不思議の勝ち、GP3

 野村監督が良く語る言葉に、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」があります。もとは剣術の達人が綴った言葉の様です。

 昨日のレースの走りを見る限り、GP3の埜口遥希君が圧倒的に強くみえました。予選でも色々試しているのが見え、余裕と言うより幅のある走りをしていました。半年ぶりに走りを観ましたが、明らかな成長を確認しました。決勝で団子になっても前にでる力は十分あると感じました。

 同じクラスを走る松山拓磨選手は、前回の筑波選手権以来の走りを確認しました。こちらも明らかなレベルアップを果たしており、前回は10周目あたりから疲れが見え、切り返しではミスと応答遅れが著しく表面化していました。しかし、今回は若干その傾向は見えたものの、大きな失敗もなく、中団辺りから徐々に順位を上げ優勝を果たしました。

 レースに関わるようになって強く感じるのは、どんなクラスでも勝つのは難しいという点です。勝った松山選手は実力以上の結果だと思いますが、着実にトップとの差を詰める中で、上位が転倒しトップに立ち、それを譲らなかった点は評価に値します。ケヴィン・シュワンツのワールドチャンピオンも「レイニーが負傷して手に入れたチャンピオンではなく、トップが不在になった時、その位置に居たかどうか」だとシュワンツ選手自身が語っていました。参戦2戦目でスルスルっと優勝を果たした松山選手には、こんなにあっさり勝つんだ・・・という不思議な感触を持ちつつも、そのポジションを譲らなかった実力に、中野監督が仰っていた言葉(時期が来たら言えるようになりますが、今は明かせません)が重なります。

 反して、圧倒的な実力差を持った埜口選手は細かい経緯は省きつつも、転倒が問題になります。はっきり言って転ぶとは微塵も思っていませんでした。他車と接触と聞き納得しましたが、操作ミスで転んだとは到底考えられませんでした。一番の原因は昨年も同様の転倒を喫した事ですが、遅いライダーと絡んだからです。GP3で抜け出すのは難しいですが、それでもどこかで一歩引いて待つ場面が必要です。本人も中盤までは回りが落ち着いていなくて、危なっかしいので無理に前に出なかったと話していました。転倒した周回あたりから、埜口選手が引き離しにかかったように感じました。それに焦った他のライダーが落ち着きを無くして、走行ラインを塞いだのかもしれません。レースは不確定要素が多いので本人がいくら気を使っても、どうにもできない事もあると思います。そこは反省もせずスッパリ忘れて次戦のタレントカップに集中してい欲しいと思います。

 そういえば、シュワンツ選手は「僕が無理な走りをして、レイニーがいつも引いてくれていた」と話していました。あんなに熱い走りをするレイニー選手はどこかで冷静だからこそ3連覇できたのかもしれません。

 

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