洗練すると持ち味は薄れるのか?
昨日、フェラーリのダンパーについてお客様と打ち合わせをしていた際に、自分で発した言葉で気づくことがありました。
ダンパーオーバーホールに加え、仕様変更、部品作り直しを含め見積もりの額は140万円でした。末端のお客(エンドユーザー)様は、本来の乗り味と変わってしまうのではないか?と心配されている様で、そこのところを説明して欲しいと間に入るディーラーの担当者様から連絡をいただきました。
私の経験で話をさせていただきますと、エンジンでもサスペンションでもとことん作り込むと、むしろその車両の本質が、より顕著になると感じます。例えば、ハーレーのエンジンはあのドコドコ感が持ち味だとされています。
綺麗に組み直したエンジンは、その独特の癖というか持ち味を殺すのでしょうか?実はその逆で、アクや臭みが取れ、本来持っていた特性がより前面に出てきます。
これは日本酒にとても似ている気がします。お米を研いで臭みや灰汁を拭い去り、本来持つ味(本質)をさらけ出す点がです。
サスペンションにおいても同様のことが言えます。サスで乗り味を変えるのではなく、エンジン形状やフレームが本来持つ乗り味を活かす感覚です。もちろん誤魔化す事もできますが、それは悪癖をなるべく出さない様にして、良い点を引き出すための行為です。
悪癖が持ち味なのだとしたら、それは悪癖ではないという、単なる良い点です。ただ、長所と短所は紙一重とも言えますので、なんでもやりすぎは禁物です。
その車の持つエンジン形状、ホイールベース、重心バランス、駆動形式、着座位置などを考慮し作り上げれば、臭みをなくしつつ美味しいさをより際立たせることが出来るはずです。その様なサスペンションに仕上げられる様、日々考え努力してゆきます。