CBR1000RR-R SC82 SPモデル ポジション変更の意味と価値

CBR1000RR-R SP × CB1300SF SP|“ポジションが走りを変える”実走ノート

要点(30秒)

  • ローダウンやサスの前に、ハンドル/レバー/シートの角度と位置を整えるだけで“別のバイク”になる。
  • 同日同条件で CBR1000RR-R SPCB1300SF SP を乗り比べ。ポジションを詰めたCBR のほうが、私には明らかに 扱いやすく・走りやすい と感じた。
  • 目指すのは「万人向け」ではなく、“いま乗るこの人”に最適なセット。ローダウン/サス調整と同時依頼が最短ルート。

コラム|“平均の罠”とポジション設計

戦後の米空軍では、「平均的体型」に合わせたコックピットが誰にもぴったり合わないという指摘が広まり、のちに広い調整レンジを持つ設計が標準化された——とよく紹介されます(Daniels中尉の人体計測研究が背景にあるとされます)。
厳密な史実検証は本稿では控えますが、「平均より、調整可能」という考え方はオートバイにもそのまま当てはまります。
だからこそ私たちは、まず基準セットを提示し、そこから体格・用途に合わせて微調整
します。数度・数ミリの違いが、初期制動・切り返し・荷重移動の「怖さ」を確実に減らす——CBR1000RR-Rの今回の変更も、その実践です。


1|同日比較で見えたこと:CBRのほうが“走りやすい”

CBR1000RR-R SPは、ハンドルの絞りをわずかに追加し、レバー角と到達距離を微修正。あわせてシート座面全体を1㎝削り、後端をよりフラット寄りに整えてから試乗しました。

このシート形状変更の理由は、足つきのための「アンコ抜き」ではなく、着座位置が高すぎてバイクとの一体感を阻害していたため、その解消策でした。

結果、体の移動が邪魔されることなくライディングポジションの自由度が増し、車両の重心に適切に近づけたことでバイクとの一体感が大幅に増幅。対してCB1300SF SPは快適で懐の深い良い車両ですが、ハンドル形状に「あと一歩」の余地を感じました。

どちらが“優れている”かではありません。使い方(街乗り〜峠〜走行会)と体格に対して、どれだけポジションが合っているかで、同じ車体でも評価は変わります。


2|なぜ“数度・数ミリ”で走りが変わるのか

  • レバー角 … 少しの変更で手首の屈曲が減り、初期入力が直線的に。
  • 到達距離(握り代)5〜10mm の調整で指の掛かり力の立ち上がりが変化。ブレーキの“怖さ”が減る。
  • ハンドルの絞り/開き … 上半身の捻じれ量が変わり、切り返しの反力セルフステアの出方が整う。
  • シート後端の段差 … 減速〜旋回移行で臀部を後方へスライドしやすく、前後荷重の配分が安定。

同じサスペンションでも、人間の重心位置入力方向が揃うだけで“サスがよく動く”ように感じられます。ポジションは、車体ジオメトリを正しく使うためのインターフェイスです。


3|“平均の罠”という考え方(簡潔に)

しばしば語られる例として、平均体型で設計したポジションが誰にも合わず、のちに広い調整範囲が標準化された──という航空分野の話があります。厳密な史実検証は本稿の範囲外ですが、二輪でも発想は同じ。最初から“平均”に合わせるより、調整を前提に“いま乗るこの人”へ合わせ込むほうが、実用上の成果が出やすいと考えています。


4|進め方:まず「基準セット」を作り、そこから個別最適へ

当社では、まず私(新保)が車種ごとに作り込んだ基準セット(リファレンス)でお渡しします。
そのうえで試走し、お客さま自身が感じた違和感を一つずつ潰す。
「最初から万人向け」を狙うより、“いま乗るこの人”に合わせて早く確実に
仕上がります。


5|今回の所感(ケース:CBR / CB)

CBR1000RR-R SP

  • ハンドル:絞りをわずかに追加し、上体と手首の角度が自然に。
  • レバー:角度・到達距離を指1本分のレンジで最適化。初期制動の“怖さ”が薄れる。
  • シート:座面を1㎝下げ、更に後端フラット化で減速〜旋回の体重移動がスムーズ。

CB1300SF SP

  • 快適で懐が深いが、ハンドル形状に**+αの詰め代**。
  • ほんの少しの角度変更で、Uターンや峠の立ち上がりがもっと楽になるはず。

6|まずは自分でできる“5分チューニング”(目安)

  1. ブレーキレバー角:手首と腕を真っすぐよりもやや上向きにする事から開始。手首が折れない位置に。
  2. クラッチレバー角:ブレーキと同一ラインに。握り代は指が一番掛かりやすい位置へ。
  3. ハンドルの開き:上から見て**肩と肘のラインが自然な“ハの字”**になる範囲。
  4. ペダル高さ:つま先が無理なく当たる位置へ(厚底ブーツ時は再調整)。
  5. 座る位置:加減速で手が突っ張らない位置を基準に“前後1コブ”試す。

※各部の規定トルク配線の余裕干渉に注意してください。


7|ローダウン/サスと同時にやると効果が跳ねる

  • LTD(費用対効果ローダウン)やLGN(ハイエンド)の施工時にポジション診断を同時実施すると、
    **人(入力)×サス(応答)**が“一発で”揃います。
  • 例:LTD.S2.2(前後スプリング変更・スポーツ寄り)+ポジション最適化
    初期追従と収束が噛み合い、怖さが消える。

8|よくある質問(簡潔に)

Q. 作業時間は?
A. ポジション診断は 5 が目安。ローダウン/サス同時なら納期はその作業に準じます

Q. 角度や寸法は数字で決めてくれる?
A. 目安値は提示しますが、最終はお客さまの体で確かめて微調整します。

Q. 元に戻せる?
A. 角度系の調整はいつでも戻せます。加工が伴う場合は事前に選択肢を提示します。


9|まとめ

  • ポジションは人間とバイクをつなぐ“走りのインターフェイス”数度・数ミリで走りが化ける。
  • まず基準セットで素早く基準を作り、あなた専用に詰める。
  • ローダウンやサス調整と同時進行が最短・最善。

ご相談・お申し込み(ローダウン/サス同時歓迎)

**身長・体重・用途(街乗り/峠/走行会)**をお知らせください。
初期方針・概算・最短工程を折り返します。

法規・安全(干渉/最低地上高/灯火)を確認したうえでお渡しします。
メーカー保証については、取り扱い店・ディーラーにより対応が異なるため、ご購入店・お取引先へ事前確認をお願いします。

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