ほんの少しで大きく変わる

 本日は朝から筑波サーキットへ行って来ました。

 毎度おなじみの56レーシング、筑波選手権への準備です。
 走行は3本を予定し、梶山さんは全て走りました。田中くんはそのうち2本を走行。こららの走行がどの様に進んだか順を追って説明します。

 エースナンバーを背負う梶山さんは少々リズムを崩し、乗り切れいて居ないと監督から話がありましたので、メンテナンスを行ったフロントフォークでライダーの気分を一新しようとの結論に至りました。
 そこで今年から始めたプレミアムラインと呼ぶ、最上級のオーバーホールを行いレースへ向けた準備を行いました。インナーチューブとブラケットまで外し、全ての部品を分解することでバリや汚れを徹底して排除します。

 先日行われたもて耐で得たデータを基に突き出し量も変えました。私は安易に突き出しを増やすのは是としませんが、必要とあらば柔軟に対応します。もて耐でCBRの車体姿勢に疑問が浮かび、突き出し量を変え走らせましたが、梶山さんには上手くはまった様で、安定して速いラップタイムを刻むことができました。
 走行が終わる毎にライダーへ確認を行い、曲がり過ぎ、曲がらない、ちょうど良いなどの評価をもらいますが、全ての走行で「ちょうど良い」と評価を得られました。

 田中君は2本目から走行を開始しました。梶山さんとはラップタイムで大きな開きがあり、走行姿勢がどうにも曲がりづらそうでした。そこで梶山さんで得られた変化を私自身の解釈により田中君の車両に落とし込み、突き出しを変え(イニシャルも)走行を開始したところ、ラップタイムが2秒も縮まりました。これまでは得られなかったフロントのフィーリングにライダーは自信を深め、走行を続けることでタイムアップが叶いました。

 この突き出しの変化は2mmだったのですが、ラップタイムは大きく変化しました。

 私は走る車両の姿勢とライダーのフォームを合算し、曲がりやすそうとか、変えなくてはならない等の判断をします。向きの変わらないしバイクに乗ると、体を内側へ入れぶら下がる様に走る格好になります。これは回頭性が低い証左です。
 こう言った場合は姿勢を変えますが、それは突き出し、つまりはスタティックバランスで変化させる場合もあるし、スプリング系(定数やプリロード)を変化させるダイナミックバランスの二つが考えられます。両者とも変化させる合わせ技もありです。

 突き出しの1mmは私の中では最低単位ではありません。FGのフォークキットを使えば0.1mmの調整も可能になります。リアショック も同様ですが、車高の静的姿勢はかなり変化を与えられます。フォークの突き出し1mmは最初はわかりずらいかもしれませんが、危険の無い範囲で走行を行うなら、5mmぐらいから始めてみるのも良いと思います。これ程変えると流石に初心者でも変化を体感できます。しかし、これは変化を体感するのが目的なのでセットの良し悪しではなく、経験値を高めるのを目標にしてください。

 ライダーが良いと納得するのが一番問題が無いとは思いますが、それが必ずしも最善、最良とは限りません。梶山さんの車両はもう少し変化を持たせるべきだと、その走りを観察する中で感じて居たので、走行終了後に監督と担当メカニック(梶山さんのお兄さん)と打ち合わせを行い、突き出しを変更しました。
 明日は予選でライダーの評価を確認し、方向性を見定めた後に決勝に向けた微調整を再度行います。

 一般には外へ向けて発信されない様な微細な変化を続けることで、ライダーとバイクの両者が高水準に到達する過程を、筑波選手権ではご覧いただけます。それらの裏方作業も知るこ事で、選手権をより楽しんで下されば幸いです。

 

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