態のものです。
静かに見ているだけでも、磁場を与えた瞬間に形が立ち上がり、たちまち表情を変えるのが分かります。見た目はシンプルな「黒い液体」でも、磁場によって粘度や流れ方がここまで変わるのか、と改めて実感させられます。
BWIが公開している技術資料や断面図からも、構造や制御の考え方はある程度読み解けます。
ただ、紙の上の情報と実物の挙動には必ずギャップがありますから、手元の磁性体サンプルを使いながら、ゆっくりと実験と観察を続けているところです。オーバーホールの質を上げていくうえで、この地味な蓄積は避けて通れないと考えています。

高級車の電制ダンパーを“長く使う”という発想
フェラーリやランボルギーニに搭載されるBWI、Bilstein、ZF Sachsといった電子制御ダンパーは、どれも構造が複雑で、新品交換となれば高額になります。
メーカーの想定としては「不具合が出たらアッセンブリ交換」という世界でしょうが、オーナー側からすれば、まだ十分使えるものまで一括で捨ててしまうのは、心理的にも経済的にも納得しづらいところです。
だからこそ、オーバーホールという選択肢には意味があると思っています。
ただし、「できる」「できない」の線引きは車種や状態で変わりますし、電制系の故障内容によっては、どうしても新品交換をおすすめせざるを得ないケースもあります。そこは期待を煽るのではなく、個別に状態を見たうえで率直にお伝えする方針です。
BWIに限らず、ご相談はお気軽に
BWIの磁性流体ダンパーは、その性質上どうしても難易度の高い作業になりますが、同じように悩ましいのがBilsteinやZF Sachsなど、フェラーリ/ランボルギーニの電子制御ダンパー全般です。
「この車種は対応可能なのか」
「オイル漏れだけなら何とかなるのか」
「エラーが出ているが、どこまで見てもらえるのか」
こうした疑問があれば、まずは一度ご相談ください。
実際のご依頼・お見積もりは、基本的にお付き合いのある修理工場様や販売店様を通しての対応となりますが、技術的な可否や納期の目安については、エンドユーザー様からの直接の問い合わせにも応じています。
電話番号:090-3316-5306
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フェラーリ/ランボルギーニの電子制御ダンパーでお困りの方は、無理に結論を急ぐ前に、一度状況をお聞かせいただければと思います。
