GSX-R1100、試乗
油冷1100のGSX-Rの前後サスペンションをオーバーホールし、試乗を行いました。
油冷エンジンは好みで、GSX1400やGSF1200など楽しいバイクだと思っていましたが、今回の1100も楽しいバイクでした。80年代の車両なので倒立フォークだとしても、基本はリアタイアで曲がる車両だと考えていましたが、予想通りの動きをみせました。ただ、基本的な車体の造りはしっかりしているので、車体姿勢とダンパーの前後セットを造り変えれば、フロントタイアで曲がる比率を増やすのも、それほどの無理はなさそうです。現代のスーパースポーツがコーナーの入り口で100%フロント依存を可能と例えるならば、純正状態のR1100は30%といった感触です。これはセットアップ次第で50%までは簡単にいきそうです。私見では70%依存までは可能に思えます。旋回の前半をフロントタイア、後半をリアタイアと明確にした車両はYZF-R1が出てくまでは、私の知る限りはありませんでした。
上記の変更を施すのは単に前下がりの姿勢にするのではなく、オイルロックピースなどを加工してフロントフォークの実質ストロークを増やし、静的姿勢だけでなく動的姿勢も前下がりを作れるように仕立て直し、ポジションを変更するなどすれば、より運動性を高くし現代的なスーパースポーツに近くなりそうです。
ノーマルは見た目と違い、ネイキッドにカウルがついたような乗り味です。サーキットで速く走りたければ、フロントの依存度を高める必要はありますが、街乗りを楽しく走るのならば、フロント荷重を高める必要はありません。アクセルを開けてぐいぐい曲がっていく感触も楽しいので、乗り手の好みや走りの楽しみ方をお話頂き、お客様が楽しめる車両を一緒に作るのがこの仕事の楽しみでもあります。
余談ですが、持ち込まれた状態のセットアップが秀逸で少々変更を施しましたが、やはり元の状態が一番よく最初のセットになってしまいました。こんなにレベルの高いセットは初めてだったので正直驚いたのですが、お客様の話では以前当店に話を聞きに訪れた際、私自身が乗り変更を施したとの事でした。それをすっかり忘れていたのですが、自分で味付けをしたのですから、好みにピッタリで当然でした。
一般にサスペンションはバランスだと言われますが、何をどのように均衡させるのでしょうか。私なりの答えは持ち合わせていますが、それは現在の答えであり、その経験を踏まえて数年後にはまた違う答えが見つかりそうです。現在の答えは「ピッチングセンターをコントロールする」です。ピッチングセンターがどこにあるか感じているその感覚を私は「軸感」と呼んでいます。軸感を変更する手段としてスプリングや減衰を変更しています。