ドカティ ムルティストラーダ

 今回はローダウンで依頼をいただいた、ドカティのムルティストラーダについて、説明します。

 結果を説明すれば、40mmのローダウンにより、身長165cmの私でも両足の母子球が余裕でつく程度にな利、かかとが5〜7cm程度浮くくらいです。Vツインで幅が狭いのでCB400SFよりも少し高い程度な感覚です。もちろん重量は違いますが、Lツインの重量バランスから程よい重さと言えます。

 前後サスペンションは電子制御ですが、いつもこのショックを触るたびに思うのは、ローダウンするには少々の手間が必要です。これまでにBMWでこの構造を手がけてきたので、手慣れた作業といった感じで進めました。

 では試乗の感想と、問題点を提議してゆきます。

 モード設定でスポーツ、ツーリング、アーバン(街乗り)、エンデューロを選択できます。この中で一番サスペンションがよく動くアーバンを軸に設定を変更してゆきました。同時にエンジンのレスポンスも変わるのかもしれません。が、そこは試していませんので、判断しかねます。

 この車両の特徴的な部分は、搭乗位置と車両の重心高そのポジションからもたらされる独特な乗り味です。
 これはバイクの根本に関わる部分ですが、高さ方向の乗車位置が高いとホイールベースを短く感じます。そして前後方向の乗車位置でもホイールベースの短さを演出できます。これに前後ショックの動かし方で印象が決定されます。

 この車両は大型車両というより、250クラスに感じられました。もう少しゆったりした感じにしたいので、前後ショックをゆっくり動かす様にセットアップを変更します。これは左手のハンドルにある操作ボタンを押して、メーターディスプレイで確認して変更が可能です。

 ハードからソフトまで5段階の調整は可能ですが、ミディアムソフトとソフトへの変更は急激に動きが変わり、ミディアムソフト「ソフト」が欲しい感触です。逆にミディアムよりハードな設定はガッチリし過ぎて、私の使い方には合いませんでした。

 前後ともミディアムソフトに落ち着きました。プリロードも変更できますが、フロントは旧来のネジで調整するタイプ。リアのみリモコン調整可能です。

 便利なのかもしれませんが、一々長押ししたり、画面変更したりと手間がかかって面倒に感じます。
 操作性が悪いのは電子制御の問題点だと思いますが、ハード、ソフトと簡単に切り替えができるのは良い面です。この初期設定の作り込みを上手に作れたなら、モード切り替えで(つまりはボタン一つで)最良の乗り味が選べるのは面白と思います。

 

 セッティングは大枠でしか決められませんでしたが、それでも触れる部分は少しづつ様子を見ながら詰めてゆきました。乗って楽しい水準にはできたと自負しています。

 今年に入り、KTMの990アドヴェンチャー、BMWのXR1000に今回のドカティ・ムルティストラーダをローダウンしましたが、この手の車両は少し下げるぐらいが、街乗りではむしろ好ましいハンドリングを得られると思います。

 これは理論立てて検証していないのですが、重心を下げる方が剛性が高いというか、据わりが良くなる感触があります。下げ過ぎると問題点が出てきます。ですが元来は街乗り用の車両のサスペンションストロークを長くして車高をあげる事多いので、下げる事で普通のロードバイクになり、オフっぽい外観のアスファルト専用機となりとても好ましいバイクになります。
 

 これは今手掛けている動画と関連のある内容で、一つ前のブログにも書いたのですが、二気筒の重心は低めに設定されている事が多く、このムルティストラーダの様にカウルなどを備えると重心が上がり良い面が出てきます。しかし、車体全体として安定性の低いVツインエンジンを高い位置へ持ってゆくのは問題があります。

 難かしい問題なのです。重心は一点に集中した方が運動性はよくなります。しかしVツインによる低重心化と上部にカウルを備えて重心が引き上げら、分散した重量は運動性を悪化させる。わかりやすく言えば動きが重くなります。

 ヤマハのMT-09まさに上記の理論を地で行きます。エンジンレイアウトによる極端な低重心かが、ロードバイクの形をしたモタードの様な乗り味を作り出していますが、カウルを備えたトレーサーはハンドリングが劇的によくなっています。その原因はカウルがついて重心が上がっているからです。

 初期型のムルティストラーダを前後ショックのオーバーホールした経験では、純正のままでとても良い乗り味でした。それが徐々に変化し現行のムルティストラーダは少々歪なバイクになってしまっと思います。

 現行型も良い素材なので、少しづつ全体を整えればかなり楽しいバイクになると確信しています。

 

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