Porsche 911 Carrera2 996
水冷911のカレラ2を試乗しました。
これほど完成度の高い車を、瞬時に分析するのは中々難しい作業でしたが、それでも幾つかの事が分かりました。
ハンドル操作が重いなどパッと乗って分かる事を除き、車両運動とサスペンションの動きに焦点を合わせ分析してみました。
全体の乗り味は非常にまろやかです。硬いか柔らかいかで表現するなら柔らかいサスペンションです。ただ柔らかいのではなく、動くべきところと踏ん張る必要のあるところを、それぞれ上手に色分けできています。
ABSが効くほどブレーキをグッと踏んでみましたが、その動きはバイクのフロントフォークと同様の感触です。たっぷりストロークがあり、十分な手応えを感じます。ストロークが多くバネを含めたダンパーの設定も良いせいで、タイアのロック寸前がつかみやすいと感じました。
その使いやすいブレーキで切っ掛けを作りコーナーへ入ってゆきますが、RRならではの車の動きは特徴的でした。リアを軸に、フロントが内向する(当たり前ですが)FFとは逆の感覚です。ロールを上手く使い、フロントを潜り込ませるように鼻先をインに向けてゆきます。バイクで言うならホンダの乗り味に近いと思います。これは両者とも、リアのグリップは絶対に抜かないという強い意志があると推測します。少し前のRS125や現行のNSF250Rも近いハンドリングだと思います。
車全体のボディー剛性は、たぶん極めて高いと思うのですが、その分ダンパー込みのサスペンション全体にサスペンションとしての仕事を全うさせられるため、役割分担が明確に出来るのでしょう。この点は、やはり二輪車も同様です。フロントフォークは言い換えればストラット、リアはマルチリンクやダブルウィッシュボーンと同様だからです。特にフロントフォークは結合部にブッシュなどのゴム系が入らないため、ブレーキング時のダイレクト感は四輪車を圧倒的に上回ります。リアもゴムブッシュを介在させる車種はそれほど多くないため、ちょっとしたスポーツモデルならフェッラーリやポルシェと同等のスポーツ性を有します。そこまでは良いのですが、二輪車の問題はフロントフォークとダンパーの設定を詰め切れていないために、楽しさが半減しています。もしくは万人向けという名の中途半端なセッティングで、最後の最後までバイクを仕上げる事を拒否したその姿勢です。車は数の力と高価格が可能なため、細部の造り込みはかなり高い水準で完成されています。しかし、それだけでなく良い乗り物を造る意思があるのだと感じます。二輪車に同様の造り込みをするならば、当社では30~50万円は頂いています。逆に言えば、それだけ掛ければ、フェッラーリやポルシェと同質の乗り物に出来るという事です。
ここ最近、色々な車の乗り味を確かめてみました。特にポルシェの振動やピッチングに関する造りは驚く程、緻密に大雑把に造ってありました。この表現はオキシモロンのようですが、私が理想とする乗り味の、到達点の第一ステージと言えそうです。
追記 フロントのトランク(ボンネット?)の締めが甘かったようです。このあとグッと押し込みしっかり締めました。